北朝鮮の金正恩(キム・ョンウン)国務委員長が1日に発表した新年の辞で、朝米首脳会談と完全な非核化への意志は明らかにしたが、解釈が必要な部分もいくつかある。今後、朝米非核化・関係正常化の交渉過程で、主要に取り上げられる可能性がある内容だ。
■「これ以上核兵器を作らず」
新年の辞で、金委員長は「我々はこれ以上核兵器を作ることも、実験することもなく、使用も拡散もしないという点について、内外に宣布し、様々な実践的措置を取ってきた」と強調した。いわゆる「4不原則」(核兵器の実験・生産・使用・拡散の中断)のうち「核兵器の生産中断」は北朝鮮がこれまで公表しなかった内容であるうえ、過去形で表現されており、いつどのように生産を中断したのかは明らかでない。
新年の辞全体の脈絡から、非核化への意志を具体的に示した部分だというが大方の意見だ。カン・ギョンファ外交部長官は1日、「完全な非核化に対する意志をより前向きかつ積極的に示したもの」だと述べた。統一研究院も2日に出した解説で、この内容を「非核化への意志と実践に対する信頼を高める重要な政治的言語行為(speech act)」だと解釈し、「(北朝鮮が)4不原則の立場を明確にすることで先制的な北朝鮮の核“凍結”措置の内容を具体化した部分」だと分析した。
「4不原則」は1992年の南北朝鮮半島非核化共同宣言に盛り込まれたが、共同宣言とは違って今回の新年の辞には核再処理施設とウラン濃縮施設関連の言及はない。これについて専門家らは、北朝鮮が両施設を“交渉の領域”として残したと分析した。昨年9月の平壌共同宣言で北朝鮮が提示した「寧辺(ヨンビョン)の核施設の廃棄」にも含まれた内容であり、朝米交渉の主な争点になる見通しだ。
■「原子力発電能力を展望性を持って造成」
金委員長が電力難解消案の一つとして「原子力発電」を挙げた部分も注目される。金委員長は「電力問題の解決に先次的な力を入れて、人民経済活性化の突破口を開くべきだ」とし、「潮水力や風力、原子力発電能力を展望性をもって造成」する必要性に言及した。
「核エネルギーの平和的利用は主権国家なら誰でも持つことができる正当な権利」というのが北朝鮮の一貫した主張だ。また、北朝鮮が国際原子力機関(IAEA)の安全措置に復帰すれば、原則的には保障される権限でもある。にもかかわらず、米国は軽水炉の燃料として使われる濃縮ウランの軍事的転用を懸念し、簡単には許可しておらず、この問題は2005年9月19日の共同声明交渉過程でも最後の争点だった。結局、9・19(6カ国協議)共同声明で6カ国協議国家らは「適切な時期に北朝鮮に対する軽水炉提供問題について話し合うことに同意」した。北朝鮮の「平和的核利用」権利を明示したわけだ。このため、金委員長の原子力発電への言及は、今後の米国と非核化交渉で「原子力の平和的利用権利」を確保するための布石とみられる。朝米関係に詳しい外交消息筋は「交渉テーブルに必ず上るだろう」と見通した。
■「新たな道」の模索
金委員長の新年の辞で最も注目された内容は、米国が一方的な制裁・圧迫政策を維持するなら、「新たな道」を模索するかもしれないとした控えめな対米警告メッセージだ。
一部では、「核・経済並進路線で復帰を示唆したもの」と解釈したが、多くの専門家は、新たな道が過去への回帰を意味するわけではないと見ている。ク・ガブ北韓大学院大学教授は「新年の辞で、4月20日の党中央委第7期3次全員会議を強調しながら並進路線の勝利を宣言したため、並進路線に復帰する可能性はない」と説明した。国家安保戦略研究院は「強硬と穏健の間に金委員長の悩みを反映」したと見ており、統一研究院は「レトリック上の背水の陣」と解釈した。米国の態度変化を求めるために言及した内容であるからこそ、「新たな道」が何なのかを具体的に明らかにしなかったと見ることもできる。一方、新年の辞で「自立経済」と「自力更生」を強調したのは、米国の制裁が強化・継続されることに備えるという意味で、“プランB”を暗示したのではないかという見通しも示されている。