軍事境界線一帯の民間人統制線の北側地域で対北朝鮮ビラを散布した場合、処罰できるという規定を新たに設けた「南北関係発展法」改正法律が「表現の自由を制限する」という一部の批判に加え、「再考勧告」まで出たことを受け、韓国政府が積極的な反論に出た。
「ラジオ・フリー・アジア」(RFA)は16日、北朝鮮の人権問題担当する国連のトーマス・オヘア・キンタナ特別報告者が対北朝鮮ビラ禁止法について「法施行の前に、関連する民主的機関が適切な手続きに則って改正案を再考することを勧告したい」という見解を明らかにしたと報じた。キンタナ氏は「改正案は法に基づいて規定され、韓国国会における民主的討論の対象」という点は認めながらも、「様々な方面で北朝鮮の住民に関与しようとする多くの脱北者や市民社会団体の活動に厳しい制限を設けている。改正案の不明で包括的な文言は国際人権標準の順守を困難にする」と指摘した。
国会は今月14日、軍事境界線南側における民間人統制線以北地域で、対北朝鮮拡声器放送や対北朝鮮視覚媒介物の掲示またはビラなど(ビラや広告宣伝物・印刷物・補助記憶装置など物品、金銭またはその他の財産上の利益)を北朝鮮の不特定多数に配布し、「国民の生命や身体に危害を及ぼしたり、深刻な危険を生じさせる行為」に対して、3年以下の懲役または3千万ウォン(約290万円)以下の罰金に処することを決めた。
これに対して統一部当局者は17日、「国会で憲法と法律が定めた手続きに従って民主的論議と審議を通じて改正された法律に対し、『民主的機関の適切な再考の必要性』を言及したことに対し、遺憾を表する」と述べた。匿名の当局者による論評の形を取ったものの、統一部が国連の北朝鮮人権問題特別報告者の見解に真っ向から反論したのは極めて異例だ。統一部当局者は、改正法律は「接境地域の国民の生命と安全を保護しながらも、表現の自由も保護するために立法府がこれまでの判例などを考慮し、“表現の方式”を最小限の範囲で制限したもの」としたうえで、「キンタナ報告者は“多数の接境地域に住む国民の生命の安全を保護”するために、“少数の表現方式を最小限に制限”したという点をバランスよく見なければならない」と指摘した。
カン・ギョンファ外交部長官も論争に加わった。カン長官は16日、CNNテレビのインタビューで、対北朝鮮ビラ禁止法について、「(同法が)表現の自由の制限だという主張がある。表現の自由は非常に重要な人間の権利だ。しかし絶対的なものではない」と述べた。さらに「(同法は適用)範囲が限られている。このような行為(対北朝鮮ビラ散布)が国民の生命と安全に害を及ぼし、危険をもたらした場合にのみ該当する」とし、「(対北朝鮮ビラ散布などが)住民のいる地域としては世界で最も軍事化されたところで行われているため」と説明した。カン長官はまた、2014年10月に北朝鮮が対北朝鮮ビラを問題視して高射砲の銃撃を加え、韓国軍が応射したことで軍事的緊張が高まった事例と、今年6月の開城(ケソン)の南北共同連絡事務所の建物爆破などについても言及し、同法の不可避性と正当性を強調した。