「朝米会談で合意に至らなかった理由」めぐる米メディアの分析
トランプ大統領の「失敗した計略」
親交晩餐で一括妥結を提案
金委員長、信頼不足を理由に拒否
交渉力を過信したトランプ大統領が推し進めた
金委員長の「誤った計算」
北朝鮮、会談6日前の実務協議から
寧辺の廃棄の見返りとして主な制裁の解除を要求
米国は制裁の全面解除と見なした
ベトナムのハノイで開かれた第2回朝米首脳会談が“ノー・ディール”に終わったのは、ドナルド・トランプ米大統領と金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮国務委員長の「誤断」による結果で、「予期されていた」と、米国メディアが報道した。
ニューヨーク・タイムズの2日付の報道を総合すると、トランプ大統領は金委員長と8カ月ぶりに再会した27日の晩餐会で、いわゆる「グランド・バーゲン」(一括妥結)を提案したという。北朝鮮がすべての核兵器や核物質、核施設を提供する代わりに、米国は対北朝鮮制裁を解除するという内容だった。「寧辺(ヨンビョン)の核施設の廃棄」の見返りとして、2016年3月以降採択された国連安全保障理事会(安保理)の対北朝鮮制裁決議5件を解除してほしい」という金委員長の要求に対する、トランプ大統領の“答え”だった。
金委員長は「一度で全てを交換するには、双方の信頼が足りない」として、この案を受け入れなかった。しかし、トランプ大統領は翌日の本会談でも、この主張を貫いた。米国のある当局者は「(トランプ大統領の提案は)大胆に行こうということだった」と説明した。
同紙は「トランプ大統領の提案は米国が25年間提示し、北朝鮮が拒否してきたものと根本的に同じ」だと指摘した。同紙は、北朝鮮が一括妥結方式の完全な非核化に合意する可能性は、ジョン・ボルトン米国家安全保障会議(NSC)補佐官とマイク・ポンペオ米国務長官が率いるトランプ大統領の参謀たちも極めて低いと見ていたと報道した。一部では会談の開催に懐疑的な声も上がったが、自分の交渉力を過信したトランプ大統領が会談を推し進めたという。
今回の会談に関与した関係者6人とのインタビューに基づき、ニューヨーク・タイムズ紙は、「トランプ大統領の失敗した計略」が2年間続いた「誤断の頂点であることは明らかだ」と報じた。金委員長も寧辺の核施設廃棄カードにし、主な対北朝鮮制裁の解除を引き出せるという「誤った計算」をしたと指摘した。
同紙はまた、北朝鮮が「寧辺の核施設の廃棄」に対する相応の措置として、特定の対北朝鮮制裁の解除を要求したのは、2回目の首脳会談が開かれる6日前にハノイで開かれた実務交渉の際だったと報じた。それらの決議は北朝鮮の鉱物や水産物、石炭、原油、精製油などの輸出入を制限するものであり、米国は、北朝鮮が事実上対北朝鮮制裁の全面解除を要求するものと見なしたという。
これと関連し、ウォールストリート・ジャーナルは1日(現地時間)付で、「米国の(交渉)チームが北朝鮮にどのような(制裁の)免除(exemptions)を求めているのかと尋ねたが、(北朝鮮側の)答えは兵器を除いた事実上すべてだった」と報じた。また「米国当局者は電卓を叩いた結果、(北朝鮮が要求する制裁の解除は)数十億ドルに達すると判断した」とし、「寧辺の核施設の部分的閉鎖」の見返りとして提供するのは困難だったと報道した。同紙によると、トランプ政権の高官らは、北朝鮮が核・ミサイルなど大量破壊兵器(WMD)の凍結に同意するなら、一部経済制裁を解除することも考慮していたという。
トランプ大統領が「寧辺の核施設の廃棄-安保理の5件の対北朝鮮制裁決議の解除」という金委員長の提案を受け入れようとしたかどうかは、定かではない。ただし、北朝鮮の核・ミサイルプログラムを隅々まで把握しているポンペオ長官が「寧辺だけで合意すれば、随所に核プログラムを隠しておいた若い指導者にだまされていると見られかねない」として反対したと、米メディアは報じた。ニューヨーク・タイムズ紙は「結局、(トランプ)大統領は金委員長とホテルのプール周辺を短く散策してから、握手を交わし、予定されていた昼食会を取り消した」と伝えた。
北朝鮮との非核化交渉に詳しい米政府当局者はCNNに「北朝鮮は寧辺のすべてを差し出そうとしていた。公式的な文書の形で完全に解体する意向もあった」とし、「北朝鮮は非常に真剣に交渉に臨んでいた。なのに、トランプ大統領と米国代表団がその提案を拒否して帰った」と伝えた。