#1.18歳のときにソウル平和市場で「シダ」(下働き)と呼ばれる見習工として働き始めたイ・ジョンギさん(51)は33年間、縫製労働者として一度も4大保険の保障を受けたことがない。5人未満の縫製工場に勤める彼は、週に90時間以上働いている。元請の横暴と物量の減少で工賃の単価が30年前より低下したためだ。1980年代後半には1万2千ウォンだったサファリジャンパーの単価は最近、8千ウォン台に値下がりした。4人家族の生計費を稼ぐためには、長時間労働は避けられない。イさんは「最低賃金の引き上げとか、週52時間制とかで、世の中は変わったというが、全泰壱(チョン・テイル)烈士が働いていた平和市場周辺の縫製労働者の暮らしは日増しに悪化している」と訴えた。
#2.今年初頭、職員数20人規模のある出版社を退社したKさん(32)は、前の職場で勤務した1年5カ月間、週末も休めなかった。会社は数冊のベストセラーを出して好調だったが、業務量が増えるにつれ、社員たちは残業と休日勤務が日常となった。しかし、Kさんは休日勤労手当てをきちんともらったことがない。通常、労使が団体協約などを通じ、公休日(国民の祝日、メーデーを除く)を有給休日に指定するが、Kさんが勤めていた会社は労組はもちろん、労使協議会もなかった。30人未満の事業所の場合、労使協議会の設置・運営が義務ではなかったからだ。その結果、土曜日のような「無給休日」は手当てを与えなくても済むため、頻繁に出勤を指示された。
全泰壱烈士49周忌を翌日に控えた12日、全国民主労働組合総連盟(民主労総)が常時労働者数30人未満の「小さな事業所」の労働権保障キャンペーンを宣言した。民主労総は来年の全泰壱烈士50周忌と創立25周年を迎え、年次有給休暇と延長勤労手当てなどの適用から除外された5人未満の事業所に労働基準法条項の拡大を要求することにした。まず、5人未満の事業所の従事者の不当解雇救済申請ができるよう、勤労基準法施行令の改正を推進する方針だ。
中小零細事業所の労働権保障問題を提起したのは民主労総だけではない。先月9日、ハン・サンギュン元民主労総委員長が発足した「勧誘する」(権利取り戻しユニオン)創立に続き、青年ユニオンも同じ月、零細事業所の不当な待遇申告センター「たまたま5人未満」を開設するなど、労働基準法の適用例外対象である5人未満の事業所の労働者たちの権益を保護するための活動が続いている。
青年ユニオンのキム・ヨンミン事務処長は「事業所の規模によって労働権の保障範囲が異なり、それが雇用の質の格差につながるという問題意識から、変化を図ったもの」と述べた。クァク・イギョン民主労総未組織戦略組織局長も「現政権に入って、民主労総の組合員数が100万人を超えており、300人以上の事業所の労組組織率が60%に達するが、30人未満の事業所の組織率は0.2%に過ぎない」としたうえで、「職場で不当な待遇を最も多く経験する小さな事業所の労働者たちにもっと近づかなければならないという反省から『小さな事業所キャンペーン』を開始する」と説明した。
今年3月の統計庁資料によると、韓国の5人未満の事業所の従事者は約580万人(2017年基準)に達する。全体賃金労働者の27%ほどが勤労基準法の「死角地帯」に置かれている状況だ。韓国労働研究院の「4人以下事業所の実態調査」報告書によると、2016年基準で5人未満事業所で勤務する賃金労働者の月平均賃金は138万ウォンで、全体労働者の平均257万ウォンの半分水準であり、このうち23.9%(全体は60.2%)だけが有給休暇を、超過勤労手当ては15.0%(全体47.3%)だけをもらっていることが調査で明らかになった。
イ・ビョンフン中央大学教授(社会学)は「これまで事業主の支払能力問題を理由に、法の保護を受けることができなかった零細事業場の労働者たちの処遇改善に向け、労働界が乗り出したのは歓迎すべきこと」だとしたうえで、「最終的には関連法の改正が必要だが、政府も行政的な指針を通じて5人未満の事業所に対する労働基準法の例外条項を大幅に減らすなどの努力が必要だ」と指摘した。