本文に移動

[インタビュー]シム・ソクヒ選手弁護人「選手村での被害、国の責任を追及せよ」

登録:2019-01-10 09:12 修正:2019-01-10 10:13
法務法人「世宗」のイム・サンヒョク弁護士  
「統制されたシステムに選手を追い込み、犯罪には無関心 
教育強化・永久除名、事後では遅すぎ意味もない 
選手らは騒ぐだけ損という認識…大韓体育会も傍観 
父親はショックと怒りで薬に頼って辛うじて耐え 
国民みんなでシム・ソクヒ選手の勇気を応援すべき」
シム・ソクヒ選手の法律代理人を引き受けたイム・サンヒョク弁護士が9日午後、ソウル市中区の法務法人世宗の事務室でハンギョレとインタビューをしている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 「国が責任を感じなければ」「通報センターがなくてこんなことになったのか。教育を強化して永久除名したからといって何になるのか。事後では遅いんです。(国が)根本的に自分の責任だと切実に感じなければ。(これまで)トカゲのしっぽを切ればいいというふうに無責任に逃れて、当事者個人の不正として放っておいたからここまで来たのです」

 9日、ソウル中区(チュング)にある法務法人「世宗」の事務所で会ったイム・サンヒョク弁護士(50)は、ショートトラック国家代表のシム・ソクヒ選手(22)が、高校2年生の時からチョ・ジェボムコーチに性的暴行を受けていた事実について、「国家の不在」を語った。イム弁護士は「法律的に管理監督の問題がある。国家代表選手は国の代表であり、国が必要として国際大会に送る。良い成績を要求し、統制されたシステムに選手をかこっておいて、その中で起きている犯罪は知らないといって責任を逃れる。これは個人の問題ではない。国家が自分の問題だと認識しなければ根絶できない」と強調した。

 イム弁護士は、シム・ソクヒ選手の弁護人を昨年夏に初めて担当した。2018年の平昌(ピョンチャン)冬季五輪を控え、忠清北道鎭川(チンチョン)の選手村で行われたチョ・ジェボムコーチによるシム・ソクヒ選手暴行事件が法廷攻防に入り、シム・ソクヒ選手側でも助力が必要だったためだ。1審は昨年9月、常習傷害などの容疑でチョ・ジェボムコーチに懲役10カ月を言い渡し、法廷拘束した。

 小・中学校に通う二人の息子の父親でもあるイム弁護士は、「シム・ソクヒ選手の暴行内容を知り、子どもを持つ親の立場から他人事とは思えなかった。親はシム・ソクヒやキム・ヨナを見て選手を夢見て、指導者に任せる。しかし、性暴力まで受けたという事実を聞いて、これが事実かと疑った。シム・ソクヒ選手の言葉が信じられないのではなく、はたして2019年に大韓民国でこんなことが可能なのかとショックを受けた」と話した。

 シム・ソクヒ選手は一生の傷である性的暴行被害について話さなかった。チョ・ジェボム元コーチと法廷攻防を繰り広げながらも、固く口をつぐんでいた。しかし、拘束されたチョ元コーチが自分の過ちを認めず免れようとすると、勇気を出した。イム弁護士は「2審の過程でチョコーチが合意書を提出するなど、ややもすると暴力問題が執行猶予で終わる可能性もあるとの判断が出た。私たちの側も得るものを得て和解することも考えた。その時、シム選手が性的暴行の事実を父親に打ち明けた」と語った。

 生涯娘の支援をしてきた父親のショックも大きかった。イム弁護士は「長い間娘を支援してきた父親も、このような事実を知った後、非常にショックを受けて憤った。現在、ストレスのため薬物を服用しながら耐えている」と伝えた。イム弁護士はシム選手の性的暴行被害の告白後、直ちに女性弁護士を配置してシム選手と一対一の深層面談を行い、週末まで徹夜作業をして12月に性暴力事件について追加告訴することができた。

 イム弁護士はこの点でシム・ソクヒ選手の勇気を褒めた。彼は「暴行事件だけで裁判が進めば、やや軽微な事件に終わる可能性もあった。シム選手も被害者の立場から『どうしよう』『競技力向上のためのムチと考える人もいるかもしれない』『私が敏感に反応しすぎるのではないか』などと考えたならば、埋もれていたことだろう。だが、シム選手は断固としていた。本当にすごい決心と大きな勇気だ」と語った。

 これまで指導者の暴力や性的暴行の問題が起これば、最終的に被害を受ける側は選手が多かった。2015年、リュージュの国家代表のK選手は、常習的な暴行を行ってきたコーチに対し損害賠償請求訴訟を起こして勝訴した。だが、1年単位で選ぶ国家代表選抜戦に備えることができず、結局夢だった代表チームに入ることができなかった。イム弁護士は「告訴し、訴訟まで行っても、判決文は意味がない。選手の間では騒ぐだけ損という認識が広がっている。その時も連盟では選手を全く保護しなかった。大韓体育会も傍観するのは同じだ。構造の問題というよりは、個人の問題として片付ける」と批判した。

 ショートトラックをはじめ、スケート種目はたいてい個人コーチが選手を指導する。選手と指導者の関係は利害がぶつかり合わない限り一生続く。シム・ソクヒ選手は小学校1年生の時からチョ・ジェボムコーチの指導を受け、中学校時代から全国を席巻した。しかし、勝利の喜びの代わりに記憶に留めたくない悪夢のような記憶がより重く積み重なった。

シム・ソクヒ選手の法律代理人を引き受けたイム・サンヒョク弁護士が9日午後、ソウル市中区の法務法人世宗の事務室でハンギョレとインタビューをしている=ペク・ソア記者//ハンギョレ新聞社

 イム弁護士はこの日、文化体育観光部の緊急記者会見で、ノ・テガン次官が性暴力加害者の永久除名など新味のない対策を打ち出したことについても、「中身は一つもない。無責任だ。問題が発生する前に防がずに、事故が発生した後では何の意味もない」と強く批判した。さらに「被害場所が国が直接管理監督する選手村の女性ロッカールーム、大学のロッカールームで発生した。もし本当に自分の責任だと考えるなら、電灯が消えた部屋に行って調べてみる関心が必要だった。はたしてこれが他人事なのか。今回のことを契機に、管理監督の法的責任がどこまであるのか、上級の位置にいる人がどこまで責任を負わなければならないのか、よく調べなければならない」と主張した。また、「事件が明るみになると、それが早く消えることを望む人がいる。責任から逃れるためだ。そのような人がすべていなくなってこそ、このような問題が解決される」と付け加えた。

 シム・ソクヒ選手は現在2月のワールドカップと代表選抜戦を準備しながら、泰陵(テルン)選手村で練習している。大韓スケート競技連盟の関係者は、「シム・ソクヒの表情は以前よりずっと明るくなった。練習も頑張っている」と伝えた。イム弁護士は「女性として耐えなければならない追加的な被害や、加害者の報復、家族のこと考え、この事実を一人で耐え続けてきた。その身体的、精神的被害は甚大なものだ。しかし、今は多くの人々の激励と応援が力になっている」と明らかにした。

 シム・ソクヒ選手の元気な復活には大きな意味がある。選手生活も続けなければならない。イム弁護士は「シム選手がより良い競技力を発揮するためには、国民の役割が必要だ。シム選手を支持し、応援を送り、能力のある選手が自分の力量を発揮できるように励ましてほしい」と語った。

キム・チャングム記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/877719.html韓国語原文入力:2019-01-10 01:15
訳M.C