韓国のキムチ輸出業者が「大韓民国キムチ」という名称を使える道が開かれたにもかかわらず、実際使用できず、頭を抱えている。輸出市場で「韓国キムチ」というプレミアムを得るためには、値段が比較的高い「国内産主原料」を使わなければ認められないためだ。
2日の農林畜産食品部と食品業界の説明を総合すると、昨年8月に施行された改正「キムチ産業振興法」に基づき、「韓国キムチ」または「大韓民国キムチ」という用語を使用するためには「地理的表示」登録をしなければならない。農水産物品質管理法に規定された「地理的表示権」とは、地理的特性を保有する農水産物または加工品製造業者が行使できる排他的な知識財産権だ。利川(イチョン)米や宝城(ボソン)緑茶、ボルドーワイン、ナポリピザが代表的な事例だ。韓国で国家名の地理的表示権を導入したのは「韓国(高麗)人参」以来、キムチが2番目。
最近、キムチの輸出増加が続く中、低価の外国産キムチが世界市場で韓国キムチと間違われることを防ぐため、韓国政府と業界の共感が形成されており、法改正は難しくなかった。関税庁が集計した昨年のキムチ輸出額は1億4243万ドルで、2019年(1億479万ドル)より36%増加した。輸出国は日本と米国を含めた85カ国に達する。新型コロナルイスの感染拡大で、キムチが免疫に役立つという認識を土台に、輸出増加幅が大きくなった。
しかし、いざ法施行から8カ月の間に、韓国のキムチ製造会社のうち国名の地理的表示権の登録申請をしたのは1社もない。表示権の取得要件が厳しいからだ。農水産物品質管理法によると、農水産加工品は「対象地域でのみ生産された農水産物を主原料とし、当該地域で加工されたものでない場合」は表示権登録が制限される。キムチの場合、国内で生産された主原料(混合比率の高い3つ以内の原料)を基に、国内で加工しなければ表示権を取得できない。主原料はキムチによって違うが、白菜や大根、唐辛子などが含まれる。
キムチ製造会社は「異常気象と災害により原材料の需給問題が深刻だ」とし、韓国政府に“例外”の適用を要請している。例えば白菜の不作などがあった場合、主材料の需給が難しくなり、価格変動性も急激に大きくなる。そこでキムチ協会は最近、認証実務を担当する農産物品質管理院に異例のガイドラインを要請した。
キムチ業界はまた、「通関リスク」も懸念している。国内産の唐辛子粉の大半は、米食品医薬局(FDA)が使用を禁止したヘキサコナゾールなどの農薬成分を含んでおり、国内キムチ輸出企業各社は、主に輸入産の唐辛子粉を使っている。主原料の唐辛子粉が輸入産なので、地理的表示権を取得するのは難しいというのが業界の主張だ。
農林畜産食品部は原則的に「キムチ製造会社が地理的表示登録を申請すれば、審議分科委員会で審査し、その結果によって決定される」としながらも、“原則論”を強調する。農林部の関係者は「(すでに地理的表示登録をしている)麗水(ヨス)の突山カッキムチ(からし菜のキムチ)もすべての材料の需給と加工を麗水で行っている」と述べた。キムチに限って主材料の要件などに例外を設けるのは難しいということだ。韓国政府は今月中にキムチ業界の意見を聴取する関連公聴会を開く方針だ。