朝鮮労働党中央委員会のキム・ヨジョン第1副部長は8日、「南朝鮮外交部長官のカン・ギョンファの妄言を決して忘れない」という題名の談話を発表したと、「朝鮮中央通信」が9日付で報道した。
キム・ヨジョン第1副部長は「数日前、南朝鮮外交部長官のカン・ギョンファが中東訪問中に我々の非常防疫措置に対して身の程知らずの発言をしたことを、報道を通じて具体的に聞いた」としたうえで、新型コロナウイルスの感染者がこれまで一人もいないという北朝鮮当局の公式発表を「信じがたい」としたカン長官の発言を「妄言」と非難した。
これに先立ち、カン長官は5日、バーレーンで開かれた「マナマ対話」第1セッションでの討論の際、「彼ら(北朝鮮)は依然として(新型コロナの感染)事例がないと言うが、これは信じがたい」とし、北朝鮮側の発表の信頼性に疑問を呈した。さらに、新型コロナに関連した北朝鮮の対応を「閉鎖的でとてもトップダウン式」だとしたうえで、「実はこの(新型コロナという)挑戦が北朝鮮をもっと北朝鮮らしくしたと思う」と述べた。
キム・ヨジョン第1副部長はカン長官のこうした発言を狙って「後先構わず妄言を吐くのを見ると、冷え込んだ南北関係にさらに寒波を呼び寄せたくてたまらないようだ」と指摘した。
キム第1副部長の談話は、約200字で非常に短い。外部用の「朝鮮中央通信」にのみ掲載され、「人民の必読紙」の「労働新聞」には掲載されなかった。談話の対象が内部ではなく外部、つまり韓国側当局であることを裏付けている。
これは今年6月、一部の脱北民団体による対北朝鮮ビラ散布を「反共和国敵対行為」と規定し、結局、開城(ケソン)共同連絡事務所ビルの爆破(6月16日)に至ったキム第1副部長の連鎖談話が、当初から「労働新聞」に掲載された前例と対比を成している。
カン長官の発言を「決して忘れないし、しっかりその代償を払わせる」という文言から、今回の談話は韓国に対して直ちに“行動”に出るという予告ではないものと見られる。それよりも長期にわたる国境閉鎖を実施し、新型コロナの遮断に努めてきた金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の対応に疑問を呈する発言は慎むべきという“警告”と言える。「労働新聞」は同日も金委員長が主導した非常防疫措置を「どんな代償を払っても国の安全と人民の生命安全を死守するために欠かせない要求」だと強調する論説を掲載した。
キム第1副部長の個人名義談話は、7月10日の対米談話以来5カ月ぶりで、範囲を対南談話に絞れば6月17日以降6カ月ぶりだ。