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サムスン電子のイ・ジェヨン副会長の世論戦…市民に起訴の可否を尋ねる

登録:2020-06-04 07:05 修正:2020-06-04 08:30
検察に「捜査審議委員会」召集を申請 
各界250人で構成された委員会 
違法継承疑惑の起訴の可否を判断 
法曹界「状況が不利になり、勝負の一手に」
サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が5月6日午後、ソウル瑞草区のソウル高裁で開かれた国政壟断破棄差し戻し審の3回目の公判に出席している=カン・チャングァン先任記者//ハンギョレ新聞社

 サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が2日、自身の経営権違法継承疑惑を捜査中のソウル中央地検に、最高検察庁傘下の「検察捜査審議委員会」(委員長ヤン・チャンス元最高裁判事)の召集申請書を提出した。検察が起訴の可否を決める前に、市民で構成された捜査審議委員会に起訴の可否に対する判断を仰ごうということだ。イ副会長は捜査審議委員会に「起訴・不起訴処分」のみならず「捜査継続の可否」まで判断するよう要請したことが確認された。

 先月26日と29日に被疑者の身分でソウル中央地検に出席して調査を受けたイ副会長は、サムスン物産と第一毛織の合併過程で起きた各種の違法状況について「未来戦略室などの役職員が勝手にやったこと」との趣旨で返答したことが分かった。しかし、イ副会長に直接報告された未来戦略室作成の文書を多数確保した検察は、容疑立証に自信を見せている。

■なぜ捜査審議委員会?…「世論の同情で勝負の一手を打とうとしている」

 財閥のオーナーが捜査審議委員会の召集を申請した前例がないだけに、法曹界ではイ副会長の狙いについて様々な観測が出ている。まず、イ副会長の選択を「世論戦」と見ることには異論がない。検察庁に二度呼ばれ調査を受け、捜査チームの「武器」を直接確認したイ副会長側が、捜査状況が不利になっていることを知り、「世論裁判」形式で反転を試みているということだ。イ副会長はサムスン遵法監視委員会の勧告にしたがい、先月6日、サムスン経営権継承問題と無労組経営方針などについて国民に向けた謝罪を行った。また、不当解雇に抗議して実に約350日間、鉄塔で高空籠城(高所での座り込み)を行ったキム・ヨンヒさんと先月29日に謝罪と補償で合意するなど、イメージ改善のために努力した。一方では「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)事態」にともなう経済危機の局面でサムスンの役割が浮上する時であるため、世論はイ副会長に不利ではない状況だ。そのような状況での捜査審議委員会の召集申請は、検察の矛先を避けるための「最後の反撃」であるわけだ。

 2018年のムン・ムイル検察総長時代に新設された捜査審議委員会は、弁護士や教授、法曹担当記者、市民団体活動家など、各界各層の市民250人により構成されている。強硬な捜査チームに比べて相対的に世論の影響を強く受ける構造だ。イ副会長側の弁護人は今回の捜査審議委員会の召集申請について「捜査が進行している容疑の事実についてイ副会長自身が納得できない立場であるため、一般国民が参加して専門家が加わる第三の委員会で決めてほしいとの趣旨」と説明した。

 「遅延作戦」の効果もある。イ副会長が召集申請書を提出した翌日の3日は、検察総長とソウル中央地検長の週例報告の日だった。この席でイ副会長の拘束令状請求と起訴の可否が決まる可能性が高かった。起訴が確実だったイ副会長としては「差し迫った火」は消したわけだ。

 イ副会長の申請で捜査審議委員会がただちに召集されるのではない。ソウル中央地検の検察市民委員会を中心に設けられる「付議審議委員会」が、まずイ副会長の要請を受け入れるかどうかを審査しなければならない。15人の委員の過半数の賛成で付議が決定されれば、最高検察庁の捜査審議委員会の審議が始まる。捜査審議委員会は、委員250人の中から無作為の推薦で15人の「懸案委員会」を設け、イ副会長関連の捜査継続の可否と起訴の可否を検討することになる。主任検事と申請者は懸案委員会に30ページの分量の意見書を提出し、直接出席して30分間発言でき、懸案委員会はこれを総合して出席委員の過半数の賛成により勧告案を決める。捜査審議委員会の決定は検察の処分を強制できないが、これまでの8回の捜査審議委員会の勧告は全て受け入れられた。

検察捜査審議委員会の主な審議の事例//ハンギョレ新聞社

■「企業合併・粉飾会計は捜査審議委員会に不適合」…起訴判断の場合は「ブーメラン」になることも

 問題は、企業間合併と会計詐欺(粉飾会計)という複雑な事案を扱うこの事件は、「30ページの意見書」と「30分の意見陳述」でその実体を把握するのは容易ではないという点だ。検察関係者は「サムスン事件自体が捜査審議委員会の対象として適切ではない。企業・経営権継承や粉飾会計など、複雑な技術的問題を短い期間で審議委員が見て判断するのは容易ではないだろう」と指摘した。

 拘束の分岐点に立ったイ副会長としては、時間も稼げて世論の助けも得られるカードかもしれないが、それだけに危険もある。ある企業訴訟専門弁護士は「捜査審議委員会が『捜査継続・起訴』を決定すれば、イ副会長に対する原則的な処理を注文してきた捜査チームがさらに力を得ることになる。イ副会長の「勝負の一手」が負けることにもなりうる」と指摘した。また、別の検察関係者は「身柄処理を決めた段階で申請したことを考えると、拘束だけは避けようとする意図だと思われる。イ副会長側があまりに窮地に追い込まれて申請したのかもしれない」と語った。

イム・ジェウ、キム・ジョンピル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/947786.html韓国語原文入力:2020-06-04 02:43
訳M.S

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