#1. 金属労組ポスコ社内下請け支会・ロールアンドロール分会労働安全部長の同僚は最近、片方の腕を失った。2人1組で行うべき作業を一人で任されて起きた出来事だ。鉄板の厚さを調節するために使用する5メートルのロールには腐食を防止するためにフィルムを付けておく。ロールを稼動する際、フィルムを取り除くためには、一人が回転体停止ボタンを押さなければならないが、人がいないため、回転体が回る状態で作業し、機械に腕が巻き込まれた。その同僚は結局、右腕を切断し、義手を使っている。
#2.
大宇造船海洋の下請け会社で働くパク・グァンスさん(43)の同僚二人は約1カ月の間に指を1本ずつ失った。一人は鉄板の上に載せておいた50キログラムほどの副資材に手が下敷きになり、他の1人は「電動パワー」と呼ばれる200キログラムほどの機械に手が押しつぶされた。
29日、正義党のキム・ジョンデ議員やヨ・ヨング議員、イ・ジョンミ議員と「危険の外注化禁止対策委」の主催でソウル汝矣島(ヨイド)国会議員会館で開かれた「重大災害の事業所労働者、国会証言大会」で出た証言だ。2018年12月、韓国西部発電忠清南道泰安(テアン)火力発電所で下請け労働者のキム・ヨンギュンさんが死亡してから、約1年が経ったが、産業現場で働く労働者たちは今日も命を落とし、怪我を負っている。
先月20日には現代重工業で労働者が作業していたところヘッドに体がはさまって死亡し、同月26日には大宇造船海洋で労働者が作業中に10トンのブロックの下敷きになって命を落とした。翌日の27日、韓火トータル大山(テサン)工場では労働者が屋根の修理作業中に墜落して死亡、28日には釜山オペラハウスの工事現場でクレーンが倒れ、クレーン運転技師が帰らぬ人となった。彼らは皆、下請け労働者だった。
証言大会に出席した労働者たちは、重大労災の原因として「変わらない危険の外注化」を挙げた。イ・テソン発電労組韓電産業開発本部事務長は、「下請け労働者は 『元請けの言うことは神様の言葉と同じだ』と言う。元請けに言われれば、下請け労働者は拒否できない構造だ」と話した。パクさんは「原価節減を掲げ、安全費用も不必要な費用とみなす元請け、すべての責任を下請けに転嫁する元請けがいる限り、労災は引き続き発生する」と語った。
「造船業重大産業災害国民参加特別調査委員会」に委員として参加したイム・サンヒョク緑色病院院長も、「造船業重労災死亡事故は下請け労働者に集中している」と述べた。イム院長の説明によると、2007年から2017年9月まで造船業で発生した業務上事故の死亡者324人のうち、79.3%の257人が下請け労働者だった。「故キム・ヨンギュンさん死亡事故真相究明と再発防止のための石炭火力発電所特別労働安全調査委員会」(キム・ヨンギュン特調委)に参加したチョン・ジュヒ特調委員も「発電所での重大災害死亡事故以降、安全教育の強化や設備にある危険要素の全数調査、安全装備の不備時の三振法措置、労災発生時の罰金賦課など、あらゆる対策を講じてきたが、危険は解決されなかった。結局、残るのは直接雇用の正社員化だけだ」と指摘した。
これに先立ち、キム・ヨンギュン特調委は8月19日、キム・ヨンギュンさんの死亡事故の根本原因が危険の外注化と元請けと下請け間の責任回避にあったと発表した。キム・ヨンギュン特調委は、整備・運営業務の民営化と外注化の撤回と産業安全保健法の改正・重大災害企業処罰法の制定などの22項目を、発電会社と政府・国会に勧告した。先月2日、政府は「キム・ヨンギュン特調委の改善事項を関係省庁間の緊密な協議を通じて反映する」と発表した。しかし、イ・テソン事務長は「特調委の勧告から2カ月が経ったが、現場で行われているものは何もない」とし、「単純に安全フェンスだけが強化され、照明がさらに明るくなっただけだ。それもキム・ヨンギュンさんを死に追いやった西部発電に限られたもので、残りの火力発電所14カ所は依然として同じ状態で運営されている」と話した。