本文に移動

メディアの「金正恩重篤」無責任報道…脱北政治家も混乱を煽った

登録:2020-05-03 21:12 修正:2020-05-04 07:47
金正恩報道大惨事の理由は 
CNN「重篤説を注視」報道後に波紋 
金正恩、20日ぶりに姿を現す 
匿名の北朝鮮消息筋を引用した報道に打撃 
 
米国も「不正確な報道」言及したが 
脱北政治家は「99%死亡」と主張 
保守メディアでは後継説を騒ぎたて 
「政治的な目的でフェイクニュースを生産」指摘
北朝鮮の金正恩国務委員長がメーデー(5・1節)の1日、順川リン酸肥料工場の竣工式に参加したと朝鮮中央テレビが2日報道した/聯合ニュース、朝鮮中央テレビ画面よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が1日、平安南道の順川リン酸肥料工場の竣工式に参加して健在を誇示したことにより、健康異常説や死亡説など彼の身辺と関連して乱舞したあらゆる憶測は一気に色あせた。

「金正恩委員長 重体説」報道の経過

 北朝鮮メディアは2日、写真や映像を通して金委員長が前日の行事に参加し、竣工テープを切り元気に歩いたり手をたたき、何かを周囲の人々に指示し余裕をもって手を振る姿を公開した。金委員長が何の異常もなく平常どおりに行動する姿が公開され、健康に大きな問題がない事実が立証された。さらに大統領府関係者は3日、記者団に対し、金正恩委員長が先月15日、金日成(キム・イルソン)主席の誕生日である太陽節行事に参加しなかった理由について、「金委員長の歩き方が変わったという理由などを挙げて手術をしたと推定できるという報道があったが、これは事実ではないと判断される」と述べた。 また「軽い施術も受けていないのか」という質問に「受けていない」と付け加えた。金委員長が再び姿を現した後も静まらない「手術説」「施術説」を一蹴したのだ。

 最近20日間に相次いで起こった金委員長の身辺をめぐる推測の報道とフェイクニュースの氾濫は、この日北朝鮮メディアの報道によりハプニングとして幕を下ろすことになったが、この間いわゆる「対北朝鮮消息筋」という匿名の情報部員の話を引用して報道された対北朝鮮情報の信頼性に、根本的な疑問を提起する契機になると見られる。

北朝鮮の金正恩国務委員長がメーデー(5・1節)だった1日、順川リン酸肥料工場の竣工式に参加したと、朝鮮中央テレビが2日報道した=聯合ニュース、朝鮮中央テレビ画面よりキャプチャー//ハンギョレ新聞社

 身辺異常説を初めて報道したメディアは、4月20日に北朝鮮消息筋を引用して「金委員長が香山(ヒャンサン)診療所で心血管施術を受け、香山特閣に留まっている」と伝えたオンラインメディアの「デイリーNK」だった。当時この報道には大きな反響はなかったが、その翌日に米国のCNNが「金委員長が手術後、病が重い状態という情報を米国政府が注目している」と報道して大きく注目された。韓国のマスコミのみならず、ロイター、ブルームバーグなどの外信が相次いで関連報道を出し、波紋が一気に広がった。

 韓国大統領府が自ら乗り出し、「北朝鮮内部に特異動向はない」として、金委員長の身辺異常説を否定し、トランプ大統領もCNNの報道を取り上げ「不正確な報道」と明らかにしたが、火を消すには十分でなかった。YouTubeなどオンラインを通じても、金委員長の身辺異常説に関連した各種の主張や推測があふれ、重体説に続き意識不明説、死亡説などが急速に拡散した。いくつかの保守メディアでは、金委員長の有故を仮定した後継構図まで掲げて、金委員長の身辺異常説を積極的に伝えた。

 この過程で、韓国国会の外交統一委員長であるユン・サンヒョン議員(無所属)は21日、いち早く記者会見を自ら要望し「心血管疾患施術を受けたようだ」と重体説をあおりたて、駐英北朝鮮大使館公使出身のテ・ヨンホ未来統合党国会議員当選者は「金委員長が自分で立つことも、まともに歩くこともできない状態であることは明らか」と加勢した。さらに、脱北者出身のチ・ソンホ未来韓国党当選者は、特別な根拠もなく「先週末に死亡したことは99%確実」と断言した。

 国内の保守系メディアと脱北者出身の高位関係者らが、金委員長の身辺異常説を提起したのは過去にも数回あったが、今回のように大統領府と政府が「特異な動向はない」と繰り返し明らかにしたにもかかわらず、未確認情報が様々なチャンネルを通じて膨らんだのは異例のことだ。 外国メディア、国内保守メディア、政治家、脱北者が「多チャンネル増幅器」の役割をしたのだ。北韓大学院大学のヤン・ムジン教授は「閉鎖的な北朝鮮内部情報は確認が難しいという点を悪用し、政治的目的で偽ニュースを生産し流通させたという疑惑を抱かざるを得ない」と述べた。

パク・ビョンス、イ・ジョンエ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/943474.html韓国語原文入力:2020-05-03 19:30
訳J.S

関連記事