「私は今日、“誰も揺るがすことのできない国”、私たちが作りたい“新たな朝鮮半島”のために、三つの目標を提示します」
文在寅(ムン・ジェイン)大統領が15日に行われた光復節記念式典での演説の中心は「平和経済の構築」に関するものだった。日本の不当な攻撃に応戦する「責任ある経済強国」を作り、大陸と海洋を結ぶ「橋梁(懸け橋)国家」を建設するためには、朝鮮半島の平和が先決条件と考えたのだ。
文大統領は「(今が)朝鮮半島の非核化と平和構築に向けた全体過程で最も重大なヤマ場になる」とし、「6月末の板門店(パンムンジョム)会合以来、3回目の朝米首脳会談に向けた朝米間の実務交渉が模索されている。南北米ともに朝米実務交渉の早期開催に集中すべき時」だと述べた。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長とドナルド・トランプ米大統領のハノイ会談後、止まったかのようだった朝米対話が、6月の両首脳の劇的な板門店会合で蘇った機会を逃してはならないと強調したのだ。
文大統領はさらに、「南北米はこれまで1年8カ月間にわたり対話局面を続けてきた。最近、数回にわたる北朝鮮の懸念すべき行動にもかかわらず、対話ムードに揺るぎがないことこそが、韓国政府が推進してきた朝鮮島平和プロセスの大きな成果だ」とし、「不満な点があっても、対話の枠組みを壊したり、壁を張ったりすることで対話を困難にするのは決して望ましくない」と述べた。また「不満があれば、それもまた対話の場で問題を提起し、議論していかなければならない」とし、北朝鮮に対し“挑発”ではなく、“対話”だけが解決策になり得ることを重ねて強調した。
朝鮮半島平和プロセスが南北経済の相互発展につながるという“バラ色の見通し”も示した。文大統領は「韓国と北朝鮮が力を合わせれば、それぞれの体制を維持しながらも、8千万の単一市場を作ることができる。朝鮮半島の統一まで実現すると、世界経済において第6位の規模になるものと予測している。2050年頃、国民所得7万~8万ドル時代が可能という国内外の研究結果も発表されている」と説明した。また「北朝鮮も経済建設総路線に国家政策を切り替え、市場経済の導入が行われている。北朝鮮を一方的に助けようというのではなく、互いの体制の安全を保証しながら南北相互間の利益になるようにしようというもので、ともに豊かに暮らそうということだ」と強調した。北朝鮮の相次ぐ挑発を口実に、南北軍事合意の破棄など強硬路線の転換を求める保守陣営に向け、北朝鮮に対する支援が“共同繁栄”のために不可決な措置であると説得したのだ。
文大統領は「『北朝鮮がミサイルを発射しているのに、平和経済とはとんでもない』という人もいる。しかし、私たちはより強力な防衛力を保有している」と強調した。また「米国が北朝鮮と動揺することなく対話を続け、日本も北朝鮮と対話を推進している現実を直視してほしい。理念にとらわれ、一人ぼっちにならないことを願う」と訴えた。安保不安を刺激し、北朝鮮との対決意識を助長する保守野党に向けたメッセージと言える。
米中間の葛藤が激化する東アジアの状況については、韓国独自の「はっきりとした目標」を持つことを求めた。文大統領は「韓国の地政学的位置を韓国の強みに変えなければならない。はっきりとした目標を持たなければならない」とし、「朝鮮半島の地や空、海に人と物流が行き交う血脈を繋ごう」と述べた。4大国に囲まれている半島国の悪条件を、「大陸と海洋を結ぶ橋梁国家」のビジョンで突破していこうという提案だ。
平和経済が完成される時期は、光復100周年になる2045年と想定した。自分の任期内に非核化と平和体制を確固たるものにするという抱負も示した。文大統領は「2032年のソウル・平壌の共同五輪を成功的に開催し、2045年の光復100周年までには平和と統一で一つになった国として世界に立てるよう、その基盤をしっかりと固めると約束する」と述べた。そして「私たちの力で分断を乗り越え、平和と統一へと進むことが、責任ある経済強国への近道」だと述べながらこぶしを握った。