チョ・グク法務部長官が14日辞任した。任命から35日めのことだ。これで長官候補者指名以来、政局を2カ月以上混沌の渦に陥れた「チョ・グク事態」は一段落した。検察改革の細部施行案の発表直後、“辞任”というカードを切ることで、追い出されるように退く形は避けたわけだ。しかし、辞任の主な理由は“民心”だった。最近の多くの調査で、大統領の国政遂行に対する支持率が下落傾向にあり、与野党の支持率の格差も急速に縮まってきたことから、チョ長官の辞任は世論の悪化によるやむを得ない選択とみられる。政府と大統領府が打ち出す政策が“チョ・グク・ブラックホール”に陥る状況で、再び改革の動力を確保するための苦肉の策としての側面もある。
■チョ長官「私の役割はここまで」
チョ長官が辞意を表明した時刻は午後2時だった。午前11時、政府果川(クァチョン)庁舎で特捜部の縮小や名称の変更をはじめ、検察改革案をブリーフィングしてから2時間後に「検察改革のための焚き付けの役割はここまでです」というタイトルの文を発表した。彼は「検察改革に向けて、文在寅(ムン・ジェイン)政府初の民情首席として、また法務部長官として、この2年半全力疾走し、私にできる最善を尽くした。(しかし)思いもよらないことが起きた。理由を問わず、国民の皆様に申し訳なかった。特に、傷ついた若者たちに本当に申し訳ない」と述べた。さらに、「長官としてたった数日働くとしても、検察改革のために最後の任務は果たしてから退くという覚悟で、毎日を過ごしてきた。しかし、自分の役割はここまでだと思う」と付け加えた。
辞任の時期はチョ長官自ら決めたというのが、大統領府の説明だ。コ・ミンジョン大統領府報道官は「前日、政府与党間協議会が終わった後、(チョ長官が)辞意を伝えてきた。チョ長官の決断だった」と述べた。また、共に民主党のホン・イクピョ首席スポークスマンも、「本人が明らかにするまで、党では誰も知らなかった」と述べた。
■急速な世論の悪化が決定的
チョ長官が辞意を固めた対外的な理由は、「法務部長官が行える検察改革は一段落した」ということだ。「瑞草洞(ソチョドン)ろうそく集会」が終わり、検察改革のための立法が重要な時期であるため、本人が退くべきだという判断も働いたようだ。ある与党関係者は、「大統領と党に検察改革案を報告し、今日は国民に発表した。もう国会の時間だ。『足枷となる私は退くから、法案を必ず通過してほしい』という強いメッセージだ」と説明した。
しかし、チョ長官が辞任した決定的な理由は、日増しに悪化する世論だった。与党全体から見れば、2カ月以上続いた「チョ・グク政局」に終止符を打ち、国政運営の動力を回復しなければならないという切迫感があった。同日発表されたリアルメーターの調査結果は、政府与党に大きな衝撃を与えた。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の国政運営に対する支持度は41.4%で、先週より3.0%ポイント下落し、就任後最低値を記録した。共に民主党と自由韓国党の政党支持率が誤差範囲内の0.9%ポイントまで縮まった。11日の日間調査では、共に民主党と自由韓国党の支持率が逆転(民主党33%、韓国党34.7%)した。
総選挙を6カ月後に控えた与党の共に民主党議員たちの危機感も日増しに高まっていた。総選挙で敗れれば、政権の基盤が揺らぐと判断した大統領府もかなり困惑したようすだった。ソウルに選挙区がある民主党議員は、「町に出ると、民心が変わったことがわかる。大邱(テグ)はもちろん、釜山(プサン)も全滅と言われるほどだ」と話した。
■「検察捜査に耐えかねた辞任に見えない」時期を選択
チョ長官の辞任が伝えられた後、政府与党では「来るべきものが来た」という雰囲気が強かった。チョ長官は辞意を固め、2週間前から大統領府や共に民主党指導部と辞任の時期を相談してきたという。ある与党関係者は「チョ長官に与えられた時期が三つあったが、そのうちの一つである14日をチョ長官が選んだ」と伝えた。
このようなチョ長官の選択には、「検察捜査に耐えかねて退くわけではない」という点を強調しようという意志も反映されたものと見られる。妻のチョン・ギョンシム教授に対する令状請求直後や発行直後に辞任した場合、検察のために追い出されたような格好になる。15日の法務部国政監査や17日の最高検察庁国政監査、21日の総合監査日程を考えると、検察が令状を請求するなら、22日前後になるというのが大方の予想だった。その間、さらなる世論の悪化もあり得ることから、チョ長官が法務部監査前日の14日を選んだ可能性が高い。与党が13日に政府与党間協議会、14日にチョ長官の検察改革案直接発表などの日程を急いで決めたのも、このような辞任の日程を考慮したものとみられる。
大統領府関係者は「先週、共に民主党の法制司法委員たちが『15日の法務部国政監査前にチョ長官が辞任しなければならない』ということで意見の一致を見ており、チョ・グク長官にもこの事実が知られた。14日の辞意表明に影響を及ぼした可能性もある」と述べた。
■「チョ・グク事態」の収拾は?
チョ長官の辞任で、ひとまず「チョ・グク・リスク」から脱した政府与党には、“状況の収拾”という重要な課題が残っている。検察改革の成果を出さなければならないのはもちろんのこと、チョ・グク事態が火をつけた入試の公正性問題など、教育制度全般の問題にもメスを入れなければならない。若者の喪失感を癒す対策も必要だ。チョ長官の任命を推し進めたことで、信頼を失った人事検証基準と検証システムの整備も必要だ。チョ長官の辞任による後続人事が初の試験台になるだろう。これを機に、国土交通部や教育部などの交代時期になった省庁の長官や首相を替えることで、国政ムードを一新する必要があるという指摘もある。
結局、文大統領が「チョ・グク・リスク」から完全に抜け出すためには、こうした政策的成果や後続人事などで勝負しなければならない状況だ。巻き返しのきっかけをつかんだ与党が、通常国会で改革立法の成果をどれほど出せるかという問題も、今後の政局の主導権を分ける要因に挙げられる。
チェ・チャンリョル龍仁大学教授(政治学)は、「(政府与党が)直ちに中道層をなだめる必要がある。陣営論理を突き進めたことに対する与党内部の真摯な反省なしに再び攻撃一辺倒になれば、支持率の回復は難しいだろう」と指摘した。政治コンサルティング「ミン」のパク・ソンミン代表は、「チョ長官の任命過程で、納得しがたい決定を下した人物らに対する責任の追及が必要だ。そうしてこそ失望した国民の信頼を取り戻すことができる」と述べた。