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「新事業に果敢に挑戦」イ副会長の発言は政府へのメッセージ?

登録:2020-05-08 08:23 修正:2020-05-08 09:15
国民向け談話に込められた本音とは 

「飛躍する新しいサムスン」作ると言い 
未来ビジョンと事業計画構想を発表 
新型コロナで経済非常事態に陥った政府に 
積極的な投資・雇用創出への意志を表明 

イ副会長と13回会った文大統領 
「思い切った挑戦を応援する」という激励に 
謝罪文を通じた回答という分析も
サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が今月6日午後、ソウル瑞草洞のサムスン社屋で経営権の継承と労働組合問題などと関連し、「国民向け謝罪文」を発表している=共同取材写真//ハンギョレ新聞社

 サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が今月6日に発表した国民向け謝罪文には、予想されたペーパーにもなかったという意味で、2つの“特別な”メッセージが込められていた。サムスン順法監視委員会が3月11日にサムスンとイ副会長に投げかけた注文リストにもなかったものだ。

 一つ目は「子供に会社の経営権を譲らない」と明らかにした内容だ。世論は「財閥初の4世継承放棄宣言」として受け止めた。

 二つ目は「さらに飛躍する新しいサムスンを夢見て、絶え間ない革新と技術力で最も競争力のある分野に集中しながら、新事業に果敢に挑戦したい」という発言だ。国民向け謝罪文に企業の未来ビジョンと事業計画の発表まで加えたわけだ。一般人や株主らに向けた発言だが、財界では政府と与党という「もう一つの宛先を念頭に置いたメッセージ」という分析もあった。

 イ副会長が実際に政府と与党をどれほど念頭に置いたかは確認されていないが、こうした分析が出る背景はある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で景気が冷え込み、3月だけで前月に比べ68万人(季節調整就業者基準)が職を失った。航空や精油、自動車など主力業種の大手企業も資金難を訴える。イ副会長の発言は、政府・与党のかゆいところに手が届く側面があるということだ。これに先立ち、サムスングループの代表企業であるサムスン電子は、先月29日の業績説明会(IR)で、従来の施設投資(年間ベースで約20兆ウォン)計画を変わらず維持すると発表した。実際、現政府発足後、サムスンと政府間の妙な調和も、このような分析を裏付ける情況証拠として取り上げられている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が任期中、イ副会長に初めて会ったのは2018年7月、インドのサムスン電子のノイダ・スマートフォン工場の竣工式だった。それ以降、二人が対面する機会が増えたのは2019年に入ってからだ。あいにく設備投資(国民勘定基準)が急激に減少し、政権序盤における経済成長の勢いが弱まった時期と重なる。今年2月13日、文大統領と主要財閥グループのトップとの会合まで含めると、イ副会長は文大統領に13回会った。朴槿恵(パク・クネ)前大統領は、任期中にイ副会長と3回の単独面会を含め、計8回会った。

 文大統領は2019年1月、大統領府で行われた企業関係者との対話で、サムスン工場への訪問を要請するイ副会長に「サムスンが大規模な投資をして工場を建てたり研究所を建てるとすればいつでも行く」と述べた。その後、文大統領は約束通り、昨年4月30日のサムスン電子京畿道華城事業所の「システム半導体ビジョン宣布式」と、11月10日のサムスンディスプレーの13兆ウォン新規投資発表の際に忠清南道牙山事業所を訪問し、激励と感謝の意を表した。牙山訪問の際、文大統領はサムスンの「思い切った挑戦を応援する」とも発言した。

 文大統領が裁判中の企業トップと頻繁に会っていることに対する一部の批判に対し、これまで大統領府とサムスンはあまり気にしていない様子だった。昨年4月、関連質問を受けた大統領府関係者は「文大統領はトップに会いに行ったわけではなく、システム半導体のリーディングカンパニーを訪れただけだ」とし、「経済活力向上のためにシステム半導体を育成しなければならないというのが専門家たちの意見」だと答えた。

 イ副会長の6日の謝罪文発表について、大統領府はもとより政権与党の主要関係者らは、これといった反応を示していない。市民団体や今回の総選挙に当選した新人政治家らが立場を示しただけだ。イ・ヨンウ国会議員当選者(京畿道高陽市丁)は同日、あるラジオ放送に出演し、「経営権委譲の権限は株主にあるのに、イ副会長が自分の権限ではない話をした」とし、「サムスンと関連して最も大きな問題は株主の権限と経営陣の権限を混同していることにある」と指摘した。

ク・ボングォン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/economy/economy_general/944100.html韓国語原文入力:2020-05-08 05:00
訳H.J

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