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[ニュース分析]文大統領が指示した福島原発汚染水放出に関する「国際法的措置」とは

登録:2021-04-15 06:18 修正:2021-04-15 08:50
大学生気候行動の関係者らが今月14日午前、ソウル鍾路区の日本大使館前で、日本政府の福島原発汚染水の海洋放出決定を糾弾するパフォーマンスを行っている/聯合ニュース

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が14日、日本政府の福島第一原発汚染水の海洋放出決定と関連し、国際海洋法裁判所に「暫定措置」とともに「提訴」を積極的に検討するよう指示した。この暫定措置と提訴はどのように行われるのだろうか。

 文大統領が積極的に検討を指示した提訴と暫定措置の要請は、いずれも1982年に採択された国連海洋法条約(以下条約)を根拠にしている。各国の海洋環境保護・保全義務を規定した条約では、具体的に「自国の管轄権や統制下の活動が他国と自国の環境に対して汚染による損害を与えないように遂行されることを保障」し、「(発生した汚染が)外に拡散しないように保障するのに必要なあらゆる措置を取る」(第194条2項)ことを明示している。韓国政府はこれをもとに、日本の汚染水海洋放出と関連した紛争解決手続きを進める方針だ。 政府が実際に提訴した場合、現在としては「国連海洋法条約付属書7仲裁裁判所」で扱うことになる。仲裁裁判所は提訴が行われた後に構成される。

 文大統領が提訴とともに「暫定措置」に言及したのは、「最終判決が出るまで各紛争当事者の利益を保全または海洋環境に対する重大な損傷を防止」するため「暫定措置を命令することができる」(第290条)という条項のためだ。すなわち、仲裁裁判所が構成される間、国際海洋法裁判所(ITLOS)は、暫定措置をとることができる。ただし、これは裁判所が事案の緊急性を認めた場合に限られる。そのような意味で、暫定措置は、国内法で本案判決が出るまである行為を阻止できる仮処分決定と類似したものといるといえる。

 海洋法紛争手続き専門家のイ・ギボム延世大学法科大学院教授は「(暫定措置の)結論は予想できない」とし、参考に値する事例として、2001年に英国とアイルランドの間で起きた「MOX工場」事件を挙げた。この事件は英西部海岸セラフィールドに建設されたMOX(使用済み核燃料から抽出したプルトニウム・ウランの合成物質)生産工場で放射性物質が海洋汚染を起こす可能性があるとして、アイルランドが仲裁裁判所への提訴とともに暫定措置を要求した件だ。当時、仲裁裁判所は、MOX工場の試運転によってアイルランド海域に発生しうる影響についての追加の情報交換や、アイルランドの海に及ぼす危険や影響のモニタリング、海洋汚染防止のための措置を考案する上で、両国が協力するよう暫定措置を下した。イ教授はこのように「情報提供や協力など暫定措置の内容がかなり簡潔なものになるかもしれない」と見通した。日本政府が汚染水の放流を始めた状態なら、暫定措置として「放出中止」を要請できるが、今の段階ではこうした措置を要請するのは難しいということだ。

 専門家らは、何より汚染水の海洋放出による危険がまだ現実化していない状況で、暫定措置の要件を満たすための準備が必要だという意見を示した。延世大学政治外交学科のキム・ヒョンジョン教授(国際法)は「暫定措置は韓国政府が(汚染水の海洋放出に関連して)急迫した危険があるという“緊急性”の要件を満たすかどうかがカギとなる」としながらも、「原発汚染水の海洋放出の可能性を全く知らなかったわけではないため、政府が法律的な検討はしておいたのではないかと思う」と述べた。イ教授は「暫定措置の要請は本案提訴と同時に行われるべきだ。したがって、徹底した準備が必要だ」と指摘した。国際海洋法裁判所は1982年の国連海洋法条約により、1996年に設立された独立した司法機関で、国連海洋法条約の解釈と適用に関する紛争を扱う。

キム・ジウン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/991029.html韓国語原文入力:2021-04-14 20:47
訳H.J

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