4月の週末、ある地域の保健所の看護職公務員のAさんは、午前6時に家を出た。午前1時に前日の新規感染者が数十人出たため「午前7時までに出勤してほしい」という知らせが来たからだ。「また非常事態か」。すでに3日前に数十人の感染者発生で非常事態となり、睡眠時間が1日3、4時間ほどの日が続いていた。疲れた体を引きずって保健所へと車を走らせた。眠すぎる、と思った瞬間、ドカンと車がガードレールに突っ込んだ。
20代のAさんはここ1年間、地域の保健所で新型コロナに対応するチームに所属して働いてきた。数年間、総合病院の病棟看護師として働いたが、仕事に疲れ、試験を受けて看護職公務員になった。しかし最近は、むしろ病棟で患者の世話をしていた方がましだったと思う。
Aさんが挙げた最もつらい仕事は、密接接触者を探し出して隔離し、隔離離脱者を告発する業務だ。感情の消耗が激しいからだ。電話をかけると感染検査そのものを拒否する人が数え切れない。「陽性と判明したら、隔離を余儀なくされるから、検査を受ける必要がないと言い張るのです。隔離されたら自分の生業の責任を負ってくれるのかというんです」。隔離通知を受けたにもかかわらず保健所に来て大声で罵詈雑言を浴びせる人も多い。Aさんの同僚は隔離通知を受けた感染者から「斧を持って行って殺す。夜道に気をつけろ」と脅されたという。
さらに、学校・病院の出張検査や1日の発生状況を報告することまで、業務は倍増した。しかし、超過勤務を全部認められはじめたのも、先月になってからだった。「以前はいくら働いても67時間しか認められなかったけれど、今月は120~130時間働いたと記録されました。ここ1年間、超過勤務の半分は認めてもらえなかったわけです」
アストラゼネカのワクチンを接種した日も、ワクチン休暇どころか、夜10時に非常事態となり、翌日は部署全員が出勤した。身体の具合がひどく悪くなったが、タイレノール(痛み止め薬)を6錠飲んで疫学調査の現場に向かった。Aさんは27日、本紙の電話取材に対し「このようになって1年経ったのに、誰か一人が死んだ後になってようやく対策を議論するというのが悲しい」と語った。
釜山保健所で30代の看護職が自殺…同僚たち「共感」
今月23日、釜山東区(トング)保健所の看護職公務員のLさん(33)が自宅で自殺した事実が後になって明らかになり、コロナ対応の第一線で働く保健所の看護職公務員の状況が限界を超えたという声が高まっている。遺族によると、Lさんはコホート隔離(同一集団隔離)に入った病院を新たに担当することになってから精神的圧迫が強くなり、土曜日に出勤して働いた後、翌朝死亡した状態で発見された。Aさんは「保健・看護職公務員が自殺したというニュースはまったく不思議ではないと感じるんです。一緒に働く係長の顔が(疲労のため)どす黒くなってしまった。過労死が出なかったことが不思議なくらい」と話した。
保健所など公的保健機関の看護師不足問題は根強い。コロナパンデミック以前の2017年にも看護協会は全国の保健所250カ所のうち142カ所で計601人の看護師が不足しているという調査結果を出した。このような状況で、コロナパンデミック対応という完全に新しい業務が追加されたわけだ。昨年6月に保健看護師会が調査した結果によると、保健所当たり平均人員は88.3人で、このうち看護職は18.8人、5千人余りだ。
コロナによる激務が長引き、保健所の看護職公務員らの状況を改善すべきだという要求が続いている。昨年6月、看護協会が全国の保健所、認知症安心センター、精神健康福祉センター内のコロナ地域社会対応に参加した看護師1079人を対象に調査した結果、43.6%が1カ月のうち23日以上出勤し、59.2%が個人の健康に問題が生じても仕事に出なければならなかったと回答した。週末の超過勤務も1日平均5.2時間だった。これを受け、看護協会は「感染症対応専担チーム内の看護職の人員補充が急がれる」という提案を出した。
保健所の業務過負担により、集団感染の事例が適時に抑えられていない状況も数値で表われている。ソウル大学医学部のキム・ユン教授(医療管理学)が自主的に調査した結果、集団感染が最初の感染から最後の感染者が出るまで2週間を超えたケースは、昨年6~7月には17件だったが、10月には24件、12月には36件に増加した。もし疫学調査が迅速に行われ、適時に密接接触者を隔離していたら、このような状況ではなかったというのがキム教授の説明だ。
専門家「保健所に感染病センターを設置し、専門人材の増員を」
保健福祉部では同日、保健所258カ所に看護師を含め平均4人ずつ、計1032人のコロナ対応人員を5カ月間の期限付きで支援することにし、先月から人材を採用していると明らかにした。しかし、専門家や看護職公務員らは、このような臨時スタッフでは限界がはっきりしていると強調した。Aさんは「臨時スタッフの看護師が今月1人短期で配属されたが、週末や非常事態に出勤せず、責任の所在問題で主要業務を担当することもできない」と話した。キム教授は「期限付きの支援人員はコホート隔離や疫学調査など現場で必要な業務を遂行するには限界がある」とし「政府はコロナの長期化と新しい新型感染症に備えなければならないと言いながら、経験ある専門人材を育成する大事な機会を逃している」と指摘した。
大統領直属の政策企画委員会の所得主導成長特別委員会が26日に開いた討論会で、キム教授は全国の保健所ごとに診断・疫学調査などを担当する「感染病管理センター」を設置し、各医師・看護師など公務員を7人ずつ1800人増員しようという提案を発表した。キム教授は「この案を大統領府の要請で作成したが、大統領に報告もされず、政策にも反映されなかった」とし「国家的危機状況のなか、2、3カ月は非常対策と言えるが、1年以上非常状況で働けというのは話にならない。専門人材の補充があれば保健所の看護職の自殺も防止できたはずだ」と述べた。