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ソウル前市長強制わいせつ被害者、初の公開会見で「民主党の真の謝罪」求める

登録:2021-03-18 09:18 修正:2021-03-18 12:39
「被害者とともに語る」記者会見で初めて公式の場に 
過ちを心から認めてこそ日常に戻れると訴える
17日午前、ソウル市のホテルで開かれた記者会見「ソウル市長威力性暴力事件被害者と語る」にパク・ウォンスン前ソウル市長性暴力事件被害者の席が設けられている。会見には被害者が出席し事件について発言したが、メディアへの露出には同意しなかった=写真共同取材団//ハンギョレ新聞会

 「あの方の威力は、依然として強く存在しています」

 昨年7月、故パク・ウォンスン前ソウル市長の死後初めて公開の場で口を開いた強制わいせつ事件の被害者は、あいさつの言葉で「威力」という言葉を7回使った。ソウル北部地検、ソウル中央地裁、国家人権委員会など多くの国家機関が繰り返し被害事実を認めたが、政府与党が背を押されるように謝罪した後は、2次加害に対して何も対応していない現実を「威力の作動」と指摘したのだ。被害者は「私の回復に最も必要なことは許し」だと言い、「誤ちを心から認めてほしい」と述べた。与党が、補欠選挙を行う理由となったパク前市長の強制わいせつ加害事実を明確に認め、党レベルの措置を打ち出してこそ「許し」と「日常への復帰」が可能になると訴えた。

17日午前、ソウル市中区明洞のあるホテルで開かれた「ソウル市長威力性暴力事件被害者と語る」記者会見の案内板=写真/韓国女性電話のFacebookより//ハンギョレ新聞社

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「イ・ナギョン、パク・ヨンソンの謝罪は真正性・現実性がない」

 被害者は17日午前、ソウル市中区明洞(チュング・ミョンドン)のティーマークグランドホテルで開かれた記者会見「ソウル市長威力性暴力事件被害者と語る」に出席した。被害者が支援団体などを通さず、自ら取材陣と会って立場を明らかにしたのは今回が初めて。

 被害者は記者会見に出た理由について「私の被害事実を歪曲し傷つけた政党から市長候補が選出された。(選挙後)私の場所には戻れないという怖れを感じている」と答えた。さらに、民主党の謝罪は、内容と形式のいずれも正しくないと述べた。「イ・ナギョン前代表とパク・ヨンソン(ソウル市長)候補は、何に対する謝罪なのか明確に指摘していないと思う」とし、「被害を訴えている人」という名称を使って被害事実を矮小化・歪曲したこと▽党規約を変えてソウル市長候補を選出したこと▽ソウル市長の選挙陣営の構成などを列挙した。「謝罪する前に事実認定と後続措置がなければならない。これまでの謝罪は真正性も現実性もない謝罪だった。(真に謝罪するのは)今からでも遅くない」と述べた。

 民主党のイ・ナギョン前代表(常任選挙対策委員長)は今年1月、国家人権委の調査結果が出た後、被害者に謝罪の意を表明したが、事件当初、自分をはじめとする民主党議員が被害者を「被害を訴えている人」などと呼んだことについては謝罪や釈明はしなかった。現在、パク・ヨンソン市長候補陣営では、「被害を訴えている人」という呼称を使ったナム・インスン、チン・ソンミ議員が共同選挙対策委員長として、コ・ミンジョン議員が報道担当として活動している。被害者は「『被害を訴えている人』と命名した議員が自ら謝罪するよう、パク・ヨンソン候補に厳しく言ってもらいたい」と話した。被害者はナム議員などに対する党レベルの懲戒も改めて要求した。

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「人権委の決定は実体的真実に近い…不毛な論争はやめて」

 被害者は、1月に国家人権委員会が「パク前市長が被害者に行った性的言動はセクハラに当たる」と判断した後も、被害事実を否定している人々に「もう不毛な論争はやめてほしい」と訴えた。

 被害者は「防御権を放棄したのは相手方(パク前市長)だ。故人が生きて司法手続きを踏み、自ら防御権を行使していたら、もう少し事件の真実に近づいていたと思う」とし「この状況を悪用して私を非難する攻撃(は全て私に向けられている)。(故人に対する)喪失と苦痛には共感する。しかし、その矢を私に向ける行為はもうやめてほしい」と述べた。

 被害者は人権委の決定について「私が期待したものより実体的な真実に近かった」と評価した。被害者は「昨年7月以降『公訴権なし』で捜査が終結するという皆の予想と異なり、実体的な真実を明らかにした」とし「私の一方的な主張だけでなく、具体的な証拠、参考人の陳述などに照らして事実が認められた」と述べた。人権委は職権調査の結果、パク前市長が被害者に深夜に不適切なメッセージと写真を送ったこと、ネイルアートを施した手と爪を触ったことなどが確認されたと明らかにしている。

「韓国女性の電話」のソン・ランヒ常任代表が17日午前、ソウル市中区のあるホテルで開かれた記者会見「ソウル市長威力性暴力事件被害者と語る」に出席し、被害者のメッセージを朗読している=写真共同取材団//ハンギョレ新聞社

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オンラインに出回る個人情報…「残忍な2次加害の中、日々耐えている」

 被害者は同僚として働いていたソウル市役所の職員が自分を誹謗し、オンライン上に自分の個人情報が出回ることに対する苦しみも語った。

 被害者は被害事実を明らかにして以降の、最も耐えがたいことが「個人情報流出」だとし、「(パク前市長の)支持者による残忍な2次加害の中で一日一日を耐えている」と話した。この日の記者会見は、被害者の露出を最小化する方式で行われた。被害者の言葉は「韓国女性の電話」のソン・ランヒ常任代表が代読し、記者会見文の朗読と質疑応答は写真およびテレビカメラ記者が退場した中で行われた。

 「極端な選択(パク前市長の自殺)によって加害者と被害者の位置が入れ変わり、故人を追悼する巨大な動きの中で、私という人間の居場所がないと感じた」と話す時はすすり泣く場面もあった。また「私の家族は、私の個人情報に関する掲示物を申告して削除している」とし、2次加害に対する基準の確立と制度支援が切実に求められると話した。

 また、一部のパク前市長の秘書たちや支持者が、自分がパク前市長に書いた手紙などを根拠に被害事実を否定していることについては、「私が職場で自分の使命を果たし一生懸命働いた瞬間が、自分の被害をなきものにすることを証明するものとして使われることは非常に残念だ」と述べた。

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「巨大な権力に対し直ちに問題提起できる社会を作ってほしい」

 政界に対しては「巨大な権力の前で、これはおかしいと思ったとき、直ちに問題提起できる社会を作ってほしい」と要求した。そもそもソウル市長補欠選挙が行われるきっかけとなったために中心議題となるべき「威力による性暴力」問題が、実際の選挙局面では政争に押されて忘れられている状況を批判したのだ。また「被害者の方が気をつけなくてはならないのではない社会、被害者が遠まわしに訴えなければならないのではない社会、加害者が自ら気をつけるのが当然な社会になってほしい」と訴えた。

 被害者は今後の計画について「(私が)話す時期は今日が最後だと思う。これからは彼らが措置を取り、行動する時だ」と述べた。

イム・ジェウ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/women/987193.html韓国語原文入力:2021-03-17 20:32
訳C.M

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