チュ・ミエ法務部長官がユン・ソクヨル検察総長に対する監察を指示するなど、両者の対立が続いているが、大統領府と与党の共に民主党は、対立の構図を整理する“人為的介入”を控え、ひとまず事態の推移を見守るという立場だ。両者の衝突を放置しているという批判のためにチュ長官を退かせれば、検察改革の後退と映る可能性があり、任期が保障されたユン総長の中途辞任を強制する場合、逆風も懸念されるからだ。
まず、大統領府と与党の選択肢のなかに、今すぐチュ長官を交代させるカードは含まれていないというのが与党の人々のメッセージだ。党関係者は19日、「チュ長官の態度は指摘することができるが、本質である検察改革を十分に行なっているというのが、党内の大半の評価だ。チュ長官がいま退く理由はない」と述べた。大統領府も、いまチュ長官を交代させる場合問責だとみられることになり得るため、そのような案を考慮していないことが分かった。与党では、チュ長官を交代させても、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)のトップが任命され公捜処が公式に稼動するなど、検察改革の象徴的な措置が行われる契機が設けられなければならないという話も出ている。
与党には、政治的発言をするなどのユン総長の言動に不満が多いが、法的に2年の任期が保障されたユン総長を解任するのは難しいとみている。与党の別の関係者は、「大統領には検察総長の任命権だけがあり、任免権があるわけではないので、解任は難しいとみている」と述べた。与党が検察総長を弾劾することも負担が大きいという雰囲気だ。検察総長の任期制が導入された1988年以後、6回の検察総長弾劾訴追案が発議されたが、すべて野党が発議したうえに通過した事例もない。残る最後の方法は懲戒解任だ。チュ長官がユン総長に対する監察を指示したので、その結果により懲戒委員会を開き、総長を解任する手続きを進めることができる。
ただし、大統領府と与党は、辞任が避けられない法的・道徳的問題が明らかになったり、自主的に辞任をしない以上、ユン総長が任期を全うするしかないという雰囲気が強い。党関係者は、「無理に辞任を強制することが難しいのは事実」だと述べた。共に民主党のイ・ナギョン代表が17日、ジャーナリスト団体の寛勲討論会で「(ユン総長が政治的中立などの議論を)払拭する必要がある。もしそのような考えがないのなら、本人が選択しなければならない問題」だと述べたことも、ユン総長が自主的な辞任を決心しない以上、見守るという意味だと分析される。
しかし、大統領府が「チュ長官とユン総長の対立」の長期化を責任を持って整理せずに放置しているのではないかという批判も出ている。これについて大統領府のある関係者は「大統領は刷新人事などはあまり行わない。ユン総長の任期(保障)もそうした点からみなければならないようだ」と述べた。ユン総長をあえて任期途中で退かせる場合、むしろユン総長が政治的に株が上がるだけで、場合によっては逆風を受けることになりうるという判断も大統領府内部に広がっている。