「一人で仕事しているので人に会うことがほとんどないんです。協業する友達が欲しかったんですが、ここのコミュニティを通じて協業して才能を分かち合える友達にたくさん会えそう」
1日、ソウル城北区(ソンブクク)の新設洞(シンソルドン)駅近くのホテルをリモデリングした青年住宅「安岩生活」で会った入居者のイ・ハンソルさん(33)は、入居を選んだきっかけとして「コミュニティ」を挙げた。実際、この日見学した10階規模の建物の「安岩生活」は、地下2階と地上1階、屋上などに共同会議室と共同作業室、コミュニティカフェ、バーベキュー施設など、他の入居者と共同で使用するシェアスペースが多かった。
個人の部屋にはベッド、タンス、冷蔵庫などのオプションが設置されていたが、個人のキッチンや洗濯機はない。代わりに入居者が一緒に使う共同キッチンと共同洗濯スペースが設けられていた。多くの記者が個人の炊事、洗濯ができない点に注目したが、当のイさんはそこには重きを置いていなかった。「洗濯や料理は毎日しません。キッチンや洗濯機が部屋にあるとむしろスペース活用に非効率的。部屋には毎日使うベッドやタンスくらいがあればいいんです」
韓国政府が先月19日に発表した伝貰(チョンセ、保証金のみの賃貸方式)住宅対策に含まれ注目されていた、ホテル改装型公共賃貸住宅の第1号が公開された。先月30日から入居を開始した「安岩生活」は、2012年に竣工した旧リッツェンカウンティ観光ホテルを韓国土地住宅公社(LH)が220億ウォン(約21億円)かけて若者向け賃貸住宅へとリモデリングしたもの。ソウル市がソウル鍾路区(チョンノグ)の東廟前(トンミョアプ)駅近くのホテルをリモデリングした事例があるが、これは民間賃貸事業者が主導したものであり、「安岩生活」のように公共住宅事業者が主導したホテル改装賃貸住宅は今回が初めてだ。
1日に見学した「安岩生活」は、非住居施設を住宅に改装することに対する世間の懸念とは異なり、民間のオフィステル(業務施設に住居空間を備えた建物)に劣らない外観と室内インテリアを取り揃えていた。床暖房や個別暖房も整っている。122世帯のうち2室は障がい者に、56室は起業者や文化芸術クリエイターに、64室は一般の若者に供給された。8月に入居者募集公告を出すと、250人余りが申し込み、起業者タイプは活動計画書に対する書類審査によって、一般若者タイプは抽選で入居者を選定した。賃貸料は保証金100万ウォン(約9万4千ウォン)に家賃27万~35万ウォン(2万5千~3万3千円)ほどで、近隣の相場に対し45%水準で供給された。
特に20~30代の若者1人世帯の生活のトレンドを反映させ、シェアスペースを極大化したシェアハウス(共有住宅)という点が注目を集めた。LHが若者共有住宅の運営のノウハウがある社会的企業のアイブキに運営を委託した「安岩生活」は、公共賃貸住宅でありながら、社会的企業が運営に参加する社会住宅でもある。アイブキは、東大門区長安洞(トンデムング・チャンアンドン)で「安岩生活」と同じような若者向けシェアハウス「長安生活」を運営している。アイブキのイ・グァンソ代表は「個人では揃えられない料理道具が整ったシェアキッチンで料理が上手な人が料理を作って分かち合ったり、販売もするなど、孤立したワンルームでは起きえない様々な相互作用が可能なのがシェアスペース」と説明した。