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[ニュース分析]イラン、韓国に凍結された資金のため?バイデンに向けた戦略的挑発?

登録:2021-01-06 09:45 修正:2021-01-06 13:06
イラン「韓国船拿捕」の真意は
イラン革命防衛隊が4日(現地時間)、ホルムズ海峡で韓国船「韓国ケミ号」を拿捕する過程を撮った映像を公開した。ヘリコプターで撮影したと推定される映像にはイラン革命防衛隊所属の小型高速艇が韓国ケミ号に接近する場面が映っている=FARSニュース映像キャプチャー//ハンギョレ新聞社

 海洋汚染に対する「技術的措置」なのか、差押え資産の返還を求める「卑劣な圧迫」なのか。それでなければ、米国とイランの間の「戦略的対立」に巻き込まれたのだろうか。イランが4日午後、韓国の化学物質運搬船「韓国ケミ号」(1万7426トン級)を拿捕する“異例”の行動に出、その背景に関心が集まっている。ちょうどこの日は、イランが国際社会の憂慮を顧みずウラン濃縮度を20%まで上げる作業を始めた日だ。イランの真の「本音」が何かによって、事態の解決策が大きく変わってくる。

 韓国とイラン外交当局はいずれも、今回の拿捕が海洋汚染に関連する「技術的措置」という公式な立場を明らかにした。外交部のチェ・ヨンサム報道官は5日の定例ブリーフィングで、「イラン外交部高位当局者は『今回の件は単に技術的な事案』という点を明確にしている。外交部は最も早い期間内に韓国船舶および船員の早期抑留解除を目標にする」と述べた。イラン外交部のサイード・ハティブザデ報道官も前日、ホームページに発表した声明で、「今回の問題は完全に技術的なものだ。船舶が海を汚染したためだ」と明らかにした。午後、外交部に呼び出されたサイード・バダムチ・シャベスタリ駐韓イラン大使は、船員が安全な状態であることを確認した。韓国政府は、海軍清海部隊の崔瑩艦(4400トン級)をホルムズ海峡に派遣したのに続き、コ・ギョンソク外交部アフリカ中東局長を実務班長とする代表団を派遣する予定だ。さらに、チェ・ジョンゴン第1次官を10日に現地に送り、事態の早期解決を図るものと見られる。両国政府の説明通り「技術的」な問題が原因なら、事態は円満に解決できる。

 しかし、より複雑な背景があるという主張もある。韓国が差し押さえているイランの原油輸出代金に対するイランの不満が今回の事態の直接・間接的な原因になったということだ。韓国とイランは2010年から、韓国に開設されたイラン中央銀行の口座を通じてウォン建てで貿易決済を行ってきた。しかし、米国が2019年9月にイランを特別指定国際テロ組織(SDGT)に選定し、両国間の貿易が事実上中断された。そのため、約70億ドルが韓国で凍結されている状態だ。米国の経済制裁で大きな苦痛を受けているイランは、昨年7月「国際司法裁判所(ICJ)に韓国政府を提訴する可能性もある」と訴えるなど、資金返還を強く要請してきた。

 これに関し外交部当局者は「イランが韓国内の凍結資金で(新型コロナウイルスワクチンの共同購入国際プロジェクトの)『COVAXファシリティ』のワクチンを確保する案を米国と協議し、米財務省から特別承認を受けた。しかし、送金過程で資金をドルに変えれば米国銀行に金が入るが、この過程で米国政府がその資金をどうするか分からないという懸念のため、イラン政府がまだ決定を下していない」と明らかにした。イラン政府のアリ・ラビエイ報道官は5日の記者会見で「韓国人船員たちを人質に取っているのではないか」という質問に「人質劇が存在するとしたら、それは我々の資金70億ドルを根拠なく凍結した韓国政府である」と述べ、余韻を残している。

 米国など国際社会は、もう少し深刻な視線で今回の事態を見守っている。トランプ政権の「最大の圧迫」政策により、米国とイランは薄氷を踏む対立を続けている。拿捕前日の3日は、米国がドローン攻撃を通じて「イランの英雄」と崇められているイラン革命防衛隊クドス軍司令官のガセム・ソレイマニ氏を暗殺してからちょうど1年になる日だ。昨年11月27日には核科学者のモフセン・ファクリザデ氏がイスラエルの諜報機関(モサド)と推定される勢力によって死亡した。“報復”を主張する強硬世論が沸き上がると、イラン最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイ師は「暗殺に対する報復を実行する」と明らかにした。その直後の12月20日、イラクのバグダッドで米国大使館を狙ったと推定される“怪しい”ロケット弾攻撃が行われた。米国はその後、核を搭載できる戦略爆撃機B-52を3回もペルシャ湾に向かわせ、原子力潜水艦ジョージア、空母ニミッツを派遣してイランを牽制した。このような殺伐とした対立が起こる中、イランが世界原油物流量の30%が行き交うホルムズ海峡を封鎖する能力を誇示したのだ。

 さらに憂慮されるのは、イランが船を拿捕した当日、濃縮度20%(兵器用高濃縮ウランの濃縮度は90%以上)のウラン生産を再開したという点だ。イランはトランプ政権が2018年5月に「イラン核協定」を一方的に破棄した後もこの枠組みを維持してきたが、もはや一線を越えた。「就任後、核協定に復帰する」と言ってきたジョー・バイデン次期大統領を相手に「戦略的挑発」に出た状況だ。韓国外交部当局者も「いくつかのシナリオと事情を考慮し、(イランの意図を)把握中だ。予断を下すには時期尚早」と述べた。

キル・ユンヒョン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
http://japan.hani.co.kr/arti/international/38750.html韓国語原文入力:2021-01-0602:45
訳C.M

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