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45日間コホート隔離された療養病院、ワクチンで悪夢の沼から抜け出す=韓国

登録:2021-05-26 10:48 修正:2021-05-26 17:41
昨年末、2つの経路から集団感染 
5~6階の患者・職員などを隔離 
院長「本当に無力感…悪夢のようだった」 
1次接種77%、2次接種42%を経て 
日常を回復中…「気が楽になった」
今月24日午後、京畿道富川市松内洞にある療養病院のカウン病院で、患者と家族がガラス戸を挟んで面会している=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 24日午後1時30分、京畿道富川市松内洞(プチョンシ・ソンネドン)のカウン病院。高齢層を中心に310人余りの患者が入院しているこの療養病院で、面会に来たある男性がガラスドアを挟んで父親と見られる患者と談笑を交わしていた。面会客は白髪で車椅子に座っている患者の顔を見ながら、しきりに暖かい笑顔を見せた。

 この病院をこの日、数人の外部からの訪問客が訪れた。熱がないか確認のため病院の入口で訪問者の体温を確認し、手書きで訪問者の記録も書くようにしたが、警備員や院長、看病人(患者に付き添い介護をする人)は訪問客に特に警戒感を示さなかった。今年2月前を考えると、このような状況はまるで夢のようだ。

 カウン病院では新型コロナウイルス感染拡散の第3波の真っ最中だった昨年12月21日から今年1月22日まで、感染者が38人発生した。地域社会での感染が1日1千人台に達した時だった。病院は2週間に1度、遺伝子増幅(PCR)検査を行って備えてきたが、感染症の浸入を防ぐことはできなかった。2度のPCR検査で陰性判定を受けたある看病人が、1週間後に行った迅速抗原検査で陽性判定を受けた。そしてこの間、この看病人を最初の伝播者としてウイルスが急速に広がった。

 看病人だけではなかった。入院患者から始まった集団感染もあった。一つの病院で、最初の伝播者が異なる2つの集団感染が同時に進行したのだ。結局、この病院の5~6階の患者と看病人、従事者など約100人は、昨年12月23日から2月5日までの45日間、同一集団(コホート)で隔離されなければならなかった。隔離された人たちは、配達弁当とミネラルウォーターを飲み、フェイスシールドとガウンを着用して24時間を過ごした。使用後のオムツも外部に持ち出せなかった。この期間に病院で治療を受けていた院長の母親もコロナに感染し、死亡した。同病院の院長であるキ・ピョンソク大韓療養病院協会長はこの日、本紙のインタビューで当時の状況を振り返り、「いくら努力しても予防できないので、本当に無力感を感じた。本当に悪夢のようだった」と話した。

今月24日午後、京畿道富川市松内洞にある療養病院のカウン病院で、医療スタッフがコロナワクチンの2次接種を受けている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 2月26日から始まったワクチン接種後、状況が変わった。どこよりもウイルス感染の原因と浸透経路が予想できないことを知ったカウン病院は、初日から従事者にワクチン接種を積極的に奨励した。そうしてこの日現在まで320人程の病院従事者のうち98%がコロナワクチンの1次接種を終えた。300人以上の患者まで含めた1次接種率は77%にのぼる。2次接種まで終えた従事者と患者の割合も42.5%ほどになる。外部からの訪問客に対する警戒心が一気に下がったこの日の雰囲気は、この接種率の自信によるものだった。キ会長は「うちの療養病院はワクチンをもう打ってもらったからイスラエルのように自由な清浄区域になった」とし「2週間ほど経てば2次接種を終えた人は接触面会も可能になる」と話した。

 接種を終えた人々が最も大きく感じる感情は安堵感だ。コホート隔離を経験した同病院の看病人のイ・スンヒョンさん(66)は「ひょっとして高齢者の方々に被害が及ぶんじゃないかと心配で、コロナ後は食堂で気楽に外食もできず、銭湯も一度も行けなかった」とし、「本当に気持ちが楽になった」と話した。

 ワクチン接種後、感染の沼から脱したカウン病院のように、コロナワクチンは1次接種だけでも相当な予防効果を見せている。中央防疫対策本部の資料によると、今月17日現在、コロナ予防接種を受けてから2週間が経過した60歳以上の高齢層で、感染予防効果は89.5%に達することが分かった。何よりも1次接種を終えた高齢層の中でコロナに感染して死亡した事例はまだ発生していない。死亡予防効果は100%ということだ。

 今年4月と今月に入って集団感染が発生した療養病院・施設など4カ所の事例を分析した結果も似たような結果を見せている。20日現在、34人の患者が発生した大田市儒城区(テジョンシ・ユソング)の療養院は、ワクチン未接種者の75%が感染が確認されたのに対し、接種者のうち感染者は5.3%だけということが分かった。仁川市桂陽区(インチョンシ・ケヤング)の療養病院、京畿道城南市(ソンナムシ)の療養病院、全羅南道麗水市(ヨスシ)のリハビリ病院でも、未接種者のコロナ発症率はそれぞれ11.3%、12.4%、13%だったが、接種者の発病率は0.9%、0.4%、2.4%だった。

 ワクチン接種により高齢者の感染の心配が減っただけに、防疫当局は来月から療養病院・施設の接触面会を再開する予定だ。療養病院・施設の入所者または面会客のどちらかが2回目の接種を完了し、2週間が過ぎれば接触面会が可能になる。これらの施設の1次接種率が75%以上ならマスクをして手の消毒をした後、面会が可能だが、接種率が75%未満なら、面会客にはPCR検査の陰性確認書が必要だ。

今月24日午後、京畿道富川市松内洞にある療養病院のカウン病院で、同病院の院長であるキ・ピョンソク大韓療養病院協会会長が本紙のインタビューに答えている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 「市中感染が発生した状況でこれを解決するには、ワクチンしか脱出口がありません。気をつけたからと防げるものではありません。ワクチンは無用だと言う人たちは、ワクチンがどれほどありがたいかを知らないんです。私の立場としては、ワクチンがもう少し早く届けば助かる命もあったのに、と思うのです」と、キ会長がマスク越しに熱弁をふるった。

富川/ソ・ヘミ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/health/996688.html韓国語原文入力:2021-05-26 07:11
訳C.M

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