「過去5年間の観覧客は48万人ほどです。年平均だと、全国47の国立博物館の最下位です」
来月で設立5年を迎える国立日帝強制動員歴史館(以下「歴史館」)を昨年9月から率いるパク・チョルギュ館長の言葉だ。歴史館は「対日抗争期強制動員被害調査および国外強制動員犠牲者等の支援に関する特別法」にもとづき、2015年12月に釜山南区(プサン・ナムグ)の国連記念公園の隣に建てられた。行政安全部傘下の公共機関である日帝強制動員被害者支援財団(以下「財団」)が委託を受けて運営している。
今月17日にソウルの孔徳(コンドク)駅近くのカフェで会ったパク館長は「開館後の歴史館は、予算支援の貧弱さなどによって事実上現場維持が精一杯でした。今後は歴史館を遺物、資料、展示をオン・オフで統合したスマート博物館にし、より多くの人が訪れるようにしていきたい」と述べた。
「今の歴史館は大学の博物館と似ています」。職員が31人おり、建築面積が3600坪あまりもある歴史館について、パク館長が不満を言う理由は何だろう。「昨年のケースだと、歴史館の展示や遺物の購入、教育に使える純粋な事業費は1億8000万ウォン(約1670万円)に過ぎませんでした。過去5年を通じて似たようなものです。釜山市立博物館ですら1回の企画展に5億ウォン(約4650万円)近く使っています。500億ウォン(約46億5000万円)を投じて歴史館を建設しておいて、事実上放置されてきたんです。開館当時は韓日関係を理由としてそんな状態だったのですが、政権が変わった後も特に変化はありません」
昨年10月、歴史館に国民の注目が集まった。日本の鳩山由紀夫元首相が訪れ、詳しく展示を見て回り、日本の植民地支配の歴史についても謝罪したためだ。鳩山元首相は展示を見て「日本人は(韓国の)強制動員歴史館を訪ね、徴用などの問題について謙虚に歴史的真実を直視してほしい」とも述べた。しかし日本の元首相は、日帝による強制動員の過程と実態を示す展示遺物の解説を日本語で読むことができなかった。「76ある展示パネルのうち、英語の説明があるものが16。日本語と中国語は一つもありません。まず来年初めまでに他の予算を削って英語、日本語、中国語の説明文を作ろうと思っています。歴史館の外国人観覧客は年間1000人です。そのうち70%が日本人です」
来月開館5周年…去年、館長に就任
「500億で建てておいて事実上放置
展示・教育事業の予算はわずか1億8000万ウォン
アジア太平洋強制動員専門資料センターが夢
真実和解委員会で5年間活動
パク館長は、来年は「スマート博物館元年」にするという抱負も明かした。それに向けて地方区選出の国会議員らと会い、予算確保に力を入れているという。「仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を用いた様々な実感型プログラムによって、展示の注目度を高めようと考えています。子ども体験館を活性化し、来月に歴史館で試験的に上演される子ども人形劇も、来年は正式に行う予定です。所蔵資料サービスも計画しています」
パク館長は、世界唯一の日帝強制動員博物館である歴史館が「アジア太平洋地域の強制動員専門資料センター」の役割を果たすことを望んでもいる。「現在の歴史館には、韓国人が日帝強占期にアジア各地に動員された資料があるだけで、他のアジア各国の住民の動員資料はありません。アジア諸国の強制動員被害の実態を示す資料と展示物を集めて共有する『スマート資料館』も作りたいと思っています」。パク館長は「アジア各国の被害事例も見せることが日帝強制動員に対する歴史意識を高め、人権と世界平和教育の場という歴史館設立の趣旨にもより近づいていくはず」と述べた。
釜山大学史学科を卒業し、東亜大で「解放直後の釜山地域の政治社会運動」という論文で博士号を取得したパク館長は、2005~2010年には真実和解委員会で抗日独立運動事件などの調査を担当した。
パク館長は「歴史館所蔵の遺物の90%は寄贈品」とし「今後、強制動員被害者の手記やメモなどの資料がさらに多く発掘されればと思う」と述べた。「手記やメモは、強制動員の内容を豊かに満たしてくれる資料です。財団は今年から被害生存者の口述採録作業を始めています。この記録を活用する役割を担うのも歴史館です。日記や日誌は、感性によるアプローチで、人々が当時の状況をよりよく理解できるようにしてくれます。名簿や手帳とは違います。一部の人たちは、(太平洋戦争当時は)日本に行って暮らした方が楽だったとも言いますよね。手記類や口述・採録資料は強制動員の真相を復元するのに大いに役立つでしょう」