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[ニュース分析]捜査の正当性を確保した検察とマスコミの癒着…ハン検事長、今週召喚

登録:2020-07-20 08:30 修正:2020-07-20 11:48

裁判所、「証拠隠滅の深刻な水準」認める 
虚偽の携帯電話の紛失届、ノートパソコンのフォーマットなど 
「被疑者と関連者、広範囲に捜査を妨害」 
 
検察内部の「捜査の適正性をめぐる議論」に決着 
ユン検察総長と対立した捜査チームを後押し 
「長官指揮権」反発も説得力を失い 
対立を深めたユン総長の責任大きく 
 
出席要求に3回応じなかったハン検事長 
裁判所「検察幹部とのつながりが疑われる」と認める 
拘束期間20日内に、共謀事実を明らかにしなければならない

2020年1月10日、ハン・ドンフン最高検察庁反腐敗強力部長(当時)がチュ・ミエ法務部長官に補職変更に関する報告をするため、政府果川庁舎の法務部庁舎に入る様子/聯合ニュース

 検察とマスコミの癒着疑惑事件の核心の被疑者であるイ・ドンジェ前チャンネルA記者が17日に拘束された。これは裁判所が捜査の正当性を認めたことを意味する。(裁判所の決定が)イ前記者の拘束を捜査の適正性に対する“客観的な判断”だと言える理由は、この事件の捜査をめぐり検察の首脳部間の判断が鮮明に分かれたためだ。ユン・ソクヨル検察総長は「側近庇護」の批判にもかかわらず、捜査に積極的に介入し、これは結局15年ぶりの法務部長官の捜査指揮権発動を招いた。イ前記者の拘束で捜査の正当性をめぐる内部論議に決着がついただけに、捜査チームはイ前記者とハン・ドンフン検事長が共謀したかどうかの捜査に本格的に着手するものとみられる。

■裁判所「被疑者と関連者、広範囲な証拠隠滅で捜査を妨害」

 今月15日、ソウル中央地検刑事1部(チョン・ジヌン部長)がイ前記者の拘束令状を請求した際、検察の内外では少なからず懸念の声が上がった。今回の事件の被害者に当たるバリューインベスト・コリアのイ・チョル元代表が要請した検察捜査審議委員会の審議が24日に確定した状況で、「捜査審議委を前に拘束令状の請求を強行する理由は何か」という指摘もあった。もし令状が棄却されれば、非拘束捜査の必要性ではなく、捜査の正当性の問題に広がりかねない状況だった。1カ月前に拘束令状を請求しようとして、最高検察庁の指揮過程でブレーキがかかったことがあるため、「証拠隠滅を防ぐ緊急性が不十分」という理由で令状が棄却される可能性もあった。しかし、令状審査を担当したキム・ドンヒョン・ソウル中央地裁令状担当判事は「被疑者と関連者らは広範囲に証拠を隠滅して捜査を妨害しており、今後も継続的に証拠を隠滅する可能性が高い」と判断した。イ前記者の証拠隠滅が深刻な水準だったことを認めたのだ。

 5月21日にチャンネルAが発表した独自の真相調査報告書を見ると、イ前記者は「文化放送(MBC)」が関連疑惑を報道した翌日の4月1日に「(会社に)虚偽の携帯電話の紛失届け」を出した後、4月3日の夕方には「紛失した携帯電話を探す」と言って、会社の他の部署の記者と一緒に居酒屋を訪ねた。4月6日には「携帯電話を紛失したのではなく、家族が首都圏のどこかの第3者に預けた。検察の強制捜査が進めば過去の取材記録が露出するのを恐れ、そのまま失ったということにした」とし、虚偽報告の事実を認めたという。携帯電話の“隠匿”を”紛失”に偽装するために動線まで演出したのだ。イ前記者は4月7日、会社にその携帯電話を提出したが、真相調査委がフォレンジックを依頼した結果、事件関連の痕跡は見つからなかった。イ前記者は取材用ノート型パソコンも、疑惑が報道された後すぐにフォーマットし、「(会社の電算チームから)ウィンドウズをアップグレードするよう連絡があった」と説明したが、電算チーム関係者は「イ前記者のノート型パソコンはウィンドウズ10だったため、アップグレードの必要はなかった。パソコンの速度が遅くなったからフォーマットしてほしいと要請されてフォーマットした」と真相調査委に陳述した。イ前記者の積極的な行動から、非拘束状態ではさらなる証拠隠滅の可能性が高いと裁判所が判断したわけだ。

■ユン総長の判断ミス? 「内部対立を助長した責任は大きい」

 「被疑者が検察幹部と連結して被害者を脅迫しようとしたと疑われるだけの資料がある」という裁判所の拘束令状発行の理由は、今回の捜査の正当性と必要性を“検察外部で”確認したという点で重要な意味を持つ。捜査チームは先月初め、イ前記者の拘束令状を請求するため最高検に承認を要請したが、捜査記録を検討したパク・ヨンジン刑事1課長と所属研究官5人は満場一致で「強要未遂容疑を適用するのは難しい」という結論を下した。「これ以上捜査してはならない」という最高検刑事1課の検討意見は、ユン総長の捜査介入の重要な名分となった。ユン総長は、ハン検事長が被疑者に転じた後、「最高検部長会議」に捜査指揮を一任したが、最高検部長会議の意見とは裏腹に専門捜査諮問団の招集を決めた。「捜査中の捜査諮問団の招集は不適切だ」というソウル中央地検の意見も黙殺された。同じ捜査記録を共有したが、捜査の正当性をめぐってユン総長とソウル中央地検捜査チームが異なる判断で真っ向から対立した中、裁判所の判断が捜査チームを後押ししたわけだ。

 チュ・ミエ法務部長官の指揮権発動が「検察組職に対する政治的圧力」だという反発論理も説得力を失った。「総長は介入せず、独立的な捜査を保障せよ」という指示により、捜査チームがイ前記者の拘束令状を請求し、裁判所がこれを受け入れたためだ。検察総長の“判断ミス”にとどまらず、内部対立を助長した責任が明確になったという指摘もある。「側近庇護」という批判を押し切ってまでユン総長が無理に捜査に介入したことで、検察の一角では「捜査チームの捜査にも問題がある」という両非論もあった。検察内部の掲示板に不公正捜査を批判する書き込みが掲載され、今月7日には捜査チーム長のチョン・ジヌン・ソウル中央地検刑事1部長が「捜査を最後まで見守ってほしい」と訴え、検察内部に向かって釈明せざるを得ない状況にまで至った。検察のある幹部検事は「ユン総長は検察とマスコミの癒着捜査の過程で長官の指揮権発動を招き、内部的には対立を増幅させた。(今回のことで)検察は大きな傷を負った」と述べた。

■捜査チーム、近くハン検事長を事情聴取

 イ前記者の弁護人は拘束令状発行後、「令状にハン・ドンフン検事長との共謀関係が明示されていないのに、令状裁判所が『検察幹部と連結して脅迫したと疑われる資料』があると公表したのは、検察が請求した範囲内で判断すべき『不告不理の原則』に照らして問題がある」と反発した。イ前記者の拘束令状には、「強要未遂」がイ前記者の単独犯行と書かれていたという。しかし、捜査記録だけでも共謀関係を確認する必要性は十分だというのが裁判所の判断だ。捜査チームはこれからイ前記者の「脅迫性取材」が検事長と共謀した結果なのかを明らかにしなければならない。イ前記者を起訴するまでの最長20日以内に、ハン検事長との共謀の有無を確認するには、最大限スピードを上げなければならない。しかし、ハン検事長は「チャンネルAの取材に関与した事実がないだけでなく、いかなる形であれ、記者とシンラジェン捜査チームを結びつけたり、捜査に関与した事実は全くない」と否認しており、捜査チームの出席要求にも応じなかったという。捜査チームは検察捜査審議委員会が開かれる今月24日の前に、ハン検事長を召喚して取り調べる計画だ。

キム・テギュ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/954290.html韓国語原文入力:2020-07-2002:43
訳H.J

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