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セウォル号の救助ヘリ、道知事を乗せるために現場に遅れて到着

登録:2019-11-27 08:48 修正:2019-11-27 11:26
生存者の代わりに指揮部をヘリに乗せ、「救助放棄」波紋 
現場に向かっていた救助ヘリ、道知事らを乗せるために遅延 
2014年に検察が職権乱用と判断したが、不起訴 
特捜団、当時の判断が適切だったか調べる方針
2014年4月16日、レスキューバスケットを活用して救助活動をする海洋警察ヘリの様子=西海地方海洋警察庁提供//ハンギョレ新聞社

 海洋警察は2014年4月16日のセウォル号惨事当日、現場で救助された生存者をヘリコプターではなく船で移送した。生存者がヘリで搬送される機会は3回もあったが、ヘリは生存者ではなくキム・スヒョン西海海洋警察庁長とキム・ソクキュン海洋警察庁長などを乗せて離れて、生存者は結局死亡した。社会的惨事特別調査委員会は「救助放棄」の責任を問い、キム・ソクキュン海洋警察庁長など4人の海洋警察指揮部を業務上過失致死容疑で告訴・告発したが、ハンギョレの取材の結果、海洋警察の要請を受けて救助隊員を乗せた後、セウォル号の救助現場に出動した消防ヘリも、救助活動ではない道知事・副知事の移動などに使われたものと確認された。

■タクシーのように利用した救助ヘリ

 26日、ハンギョレは2014年のセウォル号惨事の現場に出動した消防ヘリのパイロット6人の供述調書を確保した。彼らは2014年6月、海上警察の救助放棄と事故現場への出動が遅れた点などに対する参考人調査を受けた。

 供述調書の内容を総合すると、セウォル号惨事の当日、光州(クァンジュ)消防本部のヘリは119状況室から午前9時36分にセウォル号の現場に出動せよという指示を受けた。ヘリが救助隊員2人を乗せて午前9時43分に離陸し、孟骨(メンゴル)水道に向かっていたところ、午前10時6分に「全羅南道消防本部で要請が来たので、全南道庁を経由せよ」との指示を受けた。全羅南道庁の前には全羅南道副知事と全羅南道消防本部長が待っており、ヘリは彼らを乗せて現場に移動した。到着時間は午前10時35分だった。現場に到着したヘリは、全羅南道消防本部長の指示で10分間セウォル号の現場を調べられるよう周辺を旋回し、その後、本部長の指示に従って彭木(ペンモク)港に着陸した。救助目的で出動したヘリが救助に投入されなかったわけだ。ヘリに乗っていた救助隊員も現場に投入されなかった。以下は、光州消防本部のヘリ機長の供述調書の一部。

問:全南消防本部長が事故現場を調べる必要があったのですか。

答:現状把握を目的にそうしたようですが、必要性の有無は私が判断できる部分ではないと思います。

(中略)

問:全南消防本部長は彭木港に到着してから何をしましたか。

答:私たちに待機しろという指示だけをして、全南消防本部のテントの方に行ってしまい、何をしたのかわかりません。

問:消防航空隊の任務に優先順位はありますか。

答:はい。我々消防本部は人命救助任務を最優先としています。

問:人命救助目的で出動している救助ヘリを消防本部長が自分の移動のために全羅南道庁を経由させ、時間を遅らせたのは正当でしょうか。

答:私が判断する問題ではないと思います。大きく見ると、消防本部長が事故現場に早く到着して指揮を取ることで人命救助がより効率的になるからです。

 全羅南道消防本部のヘリもまた、救助目的で現場に出動したところ「パク・ジュニョン全羅南道知事(当時)を乗せて行け」という指示を受けた。全羅南道消防本部2号機は午前10時43分、「救援目的」で航空隊から離陸した。ヘリは飛行直前、「パク・ジュニョン全羅南道知事を乗せて行け」という指示を状況室から受ける。このヘリは、全南道庁に事故当日の午前10時53分に着陸する。そして、そこで24分間道知事を待った。このヘリのC機長は、検察に「私がヘリポートに着陸したにもかかわらず、全羅南道知事が出てきていなかった」と述べ、「『知事はなぜ出てこないんですか』と尋ねたところ、秘書室長が『今、道議会で議政質疑答弁をしています。まず事故現場に向かった全羅南道消防本部長から知事が現場に行かなければならないのか連絡が来るということにしていましたが、返事がありません』と言った」と供述した。機長は当時、そのまま出発すると言ったが、ちょうど道知事が到着したと検察に話した。

 パイロットらは道知事や副知事を乗せたことについて回答を避けた。「私の立場では何とも言えないと思う」(道知事を乗せたヘリのJ副機長)、「私が判断する問題ではないと思う」(全羅南道知事と消防本部長を乗せたL機長)と述べた。

 2014年の検察の捜査当時、最高検察庁はパク・ジュニョン道知事などが消防ヘリに乗って事故海域に行ったことに対し、職権乱用の容疑を適用できると判断したが、起訴は行われなかった。特調委は最近、関連記録をセウォル号特別捜査団(特捜団)に送った。特捜団は当時の判断が適切だったのか、再度調べる方針だ。

■ヘリのパイロットら、口をそろえて「海洋警察の救助は不適切だった」

 検察の供述で、消防ヘリのパイロットらは救助の経験から見て、海洋警察の救助は適切ではなかったと口をそろえて述べた。M操縦士は「海洋警察のヘリが当時セウォル号内に多数の乗客が船内で待機しているという事実を知っていたとすれば、救助方法が非常に間違っていたと思う」とし、「乗客が船体の外に出られるよう誘導措置を取るべきだ」と述べた。L操縦士も「船室内に多数の乗客が集まっている姿を目で確認できたはずだが、窓ガラスを割って乗客の脱出口を確保するのが先」とし、「割れた窓ガラスの間から救助ロープなどを設置するだけで、相当数の乗客が船外に抜け出せる状況になったはずだ」と供述した。C操縦士は「人々をレスキューバスケット(水難救助装備)に乗せて一人一人救助していては船内にいるたくさんの人々を救助する機会を逃してしまう」と語った。

 2014年当時、海洋警察のキム・ギョンイル123艇長を除いた救助責任者は刑事処罰を免れた。セウォル号惨事特別捜査団は、当時消防ヘリが道知事らを乗せて救助が遅れた過程と海洋警察の救助失敗などを捜査するものとみられる。

パク・ジュニョン、ファン・チュンファ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/918545.html韓国語原文入力:2019-11-26 15:24
訳C.M

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