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イランが本当に望むのは韓国による新型コロナワクチンの代理購入か

登録:2021-01-07 08:33 修正:2021-01-07 09:35
イラン当局者、自国メディアに 
「韓国とワクチンを“バーター”するのはどうか」
イラン革命防衛隊が今月4日(現地時間)、中東産油国の主要原油輸送路であるホルムズ海峡で韓国船籍の「韓国ケミ号」(1万7426トン)を拿捕する過程を撮った映像を公開した=FARSニュースの動画よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 イランの本当の狙いは韓国による新型コロナウイルスワクチンの「代理購入」なのか?

 6日、イランは韓国船舶の抑留問題が海洋汚染と関連した「完全に技術的問題」であることを再度強調し、韓国の訪問計画に「必要ない」という強硬な態度を示した。しかし、イランの表面的な主張通り、この問題が完全に「技術的問題」だとするには、抑留の時期があまりにも微妙で、対応もまた過度に激しいため、イランの“真意”が何なのかをめぐり、韓国政府の悩みが深まっている。

 これと関連して韓国で大きな関心を集めた事実は、イランが韓国の保管している原油代金約70億ドルの一部を活用し、新型コロナワクチンの購入を試みたことだ。韓国とイランは2010年から、韓国に開設されたイラン中央銀行の口座を通じ、ウォン建てで貿易決済を行ってきた。しかし、2019年9月に米国がイランを特別指定国際テロ組織(SDGT)に指定し、両国間の貿易が事実上中断されたため、イラン政府資産約70億~80億ドルが韓国で凍結されている状態だ。米国の経済制裁で大きな打撃を受けているイランは昨年7月、「国際司法裁判所(ICJ)への提訴もあり得る」と訴えるなど、資金の返還を強く要請してきた。世界保健機関(WHO)の5日の資料によると、これまでイランの新型コロナ感染者数は124万9507人で、このうち5万5605人が死亡した。ワクチン購入が緊急の国家課題となっている。

 外交部は5日、韓国とイランの間で協議が行われてきたことを認めた。外交部の関係者は、「イラン政府が(新型コロナワクチンの共同購入の国際プロジェクトである)COVAXファシリティを通じ、ワクチンを確保しようとした。代金を支払う際、韓国ウォン資金を利用して納入する問題を巡り、米財務省と多方面で協議を行った結果、米国財務省の特別承認を受け、それに従って私たちが代金を支払おうとしたが、送金過程でドルに変えれば一次的に米国銀行に資金が流れるため、米国政府がこの資金に何か措置を取るかもしれないという懸念から、イラン側がまだ決定を下していない状況だ」と述べた。すなわち、イランが韓国にある凍結資金で人道的物品である新型コロナワクチンを購入しようとしており、米国の承認も取り付けたが、米国を信頼できず、最終決定を下せなかったということだ。となると、イランも韓国が善意に基づいてこの問題を解決するために相当な外交努力を傾けたことを知っているはずだ。ワクチン確保を理由に船舶の抑留のような激しい圧力を加える理由はない。

イランが韓国と凍結資金と新型コロナワクチンを交換する交渉を進める計画であることを報じた3日付の「テヘラン・タイムズ」の記事//ハンギョレ新聞社

 ここでじっくり吟味すべきイラン当局者の発言がある。イランの英字メディア「テヘラン・タイムズ」は3日、イランのエスハグ・ジャハンギリ第1副大統領とイラン商工会議所のホセイン・タンハイ会長が前日に会談し、「韓国銀行(韓銀)にある石油輸出凍結資金と新型コロナワクチンと他の物品を交換(barter)」するよう、交渉を進めることにしたと報じた。ここで注意すべきなのは、イランが物々交換を意味する「バーター」という言葉を使った点だ。タンハイ会長は「韓国にある我々の資産と新型コロナワクチンの交換方法を提案する。リストにある特定の物品をバーターするのに韓国人がどれだけ協力する意思があるのか見守る」と述べたという。さらに「テヘラン・タイムズ」は当局者の話を引用し、イランが望む具体的な物品として、新型コロナワクチン以外に原資材、薬品、石油化学製品、自動車部品、家庭用電子製品などを提示した。

 韓国政府当局者の発言と「テヘラン・タイムズ」のイラン当局者の発言を総合すると、次のような推定が可能になる。イランは、自国内に増え続ける新型コロナ感染者問題に対応するため、急いでワクチンの購入に乗り出しており、米国の深刻な経済制裁下にあるイランが、韓国が保管している70億ドル以上の莫大な資金を財源として活用しようとした。当初の計画はCOVAXファシリティを通じてイランが直接購入することだった。しかし、イランの資金が米銀行を経由する過程で、米国がこの資金を再び差し押さえるリスクがあるとして、結局決断を下せなかったということだ。

 それなら、韓国がワクチンを代理購入して、これを韓国内の凍結資金と交換すること(バーター)はどうだろうか。しかし、各国がワクチン確保のため血眼になっている現在の状況で、韓国が協力するかどうか、イランは確信できなかった。タンハイ会長も「見守る」と述べた。結局、韓国政府を動かせる“外交的テコ”が必要だったのかもしれない。もちろん外交部当局者も重ねて強調したように、「予断は禁物」であり、様々なシナリオを持って事態に対応すべきなのはいうまでもない。

 現在、イランは今回の船舶抑留問題が徹底的な技術的問題だと繰り返し強調している。しかし、殺伐とした中東の国際政治の場で“不倶戴天の敵”の米国や“宿敵”のイスラエル、それに劣らず憎い“ライバル”のサウジアラビアなどと対峙しながら生存してきたイランの険しい歴史を考えると、イラン当局者の発言を額面通り受け取れない側面もある。韓米同盟の下で“箱入り外交”をしてきた韓国とは、外交的気質が全く異なるかもしれない。ワクチンと船舶抑留は何の関係もないとし、直接交渉を避けて交渉力を高めてから、一気に新型コロナワクチンとの交換(バーター)などの要求を切り出す可能性もある

キル・ユンヒョン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/977480.html韓国語原文入力:2021-01-0613:20
訳H.J

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