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「惜敗率の損益計算」で選挙改革を揺さぶる民主党

登録:2019-12-19 09:50 修正:2019-12-19 14:50
野党4党「連動率キャップ」を受け入れ、 
「惜敗率制維持」妥協案を出したが 
民主党「考え直してほしい」と再びボールを渡し 
4月の選挙法合意の際には賛成しておきながら 
首都圏の反発で最終合意を覆すとの批判
共に民主党のイ・ヘチャン代表(右)とイ・イニョン院内代表が18日、国会で開かれた議員総会で話し合っている//ハンギョレ新聞社

 「惜敗率制が本当の“隠れた爆弾”だ。惜敗率制のために全部崩れることもある」

 「4+1(共に民主党・正しい未来党・正義党・民主平和党+代案新党)協議体」の選挙制再編議論が本格化していた今月初め、交渉に長く関わってきた民主党議員は、「惜敗率制」が衝突の雷管になるだろうという予測を示した。当時はファストトラック原案に含められた225(選挙区)-75(比例)議席比と連動率50%をどのように再調整するかが関心事であり、注目する人は多くなかった。それから半月ほど経った今、彼の言葉は現実となった。「4+1協議体」は18日、主要争点の一つである「連動制適用議席上限制」(連動率キャップ)までは合意しておきながら、「惜敗率制」をめぐる意見の相違で最終合意に至ることができなかった。民主党はこの日の議員総会で「惜敗率制は考え直してほしい」とし、ボールを再び少数野党に渡した。民主党はなぜ「惜敗率制不可」を固守するのか。

■民主党、ファストトラック合意の時は惜敗率制に賛成

 惜敗率制は、選挙区で惜しくも落選した候補者を「当選者に比べた得票率」の高い順に地域から1人ずつ救済し、比例代表で当選させる制度だ。民主党は4月、自由韓国党を除く与野党4党の交渉の際、ファストトラックに上げる選挙法案に合意し、惜敗率制による当選者輩出を地域別に2人まで認めることに同意している。しかし、民主党は選挙法交渉再開後、比例代表を「75議席→50議席」に調整する過程で「連動率キャップ」と「惜敗率制の削除」を追加条件として持ち出した。

 民主党は惜敗率制に対し「少数政党の重鎮の再選に悪用されかねない」という論理を提示したが、民主党内部でも「選挙法交渉全体を揺るがすほど重要な理由とは見られない」という声が出ている。悪用される懸念は存在するが、惜敗率制は地域構図の緩和に寄与するという長所も確かにあるからだ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も新政治民主連合代表時代の2015年2月、「現行の選挙制度はまともに民意を反映できない。たとえば、先の総選挙で野党は釜山で40%を得票したが、議席は全体18席のうちたった2席だった。わが党はその解決策として、地域別比例代表制と惜敗率制の導入を主張し続けてきた」と明らかにしている。

 民主党のある新人議員も「党がすでに4月のファストトラック原案合意の時に惜敗率制に同意したことがあるのに、今さら『少数政党の重鎮の再選』が決死反対の理由になりうるのか疑問」だと話した。

■正義党が出馬する競合地区の議員らの反対が核心

 18日、民主党議員総会では「惜敗率制は絶対にだめだ」という意見を出した議員が少なくなかったという。「すでに大邱(テグ)・慶尚北道と釜山・慶尚南道でも民主党出身の当選者が多く輩出されているので、あえて制度を導入する必要はない」という主張も出ている。だが、惜敗率制に反対する民主党議員の顔ぶれを見ると、理由は別のところにあるようだ。

 この日の議員総会で、惜敗率制の削除を求める議員の大半は、ソウルと首都圏の選挙区の議員だった。先の総選挙で韓国党候補とわずか数百票の差で当選した議員もいた。彼らは「惜敗率当選」を狙った正義党など群小政党の候補が得票率を高めようと総力戦を展開した場合、自分たちの当選が難しくなるという危機意識を持っている。ただでさえ自由韓国党と薄氷を踏む選挙区で、正義党が候補を出し5%の得票率を勝ち取れば、当選が難しいという不満だ。過去、総選挙の度に民主党と進歩政党の間で繰り広げられた長年の論争が、今回は惜敗率制を通じて再燃したということだ。4月の選挙法の合意の時は問題視しなかったが、実際に総選挙が近づいて法案処理が迫ると、選挙制改革という大義よりも個別議員らの利害関係がより強い要求として溢れ出たという側面もある。

 しかし、議員らのこのような反発も説得力に欠けるという指摘が多い。過去にも首都圏は常に接戦地区が多く、民主党が第1党になった第20代総選挙でも、当時国民の党が「第3政党」として首都圏のほとんどの地域で少なくとも10%以上の得票率を勝ち取った。この日の民主党議員総会でも、「惜敗率のために正義党が一生懸命駆け回り我々の選挙が厳しくなるというのは、あまりにも行き過ぎた懸念だ」と指摘されたという。「ゲームのルールのために勝敗が決まるのではなく、政権与党として選挙まで国民にどのような姿を見せるかによって勝敗が決まる」という趣旨だった。

■正しい未来党の主張はなぜ?

 「4+1協議体」のなかで惜敗率をめぐる衝突が生じることになったのは、正しい未来党の利害関係も作用した。正義党は民主党が15日に惜敗率制の代わりに提示した「二重登録制」を受け入れたが、その後、正しい未来党の強力な要求で惜敗率制の導入の条項は生き残った。

 正しい未来党が「惜敗率制維持」を主張することをめぐり、党の内外ではソン・ハッキュ代表が「惜敗率制」を通じて党に残っている党権派(党の権力を握っている系派)9人の議員を気に掛けなければならないという負債意識が作用したのではないかという分析も出ている。現在、党権派議員らの選挙区は、キム・ソンシク(ソウル)、イ・チャンヨル、イム・ジェフン(京畿)、キム・グァニョン(全羅道)などで、地域が均等に分布されている。ソン代表の立場としては、二重登録制で彼らをはっきりと指定して選挙区・比例代表に同時登録するのは負担があるため、相対的に認知度の高い現役議員を「惜敗率制」で救済しようとしているのではないかということだ。

ソ・ヨンジ、ファン・クムビ、キム・ウォンチョル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/assembly/921363.html韓国語原文入力:2019-12-19 08:14
訳C.M