#1.
2014年1月13日早朝6時ごろ、京畿道高陽市(コヤンシ)のある住居用ビニールハウスで火災が発生し、家族4人が死亡する事件が発生した。このビニールハウスは、Pさん(77)と当時97歳だったPさんの義母、妻のJさん(65)、長男(40)と次男(37)が一緒に寝ていたところだった。火災が起きるとP氏は水道水で火を消そうとしたが、氷点下13度の天気で水道管が凍りつき、火を鎮めることができなかった。ビニールハウスのほとんどは火に弱い素材のサンドイッチパネルで骨組みを作るため、火が速く広がる。この事故で、中風を患って体が不自由な妻と高齢の義母、祖母と母親を救おうとした2人の息子が死亡し、Pさん一人だけが生き残った。警察と消防当局は、寒さを防ごうとつけておいた石油ボイラー周辺で火災が始まったものと推定している。
#2.
昨年12月15日夜中2時ごろ、釜山沙上区(ササング)のある工業社のコンテナで火災が発生し、このコンテナに住んでいたベトナム人移住労働者であるBさん(35)が死亡した。コンテナは高周波装備を生産する工業会社のコンテナで、野外トイレの建物の2階に置かれていた。警察と消防当局は、火災の有力な原因の一つとして電気カーペットを指摘した。温度計が氷点下を下回る寒さが続き、Bさんが外壁の隙間から入ってくる寒風を防ごうと電気カーペットを過度に使用して火事が発生したのだ。まともな暖房施設や消防施設も整えられなかったこの場所で、Bさんは電気カーペットで冬を越そうとして被害に遭った。移住労働者の住居権改善ネットワークは当時、「移住労働者が韓国で働く間、安全が保障された場所で過ごせるよう最小限の基準を設けることは、国家として行うべき最小限の義務だ」とし「我々みんなに、つらい労働を終えてゆっくり休める『人間の家』が必要だ」と話した。
今月9日に発生したソウル鍾路区観水洞(クァンスドン)のクギル考試院火災事件を契機に、「非住宅火災」を懸念する声が高まっている。非住宅とは、人が住んでいるが住宅とは言えない所をいう。2009年、韓国都市研究所が国家人権委員会の依頼を受けて提出した「非住宅居住者の人権状況実態調査」によると、非住宅は「社会的に住宅として認められないほどの劣悪な場所」で、ビニールハウス、長屋の小部屋、宿屋など簡易宿泊所、考試院(公務員試験準備生などのための簡易宿所)、コンテナ、バラックなどがこれに該当する。韓国都市研究所は報告書で「(非住宅居住者は)居住地の設備が安全ではなく、過度に多くの人が集中して生活しているため、普遍的に火災に対する心配をしている」と説明した。
非住宅居住者は少なくない水準だ。2015年の統計庁の人口住宅総調査(センサス)によると、「住宅以外のその他の居所」に住む世帯が39万1245世帯に達することが分かった。2010年のセンサスで同じ世帯数が12万8675世帯だったことと比べると、5年間で3倍以上増えた数値だ。先月24日、国土交通部も統計庁などとともに昨年5月から今年6月までに実施した「住宅以外の居所住居の実態調査」結果を発表し、「非住宅に居住する人は37万世帯と推定される」と発表した。
■非住宅世帯40万、でも安全死角地帯が
少なくとも40万世帯が非住宅に住んでいることが明らかになったが、非住宅は常に安全の死角地帯に置かれている。建物が老朽化したり火に燃えやすい素材で作られた非住宅は、その特性上火災に弱いが、安全関連法の適用を受けないケースが多く、まともな火災対策がなされていない所が大半だからだ。1983年に設立申告を行ったクギル考試院は、1992年に改正された「火災予防、消防施設の設置・維持及び安全管理に関する法律」の適用対象ではなかった。同法は、延べ面積600平方メートル以上の複合建築物に消防安全管理者の選任を義務付けている。しかし、クギル考試院の建物は延べ面積が614平方メートルであるにもかかわらず、法律が遡って適用されず、消防安全管理者を選任する義務がなかった。
スプリンクラーの設置も同じだった。クギル考試院は2007年に建設されたもので「考試院にもスプリンクラーの設置を義務付けるべきだ」という規定に変わった2009年7月、建築法施行令の適用を受けなかった。2015年ソウル市の考試院の簡易スプリンクラー設置支援事業に選定され、スプリンクラーを設置することもできたが、建物の持ち主の反対で設置されなかった。当該事業は、ソウル市がスプリンクラーを設置する代わりに建物の持ち主が「5年間賃貸料を凍結しなければならない」という条件を掲げている。
クギル考試院だけの話ではない。今年初めに発生したソウル鍾路区鐘路5街の「ソウル荘旅館」の火災も、クギル考試院の惨事と似ている。この旅館によく泊まっていたYさん(53)は1月20日早朝3時ごろ、「旅館の主が性風俗女性を呼んでくれなかった」という理由で旅館に火をつけ、この事故で5人が命を落とした。旅館もやはり老朽化した建物である上、適当な消防装置がなかった。1964年に建てられたこの旅館は、木造のドアや燃えやすい布団などで火事が起こると瞬時に焼ける構造だったが、スプリンクラーなどの火災に備えた装備はほとんどなかった。延べ面積400平方メートル以上の建物はスプリンクラー、警報ベルなどを義務的に設置しなければならないが、この旅館は延べ面積103.34平方メートルで規模が小さく、スプリンクラーの義務設置の対象ではなかった。
■「今年の火災死者の3人に1人が非住宅での死亡者」
市民社会団体は「考試院、旅館など住居貧困層の居住施設に対する火災安全点検と管理対策作りが急がれる」と声を高めている。住居権ネットワークなどの市民社会団体は10日、クギル考試院前で記者会見を開き「消防庁の火災統計現況によると、今年の火災死者306人のうち96人が考試院、長屋、宿屋など非住宅で死亡したことが確認された」とし、「安定した家がなく非住宅を住まいとする人々が脆弱な安全対策のために犠牲になり続けている」と指摘した。
同団体は国土交通部が先月24日に発表した「脆弱階層(低所得、就職困難者層)・高齢者の住居支援策」も十分でないと批判した。国土部は今年下半期に老朽化した考試院を買い入れて一人用の小型住宅にリモデリングし、低所得世帯に供給するという「考試院買入型公共リモデリング事業」を実施する計画だと明らかにした。これに対し、「ホームレス行動」常任活動家のイ・ドヒョン氏は「政府の対策によると、考試院にいる住民の一部だけが買入賃貸住宅に入ることができる」とし、「一部を買入賃貸住宅へと移転するのは容易な対策だが、現在の考試院の問題の全般的な対策ではない」とは安した。貧困社会連帯のイ・ウォンホ執行委員長は「(当該事業は)モデル事業という名を使っている。モデル事業の結果によって今後推進するかどうかを決めるという意味だ」と話した。
鐘路住居福祉センターのユン・ジミンチーム長は、「(考試院などは)住宅法上、住居住宅とみなさないため、政府ではかなり管理がずさんになっている。地方自治体でも管理・監督する義務もなく、消防署だけが消防安全の次元で点検するレベル」だとし「事実上、ここが住居空間の生活空間として使われていることを政府が認知し、ここに住む人たちが最低住居基準に達しないことがないよう、家として供給する政策が必要だ」と指摘した。