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[インタビュー]「ろうそくデモなど市民社会の揮発性が高まる…組織的基盤の強化を」

登録:2019-05-27 09:27 修正:2019-05-27 11:48
盧武鉉元大統領逝去後、市民社会の変化を評価 
個人化・情報化でネットワーク型に変化 
爆発力の極大化に発展 
 
「支持行動も瞬く間だが、支持撤回も引き潮のように現れ」 
「長期的政策課題の推進は揺るがないよう市民社会の強化を」
シン・ジヌク中央大学教授//ハンギョレ新聞社

 シン・ジヌク中央大学教授(社会学)が、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領逝去10周忌を迎え、盧元大統領の後、改革政府が成功するためには「市民社会の組織的基盤を強化することに投資し、支持層が引き潮のように流出するのを防がなければならない」と述べた。ハンギョレは盧元大統領逝去後の10年、彼が夢見た「進歩主義」はどれほど私たちにとって現実になったのか調べるため、イ・ジョンウ韓国奨学財団理事長に続き、シン・ジヌク教授を22日インタビューした。シン教授は、盧元大統領以降、「過去10年間、市民社会の政治への参加方式は組織化の程度が強化されたというよりは、ネットワークの行動様式に変わった」とし、「市民社会の基盤を強化してこそ福祉や労働などの政策課題を揺るがず推進できる」と話した。

 -盧元大統領は遺稿集『進歩の未来』で市民の重要性を強調した。盧元大統領後、韓国の市民社会の変化はあったのか。

 「盧元大統領は“組織された”市民の力を強調したが、市民の力がこの10年間で飛躍的に成功したことは確かだ。ところが、組織された市民が基盤になったというよりは違う様相で展開された。ネットワーク市民というが、オンラインやSNS、または社会的なネットワークを通じた活動が出てきた。組織とは違う。若い世代はますます“組織人間”になることを拒む。組織のメンバーとして自分の位置が固定され、組織の中で自分に負担が生じる選択の制約が生じることを嫌う傾向がある。この10年間、市民社会の政治への参加方式は、情報化とともにネットワークの行動様式に変わって発展し、政治的な爆発力が大きくなり、制度政治に市民たちが影響を行使できる力は飛躍的に増えた。(しかし)その裏には、組織化を通じて期待できる堅固さ、持続可能性、献身は弱くなった。つまり、イシューが発生した時は爆発的に市民大衆が参加することは増えたが、イシューが消滅した後は日常に戻るという両面性がある」

朴槿恵政権退陣非常国民行動記録記念委員会主催のろうそくデモ1周年記念大会が、2017年10月28日午後ソウルの光化門広場で「ろうそくは続く」を主題に開かれている=イ・ジョンア記者//ハンギョレ新聞社

 -以前のインタビューで、盧武鉉政府は序盤には支持者らの政治改革への熱望があったが、その後は疲労感が大きかったという。文在寅(ムン・ジェイン)政府はこのようなことを繰り返してはいないか。

 「ある程度参与政府(盧武鉉政府)の過ちを繰り返しているわけではない。繰り返しているのは北朝鮮問題だと思う。北朝鮮政策の面で、今の政府の役割がどれほど重要かは同意する。しかし、国内で支持を受けるためには政府が対北朝鮮政策だけに全てを賭けているという印象を与えてはならない。朝鮮半島の百年後の未来のためにあまりにも重要だが、明日食べていくことができなければ何の意味があるか。生活問題をなおざりにし、北朝鮮問題だけ重要視すれば、自由韓国党の支持率が上がる。いま30%近くまで支持率が回復したのもこのためだ。最近、文在寅政府で数カ月前から雇用の話を続けていることも、国民の政策に対する支持基盤を広げるためだと思う」

 -市民社会がネットワーク型に変わったのも文在寅政府が参考にする必要があるようだ。

 「市民社会が厚ければ、政府と政党がどんな行動を取っても、どんな政治的状況が来ても世論が大きな変動なく維持される。組織化されていて立場を容易に変えられない。しかし、韓国は労組組織率がかろうじて10%程度であり、市民団体に対する信頼度も1990年代に比べ大幅に低下している。平均的に2年に一度ずつ引っ越しをするので地域社会も弱く、組織された層が非常に薄いのが特徴だ。それに対する解決策は、前述のように流動的で開放的なネットワーク型の政治参加を高度に発展させることだった。

 しかし、躍動性の裏には揮発性がある。この政権はダメだと引きずり出すのは爆発的な大衆行動を通じて貫徹するが、『ここでもない』という気がしたとき、政権に対する支持を撤回して支持層が退却することもとても迅速に行われる。組織化された市民社会が厚ければ長い時間をかけて現れるが、韓国のように躍動性の強いところは支持行動も瞬く間だが、撤回も早い」

 -それでは、迅速に離れていく可能性のある支持層を確保するために、彼らが必要なことをすべきだろうか。

 「二つの道がある。短期的かつ即刻に世論の行方をモニタリングしながら(彼らに)応えることは、政権の支持基盤を維持することにとっては決定的だ。これはいま大統領府もわかっているようだ。第二の長期的な道は、市民社会の組織的基盤を強化するために政治的投資をする必要がある。組織基盤が弱いということを与えられた運命のように受け入れては、民主主義が健全に進むことはできない。短期的な対応だけでは長期的な政策を推進することはできない。

 (現政権でも)福祉や労働政策は地方選挙まで待ってほしいと言っていた。地方選挙が終わると、総選挙だけは勝とうと言っている。総選挙で勝てば政権をまた創出し、その時にしっかりやろうと言うだろう。ずっと猶予し続ける。世論の負担を背負っても必ず推進しなければならない政策課題を引き続き猶予すれば、大統領選挙後にも同じ状況を繰り返す可能性が高い。(それで)政権を握っている間、市民社会の組織的土台を自ら強化できるように法的根拠や財政補助などをしなければならない。市民社会の土台を厚くすれば、その分そのときどきに世論に踊らされる程度を下げることができる」

イ・ワン記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/895375.html韓国語原文入力:2019-05-26 21:20
訳M.C

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