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再開された「強制動員」の下級審…「消滅時効」の判断はいかに

登録:2018-11-12 02:53 修正:2018-11-12 11:16

 先月30日、最高裁判所(大法院)が新日鉄住金(旧新日本製鉄)に強制動員の被害者らへの1億ウォンの賠償を命じる判決を言い渡してから、係属中の強制動員下級審裁判が再開されている。今月23日だけでも、株式会社不二越(旧不二越鋼材工業)や新日鉄住金などに対する損害賠償訴訟3件の弁論期日がソウル高裁で相次いで行われる。争点は「消滅時効」だ。一部の裁判部は消滅時効の判断を理由に、「下級審の宣告を延期すべき」という戦犯企業の主張を受け入れず、続々と判決期日を決めている。消滅時効に対する下級審裁判部の判断が注目される。

■2005年・2012年・2018年…消滅時効の起算点はいつ?

 民法では、被害者が違法行為による損害を被った日から3年以内に損害賠償を請求しなければ、その権利の時効は消滅すると見なされる。強制動員被害者の場合、違法行為による損害を認識した日をいつと見るのか、すなわち消滅時効の起算点に対する解釈が分かれている。2012年5月24日、原告勝訴の趣旨の判決を下し、ソウル高等裁判所に事件を差し戻した最高裁の判断を消滅時効の起算点とすると、2015年5月で消滅時効が終了する。2005年8月の韓日協定関連官民共同委員会の発表を起点とみるべきという解釈もあるが、その場合は時効が2008年8月に終了する。

 しかし、2012年と2005年を消滅時効の起算点と見なすのは困難という意見もある。2005年以降、強制動員被害者らが訴訟を起こしたにもかかわらず棄却されており、2012年の最高裁の判決は確定判決ではなかったからだ。先月30日の最高裁の確定判決を消滅時効の起算点にすべきだという主張が支持を得ているのもそのためだ。強制動員の被害者の代理人を務めるキム・セウン弁護士(法務法人ハマル)は「10月30日の最高裁の確定判決によって強制動員の被害者たちは初めて損害賠償請求権が韓日請求権協定によって消滅していないことを知ったと見るべきだ」と説明した。この場合、消滅時効は2021年10月30日までになる。ソウル高裁やソウル中央地裁など下級審で審理中の12件の裁判で、損害賠償請求の権利が十分に認められる。強制動員被害者の追加訴訟も可能になる。

強制動員の被害者たちが新日本製鉄(現新日鉄住金)を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、13年8カ月ぶりに原告勝訴判決が下された10月30日午後、強制動員の被害者イ・チュンシク氏(94)が記者会見で感想を述べながら涙を流している=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

■「国家による反倫理的犯罪には消滅時効を設けてはならない」

 「被害者の損害賠償請求権利の行使に消滅時効を設けてはならない」という声も高まっている。民法上、信義誠実の原則(権利の行使と義務の履行は信義に従って誠実に行わなければならない)に基づき、被害者の損害賠償請求に時効を適用してはならないという趣旨だ。民主社会のための弁護士会のイ・サンヒ弁護士は「反人倫的であり、公権力による人権侵害事件に、消滅時効を適用すること自体が問題がある」と指摘した。

 昨年8月、光州(クァンジュ)地方裁判所は勤労挺身隊被害者の訴訟で、原告勝訴趣旨の判決を下し、消滅時効の完成を主張する三菱重工業を叱責したことがある。光州地方裁判所民事1単独のキム・ヒョンジョン部長判事は「訴訟を起こすまで、原告たちには客観的に権利を事実上行使できない障害事由があった」と判断した。続いて次のように付け加えた。「70年が過ぎた今でも責任を否定する被告が、消滅時効の完成を主張し、損害賠償責任の履行を断ることは、社会秩序を維持し、法律関係の不確実性に対処するために導入された消滅時効制度の趣旨に合致しない」

 勤労挺身隊被害者の訴訟を代理してきたイ・サンガプ弁護士は「国際法的に、国家の反人道的犯罪行為の場合、消滅時効を適用してはならないという主張が一般的だ。強制動員のような国家による人権侵害事件に消滅時効の一般論理を適用してはならない」と話した。2005年12月に国連総会が採択したガイドライン(重大な国際人権法違反及び深刻な国際人道法違反の被害者のための救済と補償措置を受ける権利についての基本原則とガイドライン)は、「国際法上犯罪を構成する重大な国際人権法違反と深刻な国際人道法違反には時効が適用されない」と規定している。

最高裁判所//ハンギョレ新聞社

■戦犯企業、最高裁判決まで判決の延期求めたが…

 下級審で係属中の裁判が再開されたことで、判決公判も相次いで予定されている。一部の日本企業は、下級審の裁判部で消滅時効を判断せず、最高裁の全員合議体の判断まで待つべきと主張したが、認められなかった。

 今月8日、ソウル中央地裁民事2部(裁判長キム・ハンソン)の審理で、日本の戦犯企業の新日鉄住金に対する強制動員被害者の民事訴訟控訴審の弁論期日が開かれた。今年1月に判決期日が決まったものの見送られてから10カ月ぶりのことだ。新日鉄住金側の弁護人は「消滅時効」というカードを切り出した。先月30日の最高裁判所の強制動員の上告審が消滅時効について明確な判断を下さなかったため、最高裁がほかの強制動員裁判で消滅時効を判断するまで、裁判の延期を要請したのだ。

 現在、勤労挺身隊被害者のヤン・グムドク氏ら5人が三菱重工業を相手取って起こした損害賠償訴訟が、最高裁全員合議体に係属中だ。新日鉄住金側は、事件が2審が始まってから2年以上経過した今月7日、初めて準備書面を裁判所に提出した。準備書面には「三菱重工業事件と関連し、最高裁が被告の消滅時効の成立主張を審理するという」「全員合議体判決で争点に対する判断が行われるものとみられる」という主張が含まれた。これに対し、強制動員の被害者側のキム・セウン弁護士は「被告は原審と同じ主張を繰り返している。控訴が提起されて2年が経っているだけに、最高決を待つのではなく、弁論を終わらせるべきだ」と反論した。新日鉄住金側の主張通りなら、高齢の強制動員被害者らは最高裁の判断まで、再び待たされることになる。

 裁判所は新日鉄住金側の主張を受け入れなかった。「最高裁の判決がいつ言い渡されるか分からない。今回の裁判部が検討し、判決を言い渡す」とし、今月29日午後2時に判決公判を開くことを決めた。三菱重工業側も光州地裁で開かれた控訴審で、「原告が違うだけで内容は同じ事件が最高裁に係属中だ。その判決の結果を見てから判断してほしい」と要求したが、裁判部はこれを受け入れなかった。「国際送達で時間が遅延し、1審判決から1年以上経過した」とし、12月5日に判決を言い渡すことを明らかにした。三菱を相手取った別の訴訟も14日、控訴審の判決を控えている。

コ・ハンソル記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/society/society_general/869744.html韓国語原文入力:2018-11-11 21:57
訳H.J

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