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過労死した宅配労働者の最期の言葉「とてもきついです」…応える市民たち

登録:2020-10-20 02:40 修正:2020-10-20 09:04
宅配労働者10人目の死に 
「あの人も病気になってはいけない人」 
長時間労働慣行の改善を求める 
家の前に菓子や飲み物を出しておいたりも
19日昼にソウル光化門広場で開かれた「宅配労働者追悼および大企業宅配業者糾弾と宅配労働者過労死予防を訴える宅配消費者記者会見」。参加者が12日に亡くなった宅配労働者の故Kさんが同僚に送ったメッセージの記されたプラカードと菊の花を手にしている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 「とてもきついです」

 今月12日に亡くなった韓進宅配所属のKさん(36)が死亡する4日前に会社の同僚に送ったメッセージが、市民の心に響いている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡散以降、宅配労働者の「過労死」が相次ぐ中、事実上の遺言となった30代の労働者の一言に、市民が怒りと哀悼の意を表しているのだ。Kさんを含め、今年だけで10人の宅配労働者が倒れたことで、市民の間からは「宅配業界の根深い高強度労働慣行を改善させるよう、私たちが先頭に立つべき」との声があがっている。

 「今日420個を持って出て、いま家に帰るところ」という宅配労働者Kさんの最期の言葉は、主婦のLさん(57)の心も強くしめつけた。Lさんは、Kさんが亡くなったという記事を読んで、いつも自宅に品物を配送してくれている宅配労働者を思い浮かべた。そして、初めてその人の電話番号を携帯電話に保存した。出庫日や配送予定時刻などを伝えてくる時にだけ目にしていた番号だった。「番号を保存してカカオトークを見たら、その人が息子と撮ったプロフィール写真が出て来ました。その時になってはじめて、あの人も病気になってはいけない『人』なんだと思いました。以前、エレベーターで息を切らしているところに出くわした時も、そんなことは考えられませんでした」。Lさんは19日、本紙にそう語った。

「過労死した宅配労働者の冥福をお祈りします」//ハンギョレ新聞社

 この日のSNSでは「新たな宅配サービス」を提案する消費者の声が相次いだ。あるツイッターのユーザー(@gia*****)は「しばらく宅配利用は自粛することにした。受け取るべきものも忘れることにした」とし「人の方が先だ」とつぶやいた。別のユーザー(@127te****)は「宅配の当日配送、弾丸配送などのサービスをなくしたり、別途に適切な追加費用を徴収するようにしてはどうか。そしてその追加費用でその業務を遂行する人々に賃金を支給し、宅配ドライバーの労働と生活を入れ替えて、かろうじて維持されている現在の構造を変えてはどうか」と提案した。

 本紙がインタビューした市民たちも「宅配労働者に申し訳なく、負い目を感じる」と口をそろえた。会社員のチェ・ジョンヒョンさん(30)は、宅配労働者の過労死のニュースが報じられた18日、自宅前に来る宅配労働者のために飲み物や菓子を用意しておいた。チェさんは「『幸せを伝える宅配が今日配送される予定です』というショートメッセージをもらったのだが、肝心の労働者たちの幸せは守られていないと思う。『頑張ってください』と返事を送ろうかとも思ったが、負担になると思って菓子だけを門の前に置いておいた」と語った。大学生のイ・ミニョンさん(26)は「持病があるので新型コロナの大規模拡散の時は家の外にまったく出ず、宅配だけで生活必需品を受け取っていたが、宅配労働者たちが過度な業務で死んでいくニュースを見ると罪悪感を感じてつらい。私の命と安全を守ってくれる宅配が、肝心の労働者の搾取によって成り立っているというのは絶対に望んでいない」と話した。

 この日の昼、「宅配便ドライバーのみなさんを応援する市民の会」などは、ソウルの光化門広場で記者会見を開き、政府と宅配業者に対し過労死予防対策を講じるよう求めた。彼らは「新型コロナ拡散により荷物量が増え、宅配業者の収入も増加したが、宅配労働者の殺人的労働強度に対する補償は全くなかった」とし「宅配労働者の死が明白な『人災』であるのはこのためだ」と批判した。「宅配労働者健康異常申告センター」を開設した宅配連帯労働組合は、市民によってこの申告センターの存在を宅配労働者に対して伝えてもらうとともに、応援メッセージを送ってもらうキャンペーンをSNS上で開始したことを発表した。

パク・ユンギョン、カン・ジェグ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/966385.html韓国語原文入力:2020-10-19 19:13
訳D.K

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