これまで韓国国民が北朝鮮訪問や南北交流協力事業の協議を目的に北朝鮮の人と接触するためには、韓国政府に申告し、承認を受ける手続きが必要だった。しかし、これからは申告だけで済む方向で「南北交流・協力に関する法律」(南北交流協力法)を改正すると統一部が26日に発表した。離散家族や「北朝鮮離脱住民」(脱北者)が北朝鮮の家族や親族と連絡・接触する場合や、渡航者が第三国で北朝鮮レストランを訪れたり、北朝鮮の人と偶然会った場合、学者・研究者が北朝鮮の人と研究目的の一回性の連絡・接触をした場合は、申告も必要ない方向で法改正が行われる。南北の人々の接触に関する法の重心が“統制”から“開放”へと移るということだ。
統一部はこうした内容などを盛り込んだ南北交流協力法改正案(以下「全部改正案」)に関する公聴会を27日午後2~5時、政府ソウル庁舎別館でオンライン生中継方式で行う。今回の改正は、法制定(1990年8月1日)30周年を機に「国際情勢と南北関係状況の変化」を考慮し、「南北交流協力の安全性・持続性を保障」し、「民間と自治体の交流協力の自律性を拡大」して、「南北交流協力をさらに促進」する方向で進められる。一部条項を見直すのではなく、法体系全般にわたって手を加えるという意味だ。
統一部当局者が明らかにした内容の中で最も目を引くのは、「北朝鮮住民接触」に関する政府の“統制権”(承認権)の削除だ。現行法は、統一部長官に「国家安全保障や秩序維持、公共福利を害する恐れ」などを理由に、北朝鮮住民との接触申告の「受理」(承認)を拒否(第9条の23項)するか、「条件をつけたり、3年以内の有効期間を定めて受理」(第9条の24項)できる権限を与えているが、これを削除する方針を示したのだ。
ただし、実際に訪朝したり南北交流協力事業を進めるためには、政府に申告し、統一部長官の承認を受ける必要がある。これと関連し、交流協力に関わってきた業界と非政府組織(NGO)からは「南北交流協力の安全性・持続性を保障するには、すでに政府の承認を受けた特定協力事業を進めるための訪朝と物資搬出も申告だけで済むよう改正する必要がある」という声があがっている。統一部が同日に発表した改正方向には、このような内容は盛り込まれていない。
統一部は、従来の「部分改正案」(第20代国会で自動廃棄され、20日に再び立法予告)は第21代国会の開院とともに早期に、今回の「全部改正案」は年内立法を目指す“2段階”でアプローチする方針だ。
部分改正案には開城(ケソン)工業団地・金剛山(クムガンサン)観光事業のような交流協力を制限・禁止する場合は国務会議(日本の閣議に当たる)の審議を義務付けることで政府の“恣意的行政”を排除し、交易・経済協力企業の被害に関して政府の支援を可能にする根拠条項が盛り込まれている。これは全部改正案にも含まれている。