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北朝鮮「ミサイル指針の終了は敵対行為」…韓米首脳会談から9日後に反応

登録:2021-06-01 05:22 修正:2021-06-01 06:43
「朝鮮中央通信」の個人論評で 
公式性と格を下げて対応時間稼ぎ 
「米国が朝鮮半島周辺の軍拡競争を助長」と非難 
文大統領に向けて「卑しい姿」などの暴言も
2017年7月東海岸で開かれた韓米連合弾道ミサイル打撃練習で韓国軍の弾道ミサイル玄武2A(左)と在韓米軍のATACMSが同時に発射されている=合同参謀本部提供//ハンギョレ新聞社

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領と米国のジョー・バイデン大統領の首脳会談の結果に対し、沈黙を守っていた北朝鮮が9日たって初めて“個人論評”の形で反応を示した。不満を示し、韓米に“シグナル”を送る一方、発言主体の公式性と格を下げて、“公式反応”までの時間を稼ぎ、選択肢を広げるためとみられる。

 北朝鮮の「朝鮮中央通信」は31日、韓米首脳会談を機に「韓米ミサイル指針」の終了が発表されたことに対し、「米国の対朝鮮敵視政策の集中的な表現であると同時に、破廉恥で二重的な挙動を現わす生々しい証拠」だと非難する文を発表した。

 朝鮮中央通信に公開された「国際問題評論家キム・ミョンチョル」の「何を狙った『ミサイル指針』の終了なのか」という題の寄稿は、「すでに数回にわたって『ミサイル指針』の改正を承認し、弾頭重量制限を解除したことにも事足りず、射程制限の敷居までなくすという米国の処置は、故意の敵対行為だ」として、このように主張した。同寄稿は「人民必読媒体」の「労働新聞」には掲載されなかった。

 キム・ミョンチョルは「口では対話を云々しながら、行動は対決に向かっていくのが米国」だとしたうえで、「今多くの国々がバイデン政権の考案した『実用的アプローチ』や『最大の柔軟性』などという北朝鮮政策の基調が一つの権謀術数に過ぎないことを見抜いている」と主張した。さらに「米国が南朝鮮のミサイルの“足かせ”を解錠した目的は、朝鮮半島と周辺地域における軍拡競争をさらに助長し、我々の発展を妨げることにある」とし、「我々の周辺国を狙った中距離ミサイル配備を合法的に実現しようとするのが米国の思惑」だと指摘した。ミサイル指針の終了は、米国が中国やロシアを狙った中距離核ミサイルを韓国に配備しようとする事前作業であり、北東アジアで軍拡競争を促すためという主張だ。

 キム・ミョンチョルは「我々は強対強、善対善の原則に基づき、米国に立ち向かう。朝鮮半島情勢の激化は我々を脅かす勢力の安全保障の不安定につながるだろう」と書いた。これに先立ち、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党総書記は1月の労働党第8回大会の演説で、「新たな朝米関係樹立の鍵は、米国が朝鮮敵視政策を撤回することにある」とし、「今後も強対強、善対善の原則で米国を相手にする」と述べた。「米国の朝鮮敵視政策」の事例として2019年10月の朝米実務交渉当時、北朝鮮側団長だったキム・ミョンギル外務省巡回大使は「生存権と発展権を公然と脅かす制裁や韓米合同軍事演習、先端兵器の搬入」などを挙げており、金正恩総書記は今年の党大会演説で「先端軍事装備の搬入と米国との合同軍事演習の中止」を韓国側に求めた。

 キム・ミョンチョルの寄稿は、北朝鮮当局の考えを反映しているにもかかわらず、発言主体の公式性と格の面で“公式反応”と見ることはできない。対米談話を主に発表してきたキム・ヨジョン労働党中央委副部長やチェ・ソンヒ第1外務次官ら政府の高官でもなく、「国際問題評論家」を前面に出したのが代表的だ。統一部のイ・ジョンジュ報道官は同日の定例会見で「公式の職位や肩書きを持つ人が発表したものではなく、個人名義の文」だとし、「北朝鮮の立場については慎重に見守っている」と明らかにした。

 キム・ミョンチョルはミサイル指針の終了を発表した文在寅大統領を、実名の代わりに「南朝鮮当局者」と呼び、「あくせく動き回る」や「卑しい姿」などの言葉で非難した。これに関し、ソ・ウク国防部長官は国会国防委員会に出席し、「国家元首に対する礼儀を欠いた言動を遺憾に思う」と述べた。

 ただし、キム・ミョンチョルは「我々の標的は南朝鮮軍ではなく、大洋の向こうにある米国」と主張しており、朝鮮中央通信は同寄稿の英語版をハングル版より先に公開した。韓国政府の高官は「主な標的は韓国ではなく、米国のようだ」と指摘した。

イ・ジェフン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/997441.html韓国語原文入力:2021-06-01 02:39
訳H.J

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