サムスン電子「Xファイル」、「PD手帳」のBSE報道…
「政治的判決」を考察する本を出版
「裁判官、結論正しいか問うべき」
「既得権の世襲化」にも意見表明
「“ドブ川より龍出ずる”ためのはしごが必要」
チョ・グク長官資格論争には言葉を控える
朴槿恵(パク・クネ)政権と「ヤン・スンテ最高裁」を経て、司法府と政治の重なりが激しい社会的波紋をおよぼす中、韓国初の女性最高裁判事である亜洲大学法学専門大学院のキム・ヨンラン(63・最高裁・量刑委員会委員長)碩座教授が新しい本『判決と正義』(創批)を出版した。
17日、ソウル市中区貞洞(チュング・チョンドン)の飲食店で開かれた記者懇談会で、キム教授は判決の「政治性」に言及した。「政治的判決が全く生じないということはありえません。サムスンXファイル事件、PD手帳のBSE報道事件などは政治的な判決でした。そのような政治的判決はなぜ生じ、判事たちはどうすればいいのか、また三権分立に関しても問題意識を持ち、本を書くことになりました」
1981年から2010年までの29年間、裁判所で働いてきたキム元最高裁判事は今回の本で、最高裁判事退任後に宣告された最高裁全員合議体判決の中から、セクハラ教授解任決定取り消し訴訟、加湿器殺菌剤事件、江原ランド事件、キコ(KIKO)事件、サムスンXファイル事件、PD手帳のBSE報道事件などを取り上げ、家父長制、自由放任主義、過去の清算、政治の司法化などの争点を分析する。判決の際、裁判官が法理だけで判断することが果たして可能なのか、「最高裁判事が自分に認められた自由をどう使用するのか」を考察したくだりが目を引く。
「(裁判官は)政治的判決を一般の人以上には出せないという考えを持つべきです。裁判官らは、法律の条文を解釈する訓練を数十年間にわたって受け、99.9%はそのように法理に則って判断します。しかし、時には政治的観点による選択をした時、その結論が正しいか問うだけでも、よりよい判決が出せるのではないかと思います」
キム元判事は、「政治的」判決について「敏感な理念的軋轢や対立する政治的問題においては、結局は政治的偏向の枠組みで分かれるだけだという話を本に書いた」とし、「韓国ではなく米国のケースだが、米連邦最高裁と韓国は似ている」と述べた。
イ・ヨンフン最高裁長官が就任した後、最高裁が試みた「過去の清算」が尻すぼみに終わり、ヤン・スンテ長官時代には最高裁が過去の歴史問題を完全に覆い隠すという「整理」の道を歩んだことで、大きな限界が生じたとキム元判事は見る。「歴史の清算について書くのが一番難しかった。他国の事例を引きつつ私たちがどうすべきだったかを考えながら、最高裁の判決に批判的な目線で書きました。法理的な誤りを指摘したかったのですが、大変で難しかった」。
最近、韓国社会の熱い話題になっている既得権の世襲化問題については、判事社会もまた上流層に独占されつつあり、彼らが下す判決にも限界があるのではないかという指摘に対して、キムさんは「(裁判官らに)あなたたちが幼い頃から蓄積してきた知識のほかにも、より広く深い考え方があり得るということを示すというのが、この本の目的でもあった」と述べた。また、「“ドブ川より龍出ずる”(身分の低い家から出世する人物が出ること)のが難しくなった社会は発展のない社会だということに同意し、ドブ川より龍出ずるためのはしごを外してはならないと思う」とし、「裁判官選抜制度においても(階層移動の)はしごを外してしまうのはよくない」と述べた。
さらに、「韓国は高学歴社会であり階層移動が容易だったため、最近の動きにはそれゆえに挫折感も感じるだろうが、それが韓国社会を前進させる要素になり得ると思う」とし、「その挫折感を緩和し、熱望が実現できるように制度を構成していくべきだろう」と指摘した。ただ、この日はチョ・グク法務部長官の資格問題をめぐる世論と大学入試制度改編公論化委員会委員長としての経験に対する質問が殺到したが、キム元判事は敏感な問題として発言を控えた。