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比例制を突き崩すか、自由韓国党が崩れるか

登録:2020-01-05 20:21 修正:2020-01-06 08:14
連動型の批判事例として登場した衛星政党を 
そっくりそのまま“奇策”として使う韓国党
ファン・ギョアン自由韓国党代表(中央)が1月2日、国会で開かれた最高委員会議に入場している=キム・ギョンホ先任記者//ハンギョレ新聞社

奇策か妙手か

 4月15日の第21代国会議員選挙まで、残るは100日ばかり。地方区253議席に比例代表47議席のうち30議席にのみ連動率50%を適用する“準連動型比例代表制”が現実になった。政党間の心理戦はすでに始まっている。

過半数が「比例政党は失敗するだろう」

 最初のカードを差し出したのは自由韓国党だ。新しい局面作りを否定していた韓国党は、準連動型比例代表制が現実になるや、真っ先に「比例代表衛星政党創党」という奇策に打って出た。衛星政党は、韓国党が一貫して指摘してきた通り、連動型比例代表制を形骸化する手段として指摘されてきた。

 韓国党の衛星政党は、1月の創党を目標に一瀉千里に進んでいる。1月2日、衛星政党の名前を「比例自由韓国党」と決め、本格的な創党作業に入った。韓国党は、旧正月連休前に衛星政党の創党作業を終える計画だ。

 衛星政党が現実化し、4+1協議体(共に民主党・正しい未来党・正義党・民主平和党+代案新党)を主導した政党の批判は鋭さを増している。特に、共に民主党と正義党は「韓国党の比例衛星政党は、潔くない投票洗浄行為だということを肝に銘じよ」(パク・グァンオン共に民主党最高委員)や、「国民の冷厳な評価の代わりに制度的奇策で巨大二党体制で享受してきた既得権を今後も維持しようとする発想」(シム・サンジョン正義党代表)などの批判を吐き出した。彼らが強力な批判を継続する理由は明瞭だ。韓国党の衛星政党の威力を計るのが難しいためだ。

 まず、民心の風向計から確認してみれば、世論は概して衛星政党に否定的だ。韓国日報が韓国リサーチに依頼して昨年12月29~30日に全国の満19歳以上の成人男女1千人に実施した世論調査結果を見れば、全回答者の10人に6人が「議席数を増やすための奇策」と答えた(信頼水準95%で標本誤差±3.1ポイント)。同じ期間に実施されたニューシスのリアルメーター世論調査でも、比例政党の創党に反対する意見が53.9%で、支持する意見(27.6%)を2倍程度上回った(全国満19歳以上の成人男女1011人調査。信頼水準95%で標本誤差±3.1ポイント)。同じ調査で比例政党成功の展望に「失敗するだろう」と答えた回答者は53.7%で、成功するだろう(27.8%)を大きく上回った。

 とはいえ、選挙で世論より重要なのは実際に勝てる“一票”だ。韓国党がじわじわと衛星政党を準備しているのもそのためだ。朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾以後、保守陣営の高い支持は崩れたが、残った支持者の結束は依然として堅固だ。これは数値にもあらわれている。先日の韓国日報の調査によれば、韓国党支持者のうち70%が韓国党の衛星政党創党を「避けられない決定として理解するに値する」と答えた。今回の総選挙で「選挙区も比例代表も韓国党を選ぶ」という意見に手をあげた数字は85.5%に達した。これを土台に、現在韓国党が多くの世論調査で20~30%の支持(政党支持率基準)を得ていることを考慮すれば、準連動型比例代表制で配分される議席数のうち、二桁の議席占有が可能だということはありえる話だ。換言すれば、比例47議席のうち準連動型が適用される30議席の相当部分を持っていくことができるという話だ。実際、キム・ジェウォン韓国党政策委議長が、民主党の内部文書だとしてマスコミに公開したシナリオどおりならば、韓国党の衛星政党は、民主党が衛星政党を作らない場合に、全体比例議議席数47議席のうち30議席を得ることになる(この文書では、汎保守陣営が過半を超えるという予測値を出した)。朝鮮日報も4月総選挙の変数として「衛星政党」を挙げて、韓国党の衛星政党が25~30議席を占めると見通した(1月1日付8面)。

民主党は10議席の損害、正義党の交渉団体は不透明

 世論調査を基準として韓国党の衛星政党が持っていっただけ損害をこうむるのは共に民主党と正義党だ。民主党内で公式に衛星政党に関する議論はなされていない。だが、党内の少数グループでは、最悪の場合10議席以上損をする現実を憂慮している。正義党が被る打撃はさらに大きい。院内交渉団体になれるか否かも不透明だ。自由韓国党の衛星政党が登場しただけでも、正義党の議席は10議席未満に終わりかねない(朝鮮日報分析)。

 数字が表わすバラ色の展望にもかかわらず、韓国党が4月の総選挙でその程度の戦利品を手にするか、断言することは難しい。政治的算法で投票者の心をそっくり動かすことはできない。前回の20代総選挙でセヌリ党は、公認波動で総選挙惨敗を経験した。政党が重要な局面でどのような選択をするかにより、有権者はあっという間に背を向けることがありうる。韓国党が総選挙の新しい規則として導入された準連動型比例代表制を拒否した名分は、アルバニアの事例のような選挙制度の歪曲であったし、その根拠が衛星政党だった。韓国党のユ・ミンボン議員が昨年12月25日に公開した資料によれば、アルバニアとレソトでは、二大政党がそれぞれ衛星政党を設立し、比例議席の大部分を独占し小数政党が登場できる基盤自体を突き崩した。ベネズエラも政権与党が比例候補を出して、選挙区には衛星政党を作り出馬させる戦略を使った。結局3つの国で連動型比例代表制は廃止された。韓国党のクォン・ソンドン議員は、フィリバスターを通じて「(衛星政党を作り)連動型比例代表制がどれほど後進的な制度なのか、これがどれほどの改悪なのかを証明する」と話した。言い換えれば、韓国党は制度の欠点を利用して、選挙制度を壊しアルバニアのような状況を演出した後に“4+1”の選択が誤りだったことを立証するという戦略をたてたわけだ。悪い選択ということを立証するために、悪い行動をするという韓国党の論理に有権者がどのような選択をするかは未知数だ。

「持てる能力に合う政治体制を持つ」

 韓国党が言及しようとしない事例がある。ニュージーランドだ。ニュージーランドは、国民党と労働党という2つの巨大政党があるが、衛星政党を作らずに選挙を行った。連動型比例代表制は、ニュージーランドで成功裏に定着したと評価されている。

 キム・ヒョンチョル聖公会大学研究教授は「ニュージーランドの選挙制度改革過程と成功要因-韓国への示唆点」(「市民と世界」2016年上半期号)論文で「選挙制度改革に対する国民の強い要求」に注目した。ニュージーランドには、有権者に選挙制度改革の目的と方向を単純明瞭に知らせて、その必要性と正当性を提起した市民社会とマスコミの役割があったことを主要な成功要因に挙げた。

 政治学者のE.E. シャットシュナイダー氏は著書『民主主義の政治的基礎』で「(国民が)持てる能力に合う政治体制を持つ」と述べた。韓国社会はどこへ向かうのだろうか。アルバニアだろうか、ニュージーランドだろうか。

ハ・オヨン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/923189.html韓国語原文入力:2020-01-05 18:51
訳J.S

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