本文に移動

「ベトナム虐殺参戦軍の調査文書目録を公開せよ」判決…国家情報院の上告放棄で確定

登録:2018-12-23 21:29 修正:2018-12-24 08:25
民間人虐殺関連者を調査した文書の目録 
1・2審ともに「文書目録公開せよ」判断 
「外交的理由」挙げて拒否した国家情報院 
20日の上告期限までに上告状提出せず 
「裁判所の判断を尊重し迅速に情報公開すべき」

 「ベトナム民間人虐殺関連情報を公開せよ」という裁判所の判決が、国家情報院の上告放棄により確定した。国家情報院は関連情報を直ちに公開しなければならないという声が上がっている。

 23日、裁判所によれば、訴訟当事者の国家情報院はソウル高裁行政7部(裁判長キム・ウジン)に上告期限である20日までに上告状を提出しなかったことが確認された。情報公開の取消処分が確定した場合、当該機関は関連情報公開の可否を再審査しなければならないが、以前と同じ理由を挙げて情報非公開処分を下すことはできない。行政機関が異なる理由を挙げて再び非公開処分する“便法”を使ったとしても、行政訴訟で敗れるケースが多く、関連情報を公開するケースが大部分だ。

 キム・ナムジュ弁護士(民主社会のための弁護士会・ベトナム戦民間人虐殺真相究明TF)は、ハンギョレとの通話で「1968年のフォンニィ・フォンニャット事件の調査がなされたという事実が韓国政府の公式資料を通じて公開されるのは今回が初めてだ。国家情報院は、裁判所の判決に則り関連情報を速かに公開しなければならない」と話した。

国家情報院正門=資料写真//ハンギョレ新聞社

■裁判所が受け入れなかった国家情報院の主張は?「NCND基調を維持せざるをえない」

 今年7月、ベトナム戦争当時の民間人虐殺に加担した韓国軍を調査した訊問調書が国家情報院に保管されている情況が、裁判を通じて確認された。昨年8月、民主社会のための弁護士会のイム・ジェソン弁護士(法務法人 ヘマル)は、国家情報院を相手に「(フォンニィ・フォンニャット虐殺に加担した)チェ・ヨンオン中尉ら3人を調査した後に作成した文書を公開せよ」という情報公開請求を出したが、非公開処分を受けた。ソウル行政裁判所に訴訟を起こした結果、1972年8月14日、マイクロフィルム化作業部署でこの調書などを長期保管するために、マイクロフィルム形態で撮影・保管する作業をしながら「関連文書目録」が作られた事実が明らかになった。1・2審裁判所は相次いで「関連情報を公開せよ」と判断した。

 裁判所は「外交的不利益」を理由として情報公開は困難という国家情報院の主張を受け入れなかった。国家情報院側は「(文書目録が)国家安全保障・国防・統一・外交関係などに関する事項であり、公開されれば国家の重大な利益を顕著に害する恐れがある」と主張した。情報公開法(第9条第1項第2号)は「国家安全保障・国防・統一・外交関係などに関する事項で公開される場合、国家の重大な利益を顕著に害する恐れがあると認められる情報」は非公開とすることができるとしている。

「大韓民国とベトナムの間に『ベトナム戦民間人犠牲事件』に対するいかなる合意もなされていない状況で(関連情報について)確認も否定もしないNCND(Neither Confirm Nor Deny)の基調を維持せざるをえない」

 国家情報院は、その過程で“NCND”(肯定も否定もしない)基調にも言及した。「韓国が当該事項(ベトナム民間人虐殺関連情報)の存在や真偽を外国に公式に知らせなかったり確認しないことが外交政策上の利益になる」ということだ。国家情報院側の説明によれば、ベトナム政府が謝罪や賠償を要求しても、韓国政府がそれにどのように対処するのか“ロードマップ”自体が用意されていない状態だ。だが、2審裁判所は次の通り明らかにし、国家情報院側の主張には理由がないと見た。「大韓民国政府とベトナム政府の間で民間人虐殺問題が外交イシューに浮上しておらず、ベトナム政府が公式に大韓民国政府に意思を聞くなどの意志を表明していない。大韓民国の外交的交渉力に悪影響を及ぼすとは推測判断しがたい」

今月22日、ソウル市麻浦区の文化備蓄基地で開かれたベトナム戦争当時民間人虐殺真相究明のための「市民平和法廷」に原告のグエン・ティ・タン氏(前列左側と右側の同名異人)が参加している=パク・ジョンシク記者//ハンギョレ新聞社

■ 「ベトナム民間人虐殺調査」政府公式認定・真相究明の端緒

 「フォンニィ・フォンニャット民間人虐殺事件」は、1968年2月12日、ベトナム戦争に投入された韓国軍青龍部隊(海兵第2旅団)がベトナム中部のクアンナム省フォンニィ・フォンニャット村の住民74人を殺害した事件だ。当時参戦軍人だったチェ・ヨンオン中尉(当時、海兵浦項(ポハン)上陸戦基地司令部訓練校長管理隊射撃長補佐官)、イ・サンウ中尉(慶尚南道鎮海(チンヘ)海兵学校区隊長)、キム・キドン中尉(浦項パウエル特殊教育隊勤務)らを調査した結果に基づいて、訊問調書などが作成された。1972年8月14日、マイクロフィルム化作業部署でこの調書などを長期保管するためにマイクロフィルム形態で撮影・保管する作業をしながら「関連文書目録」も作られた。

 この文書目録が公開される場合、政府機関がフォンニィ・フォンニャット事件に関連した調査を進めたという事実を初めて公式に認めるかたちになる。チェ中尉ら3人は、2000年5月、ハンギョレ21を通じて「1969年に中央情報部で民間人虐殺事件調査を受けた」と初めて証言したが、情報当局は沈黙した経緯がある。ベトナム民間人虐殺の真相究明と国家賠償請求も力を得るものと見られる。文書を通じて調査対象者、調査範囲、調査方向などを把握し、陳述調書の他に別の文書が作成されたのか追加情報公開請求に出る可能性もある。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が今年3月、ベトナムを国賓訪問し「私たちの心に残っている両国間の不幸な歴史について遺憾の意を表わす」と明らかにしたが、韓国政府が韓国軍のベトナム民間人虐殺事実を認め、これについて公式に謝ったことはない。韓国軍は、1964年9月から1972年までに31万2千人余りをベトナムに派兵したが、この期間に韓国軍によるベトナム民間人虐殺は80件余り、被害者数は9千人に達すると推測される。

コ・ハンソル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/875483.html韓国語原文入力:2018-12-23 15:22
訳J.S

関連記事