文在寅(ムン・ジェイン)大統領が9日、様々な議論や野党の強い反対、50%を上回る否定的な世論にもかかわらず、チョ・グク法務部長官の任命を決心した最も大きな理由は、現政府の最大の課題である検察改革を完遂するためと見られる。検察の前例のない全面捜査の中、チョ長官の妻が起訴される状況にまで発展したが、チョ長官本人の違法・犯罪の容疑はないという名分を掲げ、正面突破を選んだ。
「検察改革の適任者」…諦めるわけにはいかない
文大統領は同日、チョ長官をはじめ6人の長官級人物に任命状を与えた後、冒頭発言で「権力機関の改革が最も重要な公約だった」とし、「私と共に権力機関の改革に向けて邁進し、成果を見せてくれたチョ長官に、その仕上げを任せたいという考えを示してきた。その意志が座礁してはならない」と強調した。
大統領が国務委員に任命状を与える際、生中継される国民向け談話の形で任命の理由を説明し、国民の理解と支持を求めたのは極めて異例のことだ。文大統領としては、検察改革のためにチョ長官が必要であり、状況がそれだけ切羽詰っているという点を国民に直接訴えたということだ。
チョ長官は、政権発足後、2年2カ月にわたり民情首席を務め、高位公職者犯罪捜査処(公捜処)の新設案と、検察と警察の捜査権の調整の設計を主導した。大統領府高官は「チョ長官が検察改革で最も適任だという文大統領の考えは揺るぎなかった」と伝えた。別の大統領府関係者は、「原則主義者である文大統領が司法・検察改革という最も大きな原則を基準にしたようだ」と述べた。
検察の捜査で決心固めたもよう
組織の死活をかけたような検察の全面捜査は、「チョ・グクでなければならない」という文大統領の考えをむしろ強化したものと見られる。特捜部の検事らが多く動員された捜査や、重要な政治的節目に合わせて行われた強制捜査、聴聞会の終了直前の長官の妻の起訴、それ以降に進められた被疑事実を流した疑惑などが、むしろ任命の決心を固める要因になったということだ。大統領府の高官は「文大統領は、政治過程への検察の介入が異常だと見ている」とし、「検察の捜査で、チョ長官の任命が実現されなければ、その後任が誰になっても検察改革は困難だと判断したようだ」と述べた。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府時代に機会を失い、検察改革に失敗した苦い経験を踏まえた選択と見られる。
文大統領は同日、「検察の捜査を受ける法務部長官がきちんと仕事ができるのか」という批判についても直接説明した。文大統領は「検察は検察がすべきことをし、長官は長官がすべきことをしていけば、権力機関の改革と民主主義の発展をはっきりと示すことになるだろう」と述べた。これについて大統領府関係者は、「司法・検察改革はチョ長官の役割であり、ユン・ソクヨル検察総長(検事総長)の役割ではない。検察が自らの手で検察改革を進めることはできないだろう」とし、「文大統領は、(今回の人事で)制度改革は長官、捜査は検察の役割だと明確に区分した」と説明した。その背景には、検察の捜査が進んでも、チョ長官の役割に致命的な打撃を与えることはできないという判断があるようだ。
緊迫した週末…二通りの国民向け談話を用意
文大統領が週末を過ぎてこの日午前の大統領府首席補佐官会議まで取り消して悩んだのは、明らかに分かれた世論の問題もあったが、チョ長官本人に対する処罰の可能性を検証するのに時間が必要だったためだという。週末前まで「どんな状況でも任命」だった気流は、検察がチョ長官の妻を起訴したことで変わった。実際、文大統領は8日午後、ユン・ゴニョン国政状況室長にチョ長官の任命と指名撤回という二通りの国民向け談話を用意するよう指示したという。
結局、文大統領は同日の任命式における冒頭発言で「本人が責任を取るべき明白な違法行為が確認されていないにもかかわらず、疑惑だけで任命しないならば、悪い先例を残すことになる」と述べた。独自の調査で確認が終わったという意味だった。これについて、複数の大統領府関係者は、「文大統領を最も悩ませたのは、チョ長官本人の犯罪容疑があるかどうかだった」とし、「聴聞会と独自の会議を経て、チョ長官が職務を遂行する上で致命的な問題はないと最終判断した」と伝えた。