「また銃声が聞こえた。市民たちは再び銃を避け 一目散に走り出した」
1980年5・18民主化運動当時、光州(クァンジュ)の瑞石高校3年生だったチョン・ヒョンムン氏(57)は、旧全羅南道道庁前の戒厳軍による集団発砲現場で見た事実をはっきりと覚えている。市民たちは再び銃撃を避け、一目散に走り出した。彼も「銃撃を避けるためまさに走り出そうとしていたところ」だった。しかし、左のわき腹の下のへその下のあたりがおかしい。最初はひりつくような感じがしたが、しばらくして痛みが襲ってきた。見ると、血が流れ出ていた。チョン氏は「すぐに倒れてしまった」と振り返った。
チョン氏が銃傷を負って担架に載せられ移動している姿は、5・18記録写真にそのまま残っている。この写真では、チョン氏の隣で瑞石高校の友人のキム・ドンリュル氏(左手首にタオルを巻いた人)が心配そうな目で見ている。チョン氏の体には今も戒厳軍の銃弾が埋まっており、苦痛を負っている。
1980年の5・18民主化運動の時、瑞石高校3年生たちが経験した歴史の断片が一冊の本にまとめられた。5・18記念財団は3日、光州瑞石高校3年生の経験を記録した『5・18、私たちの話』(シムミアン)が出版されたと発表した。この本は、1980年5・18当時瑞石高校3年生だった61人が直接経験した生々しい体験談を456ページの本にまとめたものだ。瑞石高校5期同窓会が、5・18記念財団の公募事業に2年連続で選ばれ進めた成果だ。
瑞石高校3年生たちの経験談は具体的な内容が多く、注目を集める。この本には、戦闘教育司令部の「光州騒擾事態の分析」や、保安司令部が出した「第5共和国戦史」に出てくる戒厳軍の「便衣隊」の活動事例も登場する。便衣隊とは、5・18当時デモ隊隊員として偽装して査察活動を行った戒厳軍秘密工作チーム所属の軍人を指す。当時、瑞石高校3年生のオ・イルギョ氏は便衣隊員に捕まり、20日間拘禁された。
「昨日から一緒に行動したスポーツ刈りの30代の青年が一緒に行こうと言ってついてきた。その青年と話をしながら歩くと退屈しなかった。尚武台を過ぎて西倉橋に着いた。橋の前に検問所があった。勤務中の4人の軍人が私たちのところに来た。その時だった。一緒に来た30代の青年が拳銃を取り出して私のわき腹を突いた。私はびっくりして見あげた」(オ・イルギョ、「尚武台営倉に入れられて」より)。オ氏は「その青年は検問中の軍人たちに身分証を見せ、私を引き渡してどこかへ消えた」と明確に記憶していた。その青年は「軍人の身分を偽り、デモ隊の情報を獲得するためにデモ隊に合流した戒厳軍」だった。
戒厳軍便衣隊所属要員の正確な数字は確認されていない。便衣隊は情報司令部、戦闘教育司令部、505保安部隊、20師団、31師団、3・8・11空挺旅団、警察情報チームなどから広範囲に構成されていたと推定される。彼らは特に、諜報・情報収集、主導者の摘発・逮捕、デモ隊の位置・武装状況の把握と報告、デモ隊の謀略・撹乱、宣撫工作、地域感情助長、武装必要性助長、市民とデモ隊の分離工作などの特殊任務を担った。
「突然、私たちの詰め所にも銃弾が飛んできた。…私はあまりに驚いて、手榴弾が爆発したのかと思った。反射的に私たちは詰め所の床に伏せた。もう死んだな、家にいればいいものを出てきて死ぬことになったな…」
5月18日から始まった10日間の抗争、最後の日に市民軍の拠点である旧全羅南道道庁を抜け出た瑞石高校3年生のイム・ヨンサン氏(57・瑞石高校5期同窓会長)の記録も注目される。銃を持って戦っていた彼は、5月27日早朝、戒厳軍が旧全羅南道道庁に進入するのを見て逃走した記憶を、略図とともに生々しく記録した。イム氏は「銃声が鳴り響き、道庁本館裏で窓ガラスが割れる音、悲鳴、市民軍を制圧しようとする戒厳軍の悪意に満ちた怒鳴り声が入り混じって聞こえた。近くで生々しく聞こえてくるあらゆる音は、私を恐怖のるつぼに陥れた」と記憶を思い起こした。
この他にも全南大学や光州刑務所で46日間逮捕されていたが釈放された事例、街頭放送で有名なチョン・オクジュ氏の家族が一人暮らしの家の隣に住んでいたため、実姉がスパイ容疑で連行されて取り調べを受けた経験、拷問を受けても一緒にデモに参加した自分についてついに話さなかった友達の無念の死などが書かれている。イム・ヨンサン瑞石高校5期同窓会長は「5・18は何人かの人や特定の勢力ではない、平凡な市民たちの抗争であり、市民たちがまさに5・18の主人公であり被害者だという事実を記録したかった」とし、「さらに、一部で『北朝鮮軍介入説』などで5・18を歪曲して蔑視するのを、これ以上黙って見ていられず、5・18の実状をきちんと知らせるためにこの本を出すことした」と話した。
『死を越えて時代の闇を越えて』の共同著者であるイ・ジェウィ氏は、「5・18当時の平凡な人たちの小さな目撃談と告白が歴史の材料になる。5・18の歴史は、完全にそのように復元されたものだ。当時の高校生たちの内面を窺うことのできる希少で新しい記録だという点で、この本の意義は大きい」と語った。