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[ニュース分析]韓国政府、「一時的」条件付きで56年ぶりに戦闘部隊の紛争地投入を決定

登録:2020-01-22 06:20 修正:2020-01-22 14:56
ホルムズ派兵の意味とは? 
米主導の有志連合への参加を検討したが 
軍事緊張の高まりを受け、慎重論に転じる 
日本のように「自国船舶だけを護送」 
「独自の作戦遂行」にもかかわらず 
作戦範囲は今より3.5倍 
 
有事の際は有志連合への協力は避けられず 
武力紛争の渦に巻き込まれる恐れ
ホルムズ海峡へ派遣される清海部隊31陣王建艦//ハンギョレ新聞社

 韓国政府が21日、清海部隊の作戦範囲を拡大する形でホルムズ海峡派兵を決定したことで、ベトナム戦争以来初めて韓国戦闘部隊が紛争地域に投入される。韓国軍は現在、レバノンや南スーダンなど12カ国に派遣されているが、いずれも平和維持や再建、教育のための支援任務を担っている。2003年にイラクに派兵された際も、戦闘部隊はなかった。政府の今回の決定が“危険な選択”であることを端的に示している。

 政府の選択は同盟国の米国の要求と主要貿易国のイランとの関係を考慮した苦肉の策と言える。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が14日の年頭記者会見で、韓米同盟とイランとの関係を総合的に考慮して「現実的な案」を模索すると言及したことを想起させる。米国が主導するホルムズ護衛有志連合の「国際海洋安保構想」(IMSC)には参加しないことでイランの反発を抑える一方、清海部隊の作戦範囲をホルムズ海峡の内側まで拡大することで米国の要求を受け入れたかたちだ。

 米国は昨年夏から「ホルムズ海峡の安全のための国際的な連帯」を強調し、韓国の派兵を要求してきた。14日に米サンフランシスコで開かれた韓米外交長官会談でも、マイク・ポンペオ米国務長官はカン・ギョンファ外交部長官に中東情勢を説明しながら、派兵を強く求めた。米国は公式表明こそないものの、韓国が国際海洋安保構想に参加することを望んでいるものと見られた。

清海部隊のホルムズ海峡派兵//ハンギョレ新聞社 

 政府は一時、国際海洋安保構想への参加までを含め、様々なシナリオを検討したという。ところが、米国が今月初め、イラン軍実力者のガーセム・ソレイマニ革命守備隊司令官を除去し、これに対抗してイランがイラクの米軍基地をミサイルで攻撃し、軍事的緊張が高まったことを受け、慎重論に転じた。軍関係者は「米国のアジア同盟国である日本が既にホルムズ海峡独自派兵を決めた状況で、政府もただ決定を先送りにするわけにはいかなかった」とし、「我々がイランの敵になるわけにはいかないという点で、今回の独自派兵決定は事実上予定されたもの」だと述べた。

 一部では、政府の今回の決定が一定部分米国の要求に応じたという点で、文在寅大統領の南北関係進展の構想と防衛費分担金交渉妥結に対する肯定的な影響を及ぼすだろうと見ている。ハリー・ハリス駐韓米大使は最近、文在寅政府の南北協力構想に制裁の物差しを突きつけ、米国との協議を強調した。国内的には、米国の要求による派兵の正当性と清海部隊の作戦範囲拡大に対する国会の批准同意をめぐり、議論が予想される。

 政府の今回の決定で、清海部隊の作戦範囲は、アデン湾一帯からオマーン湾とアラビア湾(ペルシア湾)一帯まで拡大した。作戦範囲が今より3.5倍に増えたわけだ。軍はこのため、昨年7月以降、ホルムズ海峡に近いオマーンのマスカット港を清海部隊の主力の寄港地として運用しているという。作戦範囲が広すぎて同時多発的な状況が発生した時、対応力が落ちるという懸念の声もあがっている。

 清海部隊が独自に作戦を遂行すると言うが、米国が主導する有志連合との協力は避けられない。オマーン湾からアラビア湾に入るには、事実上イラン軍が統制しているホルムズ海峡を通らなければならないためだ。清海部隊所属の連絡将校派兵は、そのような協力を動員するためのつなぎ目と言える。軍関係者は「清海部隊の能力を超える状況が発生した場合、有志連合と協力する」と述べた。

 政府は、清海部隊がホルムズ海峡一帯で韓国軍の指揮の下、韓国船舶だけを護送すると説明した。敵対勢力からの攻撃の兆候など危険要素が確認された場合は、合同参謀本部が清海部隊を指揮するものと予想される。国防部関係者は「他の国もホルムズ海峡で自国の船舶だけを護送する」とし、「清海部隊は与えられた能力と制限事項の範囲内で任務を遂行する」と強調した。

 しかし、清海部隊がホルムズ海峡で攻撃を受けた場合、自衛権を行使せざるを得ず、武力紛争の渦に巻き込まれる恐れがある。清海部隊を乗せた王建艦隊(4400トン級)は先月、釜山(プサン)海軍作戦司令部を出発する際、魚雷や音波探知機など対潜兵器をさらに補強したという。軍関係者は「ホルムズ海峡で予想される諸状況を反映した対応指針をまとめた」と述べた。

 政府は、清海部隊の作戦範囲の拡大が「一時的な」ものだと強調したが、いつまでという期限は決めなかった。派兵期間に事実上制限を設けていないわけだ。派兵終了をめぐり、政府の主観的判断が介入する公算がそれだけ大きくなったといえる。米国とイランの軍事的緊張緩和など、情勢の変化が尺度になるものとみられる。

ユ・ガンムン先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/925318.html韓国語原文入力:2020-01-22 02:41
訳H.J

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