検察公安部が、民主労総所属の組合員の逮捕状を請求し「民主労総は大韓民国の法治と経済をだめにする癌のような存在」という表現を請求書に書き、批判が起きている。労組弾圧が日常的に行われていた1980~90年代の旧公安的視角をそのまま込めたもので、最近の弾力労働制などを推進する政府・与党の民主労総圧迫の動きが、捜査機関の「公安退行」を煽っているのではないかという懸念も出ている。
21日午後、ソウル中央地裁では金属労組起亜自動車非正規職支会のキム・スオク支会長の拘束前被疑者尋問(令状実質審査)が行われた。キム支会長は今月18日、「文在寅(ムン・ジェイン)大統領と対話を求める非正規職100人代表団」の労働者5人とともに、集会・デモが禁止されている大統領府前で奇襲デモを行い逮捕された。ソウル鍾路(チョンノ)警察署は昨年9月から、大統領府と国会、最高検察庁、ソウル地方雇用労働庁などで6回の違法集会を行った疑いで、キム支会長の逮捕状を検察に申請した。
論議を招いた表現は、今月20日にソウル中央地検公共刑事捜査部(部長キム・スヒョン)が裁判所に出したキム支会長の逮捕状請求書に書かれていた。検察は、拘束を要する事由として「被疑者は労使問題解決のために存在する法体系を無視し、違法な暴力集団闘争を続けてきた」とし、「これに対し大統領と政府、政界も労働界の違法行為に対して厳しい処罰を指示し依頼した」と指摘した。そして、昨年11月に政界などから相次いで出た民主労総に対する批判発言などを「主語」を付けずに長々と羅列した。「民主労総と全教組はもはや社会的弱者ではないと考える」(イム・ジョンソク前大統領秘書室長)、「党最高委員-重鎮議員の連席会議で、民主労総は大韓民国の法治と経済をだめにする癌のような存在(だと言った)」(ハ・テギョン正しい未来党最高委員)、「民主労総だから手をつけられないということはありえない」(キム・ブギョム行政安全部長官)などが、大統領と政府、政界の「指示と依頼」として引用された。特に最も論議を呼んだ「民主労総は癌のような存在」の場合、誰が発言したかを明らかにしないまま「党の連席会議」とだけ表記し、まるで与党から出た表現であるかのように巧妙に編集された。社会的妥協を強調し、イム前室長が「社会的弱者ではない」とした発言も「厳しい指示」として表現された。
これに対し、金属労組法律院のタク・ソンホ弁護士は、「(かつて)検事らが主導権を握り、社会秩序の維持に貢献していることを示すため、労働事件を公安事件として処理してきた。以前の旧時代的な見方をまだ捨てていないようだ」と批判した。最近、検察は公安パートで労働事件を担当する場合「時局事件化」しているという批判を受け入れ、これを切り離そうとしたが、公安検察官の反対で名称だけ「労働捜査支援課」「公共捜査部」などに変えることにした。
「100人代表団」側も強く反発した。代表団は「キム支会長に対する逮捕状請求は単なる警察と検察の過剰反応ではない。文在寅政府の反人権・反労働基調に公安検察が幅を利かせた」と指摘した。
昨年末から保守勢力の民主労総たたきはひどくなり、保守メディアでは「民主労総共和国」なのかと言い、キム支会長を狙って違法デモと占拠座り込みに対する処罰を要求してきた。ここに、労働運動出身の共に民主党のホン・ヨンピョ院内代表までが「いま民主労総と対話しても何にもならない。常に暴力的なやり方を使う」(昨年11月12日)と口添えした状況が、「ろうそく政府の公安」の退行につながっているのではないかということだ。
検察は、該当の文言を警察が作成したとしながらも、これを削除できなかったことは不適切だったと認めた。検察関係者は「警察が作成した逮捕状申請書の内容の(不適切な部分を)削除できず、そのまま裁判所に渡した。犯罪の容疑を明らかにする過程で、最後に必ずしも入れなくてもよい蛇足が入ったようだ。適切ではない」と明らかにした。ソウル中央地検のパク・チャンホ2次長検事は、論争が大きくなると「警察の申請書をそのまま請求しただけで、特定団体に対する先入観を持ったわけではない」と釈明した。今回の逮捕状をめぐる議論を呼んだソウル中央地検公共刑事捜査部は、昨年9月にサムスンの労組瓦解工作事件の捜査結果を発表し、「労組は傾いた運動場で不公正なゲームをした」と述べたことがある。