仁川国際空港公社の保安検査要員の直接雇用による正規職化をめぐる若者たちの「怒り」に注目した報道が続く中、一部からは、若者たちの怒りが対立を煽ることに消費されているという指摘が出ている。メディアが非正規労働者と就活生の対立構図にばかり焦点を当てるため、肝心の非正規採用、低賃金構造などの若者労働の本質的な問題が埋もれてしまっているというのだ。
ツイッターなどのSNSでは25日、「仁川国際空港公社問題」をめぐり、一部の若者の声が若者世代を代表するものとして過剰に扱われているという若者の指摘が相次いだ。あるユーザーは「公企業の就業準備には多くの時間と費用を要する。公企業の就活生は現若者世代を代表し得ない」と指摘した。今回の事態に対する批判の世論は、公企業への就職に資源を投入することができる「少数」の声に限定されている可能性があるというのだ。
この日、ハンギョレのインタビューに応じた就活生たちは「マスコミは若者の声を聞くふりをして、むしろ若者世代を刺激的に消費している」と口をそろえた。1年6カ月ほど公企業への就職を準備していたIさん(31)は、「直ちに若者の生活に大きな影響を与え得る最低賃金の引き上げなどには沈黙しながら、今回の事案に対する一部の若者の怒りにばかり注目するのは偏狭だ」と語った。
今回の事態を、不安定な非正規労働者の待遇や就職難などの若者労働の問題について、より現実的に考える契機にすべきとの指摘もある。大学生のキム・ミンソクさん(22)は「今回の事態の核心は、国家安保にも直結する保安検査要員すら非正規だったほど、雇用不安定が韓国社会に蔓延しているということ。このような問題とともに、若者が雇用に敏感にならざるを得ない理由などについて検証すべき」と強調した。大学卒業後、アルバイトをしているLさん(32)も「メディアは怒りを煽るのではなく、職務や年俸などに関する誤解を解き、人件費の分配などをどう解決するかについて光を当てるべき」と語った。
「今回の決定で仁川空港に直接雇用された20~30代の非正規労働者も若者だ」と強調する声もある。一部の若者たちの剥奪感に重点が置かれたため、非正規労働者たちの苦悩は相対的に隠されてしまっているというのだ。24日には、仁川国際空港の保安検査要員だと名乗る人物が非難の不当性を訴える大統領府国民請願文がアップされた。この人物は「第2旅客ターミナルができる前には1日14時間勤務していた。乗客からのセクハラや暴力に苛まれることもある」と述べ、劣悪だった非正規労働者の現実を察してくれるよう訴えた。
「若者の民意」について言及し、早急な対策を打ち出した政界も、真剣な苦悩もなしに世論に便乗していると指摘されている。未来統合党のハ・テギョン議員は、「若者の就職の公正性を損なうため、ロト(宝くじ)就職防止法を発議する」と明らかにしている。若者ユニオンは「非正規労働者が耐えてきた不安定性の解消を『ロト』と称する政治家と、これに同調する社会に幻滅さえ感じる。韓国社会に必要なのは『ロト』などと口にして『若者』と『公正』を売りにすることではなく、雇用の安定化に向けた繊細さと不断の努力」と述べた。