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日本に「国家賠償」命じた「慰安婦判決」、その後のシナリオは

登録:2021-01-11 03:42 修正:2021-01-11 07:00
日本メディア「国際司法裁判所での解決を検討」 
韓国政府が拒否すれば、国家賠償認めた「象徴的判決」として残る可能性も
日本政府に対し、日本軍「慰安婦」被害者への賠償を命じた韓国司法の判決が出た8日に、ソウル鍾路区の「平和の少女像」前に置かれていた被害者たちの写真/聯合ニュース

 韓国司法が8日に下した日本軍「慰安婦」被害者への賠償を命じる判決について、日本のメディアは国際司法裁判所(ICJ)への提訴の可能性に言及している。人類に対する「反人道的不法行為」である慰安婦問題をめぐる、30年にわたって繰り返される外交攻防を終えて、判決を履行させるには、韓国においてもこれに応じることを積極的に検討しなければならないと見られる。

 日本国内の右翼の情緒を反映する産経新聞は9日、政府当局者の言葉を引用し、ソウル中央地裁の慰安婦判決について「日本政府が、国際司法裁判所への提訴を検討していることが分かった。韓国の裁判権に服することを避けるため控訴はしない一方、国際司法の場で韓国の不当性を明らかにする考え」と報じた。朝日新聞も10日、同様の趣旨の報道において、「訴訟手続きの推移や韓国側の対応を見極めて判断する」との日本政府の方針を伝えた。

 国際司法裁判所は、国家間紛争が発生した時に、国際法によって解決する機関だ。日本政府はこれまで、独島をめぐる領土問題、2018年10月の韓国最高裁の判決で確定した強制動員被害者への賠償問題などについて、国際司法裁判所で問題を解決しようとの旨を公式・非公式に提案してきている。国際司法裁判所の判断を受けるには両国の同意が必要だが、韓国が応じていないため実現したことはない。これを念頭に置いたかのように、日本政府高官は朝日新聞に「国際司法裁判所への提訴も有力な選択肢だ。応じなければ、韓国側の立場が悪くなるのではないかと思う」と述べた。

 韓国がこれまで国際司法裁判所で解決しようとの日本の要請を拒否してきたのは、独島のケースでは、実効支配中の領土問題を解決するために国際司法裁判所に持ち込むのは何の実益もなく、最高裁判決のケースでは、日帝による朝鮮人強制動員が1965年の韓日請求権協定で解決されていない「反人道的不法行為」と認められるか100%の確信が持てなかったからだ。韓国の最高司法機関である最高裁の判決が覆されれば、政府も大きな打撃を受けざるを得ない。

 しかし慰安婦問題は、1996年の国連人権委員会のクマラスワミ報告書、1998年の国連人権小委員会のマクドゥーガル報告書などを通じて、日本政府が法的責任を負うべき「人道に対する犯罪」とであることが繰り返し確認されている。国際司法裁判所も「日本政府が計画的、組織的に広範に引き起こした(戦時下の女性に対する)反人道的犯罪行為」である慰安婦問題については「国内裁判所は外国政府に対する訴訟において裁判権を行使しない」という国際慣習法上の主権免除(国家免除)の原則を適用しなかった韓国司法の判断を支持する可能性が高い。そのためか、産経新聞も「相手の土俵に乗ることにつながりかねない」との政府内の慎重論も紹介している。茂木敏充外相は9日の記者会見で「国際法上も2国間関係上も、到底考えられない異常事態」が発生したとし「あらゆる選択肢を視野にいれて毅然と対応していく」と述べるにとどまった。

 実際に慰安婦問題について国際司法裁判所の判断を仰ぐことになれば、主権免除の原則を適用しなかった韓国裁判所の判断は正しいのか▽1965年の請求権協定で解決済みなのか(日本は「解決済み」、韓国は「解決されていない」との立場)▽2015年12・28合意のような政府間合意の有効性をどう考えるか、などをめぐって熾烈な論争が繰り広げられるとみられる。また判決の結果によっては、両国いずれも国内への影響が避けられない。

韓国司法の判決が下された8日、ナム・グァンピョ駐日韓国大使が日本外務省に呼ばれ、抗議を受けた後、記者団の質問に答えている=東京/共同・聯合ニュース

 韓国政府が日本の提案を拒否すれば、残る代案は3つだ。日本は、同判決に対する控訴などを行わないことを明らかにしているため、一審判決が確定される。この場合、判決をどのように履行させるかが今後の課題として残る。

 まずは、12・28合意に沿って作られた和解・癒し財団に日本が拠出した金額(約108億ウォン)のうち、残る金額(約50億ウォン)でこの判決が履行できるかどうか、外交部が日本政府と協議する可能性だ。政府は今回の判決が下された8日、外交部報道官による論評に「政府は2015年12月の韓日両国政府間の慰安婦合意が、両国政府の公式合意であるということを想起する」という一文を入れている。韓国政府が12・28合意について言及したのは、カン・ギョンファ外交部長官が2018年1月に「被害当事者女性たちの意思をきちんと反映していない2015年の合意は、日本軍慰安婦被害者問題の真の問題解決にはなり得ない」と述べて以来、事実上初となる。しかし、和解・癒し財団が解散した後に残った金額を判決履行に使ってもよいと述べることは、判決を認めることを意味するため、日本が同意する可能性は事実上ない。韓国政府が日本の反対を押し切ってこの金で判決を履行しようとすれば、深刻な外交摩擦は避けられない。

 二つ目の代案は判決の強制執行だ。日本政府は「この判決に決して応じることはできない」という立場であり、判決を履行するには日本政府の韓国内にある資産を探し出し、差し押さえて売却せねばならない。先の2018年10月の強制動員についての最高裁判決でも、原告団が日本の民間企業の国内資産に対する強制履行手続きを進めたことから、2019年に大きな摩擦となっている。今回は相手が政府であるだけに、「断交」に次ぐ深刻な外交摩擦が予想される。その上、駐韓日本大使館などの外交資産は、外交関係に関するウィーン条約第22条に則り「強制執行」はできず、他の財産を探し出さねばならない。理性的に考えれば考慮しうる選択肢ではない。

 三つ目の代案は長期対峙だ。判決は確定したものの、執行できないまま長期の課題として残しておくのだ。この場合、8日の判決は、慰安婦問題に対する日本の法的責任を認めた韓国司法の初の判断という「象徴的な判決」として残ることになる。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/978066.html韓国語原文入力:2021-01-10 14:53
訳D.K

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