新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行による各国の封鎖政策で、今年4月初めの世界の二酸化炭素(CO2)排出量が前年に比べて17%も減少した。大半の国で交通量が最高80%以上も減った結果だ。世界で上位10%の富裕層は、航空関連エネルギーの75%を使用しているという。彼らが移動を控えれば、2050年の炭素中立(ネットゼロ)に一歩近づけるという“希望”が見えてくる。実際、世界上位1%の富裕層の炭素排出量は、下位50%の貧困層が排出する量の2倍に達するという分析が出た。
国際救援開発機構の「オックスファム」と国際環境政策研究機関の「ストックホルム環境研究所」は、21日に発刊した報告書『炭素不平等に直面する』で、「世界で最も富裕な10%(約6億3千万人)が1990~2015年の25年間に累積炭素排出量の52%に責任があるものと分析された」とし、「特に最上位1%の富裕層は、炭素排出量の15%に責任があり、下位50%の貧困層が排出する7%の2倍を超えた」と明らかにした。同報告書は、気候変動危機など世界的な危機状況を協議する国連総会の開催に合わせて刊行された。
1991~2015年の25年間の累積炭素排出量は、1850~1989年の140年間の累積量とほぼ同じだ。同時期、世界のGDPも同様に2倍に増加したが、世界人口の半分は適正な生活水準のための最小費用(1日5.5ドル)より所得が低い。同報告書は「数十年間の所得不平等は深刻な炭素不平等につながり、世界が気候危機に瀕するようになった」と主張した。
世界人口の上位10%が25年間で世界の「1.5度炭素予算」(地球の気温上昇を1.5度以内に抑えるために、世界が排出できる二酸化炭素の残りの量)の3分の1(31%)を使用した。一方、下位50%は使用可能な炭素予算のうち、たった4%だけを使用した。同報告書は「明日すぐに他の人全員が炭素排出量を0に減らしても、上位10%の富裕層の炭素排出量だけでも数年内に炭素予算が枯渇する」と指摘した。
地球の温度の上昇幅を1.5度に制限するためには、2030年までに世界人口1人当たりの平均炭素排出量が1年に2.1トンでなければならないが、最上位1%の1人当たり炭素排出量は2030年の目標値より30倍高い。下位50%に比べると、さらに100倍高い。
炭素排出量の削減をどこから始めるべきかについて、報告書は「運送」に注目した。運送は世界の炭素排出量の4分の1を占めている。運送は需要の所得弾力性が1よりはるかに高い、最も不平等な消費項目(所得が100%増加すれば運送関連支出は100%以上増加)だ。
同報告書は「この20~30年間、新自由主義の経済思想とエリート政治が支配していた時期に、他人に犠牲を強いてでも一部の支配と豊かさを優先する政治的選択の結果、深刻な炭素不平等がもたらされた」とし「スポーツ実用車(SUV)や個人専用機、大型ヨットに対する炭素税や、ビジネスクラスと頻繁な飛行に賦課される追加負担金など、革新的な炭素価格を策定し、公共場所での広告執行の禁止や航空機燃料免税、会社車両に対する税金減免恩恵の中止などの政策を取り入れるべきだ」と主張した。