9・19平壌首脳会談から1年…朝米関係の流弾に当たった南北関係
文大統領の綾羅島競技場の演説に加え
金委員長と天池訪れ、「平和への意志」を刻印
朝米ハノイ会談の合意決裂という悪材料で
米国の牽制の壁に南北経済協力など遮られ
南北当局会談、9カ月以上開かれず
「韓米同盟を維持しようとして南北関係が悪化」
文大統領、国連総会で突破口を模索
専門家「促進者の韓国には自主的な空間が必要」
昨年9月、平壌(ピョンヤン)で行われた首脳会談は南北対話の歴史に新たな1ページを刻む道しるべをいくつも立てた。
第一に、「最高の場面」に選ばれた文在寅(ムン・ジェイン)大統領の昨年9月19日、綾羅島(ルンラド)5月1日競技場での演説。南側の最高指導者が北側の一般人民の前で行った初めての演説だ。「我々は5千年間を共にし、その後70年間離れ離れになりました。私は今日この場で70年間の敵対を完全に清算し、再び一つになるための平和の大きな一歩を踏み出すことを提案します」
競技場の平壌市民は、「白頭から漢拏まで美しい我が地を、永久に核兵器と核の脅威のない平和の基盤にし、子孫に受け渡そうと(金正恩委員長と)確約した」という文大統領の「非核化合意」の公開に歓声をあげた。
金正恩委員長は「9月平壌共同宣言」を発表する場で、「我々はいつも今のように両手を固く握り合い、先頭に立って、共に前進する」と約束した。翌日の9月20日に文大統領と金委員長は民族の聖山である白頭山(ペクトゥサン)の天池に登り、両手を取り合って、平和や共存、協力、自主・統一の意志を世界にアピールした。
第二に、「寧辺(ヨンビョン)の核施設の永久廃棄と追加措置」の合意だ。南北が二国間対話で「非核化実行案」に合意した初めての事例だ。「地球上の最後の冷戦体制」の解体過程で、主導的に協力するという約束だ。これは、金委員長とドナルド・トランプ米大統領の2月のハノイ首脳会談につながった。
ところが、「好事魔多し」と言われるように、ハノイ会談は予想に反して物別れに終わり、朝鮮半島の平和過程には急ブレーキがかかった。その流弾に当たったのは南北関係だった。
実際、南北関係にはハノイ前の9・19平壌共同宣言の発表直後から「対北朝鮮制裁への協調」を口実にした米国の牽制の強化で、“異常兆候”が現れていた。昨年11月20日、ワシントンで初の会議を行った韓米作業部会は、“米国の牽制”を制度化した代表的な装置だ。作業部会の第1回会議の際、マイク・ポンペオ国務長官は「我々は韓国政府に北朝鮮の非核化が南北関係の進展のスピードに遅れをとらないよう望んでいるという点を明確に伝えてきた」とし、「作業部会はこのような方向を維持するように設計された」と強調した。
南北は昨年12月26日、鉄道・道路連結の起工式を開き、9・19平壌共同宣言に明記された「年内の着工式」の期限をかろうじて守った。しかし、実際は工事が行われず、“実のない”着工式だった。
「制裁への協力」を掲げた米国の牽制に阻まれ、大規模な経済協力に乗り出せない南側に、北側は不満をあらわにしてきた。南北当局の公開会談は昨年12月14日に体育分野の会談を最後に、9カ月以上開かれていない。ついに、北側が「南朝鮮当局者たちと膝を突き合わせるつもりはない」(8月16日、祖国平和統一委員会報道官談話)と主張するまでに至った。ムン・ジョンイン大統領統一外交安保特別補佐官ら経験豊かな元老たちが、公に「韓米作業部会が南北関係を妨げている」、「韓米同盟の維持にこだわったあまり、南北関係が崩壊した状況だ」と嘆くのもそのような理由からだ。
ハノイ会談後の朝鮮半島平和プロセスの後退の流れは、6月30日の南北米首脳による板門店会合で反転のきっかけをつかみ、北側が9月9日に朝米実務協議の日程を提案した後、3回目の朝米首脳会談を念頭に置いた神経戦が熱を帯びている。文大統領も当初欠席する予定だった国連総会への出席を急遽決め、「その役割が何であれ、(我々に)できるすべてのことをする」(16日、首席・補佐官会議)と誓った。韓国政府は足踏み状態にもかかわらず、依然として南北当局の疎通の窓口の役割を果たす開城(ケソン)共同連絡事務所などを通じて、新しい活路を見出そうと模索している。
複数の高官らは18日、「朝鮮半島平和プロセスが後退することなく朝鮮半島の非核化と朝米関係の正常化につながるためには、韓国が促進者として自主的な空間を確保する必要がある」とし、「その中核となるのは、南北関係で朝米関係を牽引する韓国の対米自主性の確保」だと助言した。