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[コラム]強制徴用被害補償と韓日関係

登録:2018-11-06 21:35 修正:2018-11-07 07:30
日帝強制徴用被害者が、日本の新日本製鉄(現新日鉄住金)を相手に出した損害賠償請求訴訟で13年8カ月ぶりに被害者の勝訴判決が下された30日午後、強制徴用被害者イ・チュンシクさん(94)がソウル市瑞草区瑞草洞の大法院から出てきている=キム・ミョンジン記者//ハンギョレ新聞社

 河野太郎外相が最近、最高裁(大法院)の強制徴用賠償判決に対して「韓国政府が補償しろ」と述べた。1965年韓日請求権協定で韓国政府が強制徴用被害者の補償と賠償の責任を負うことにし、無償3億ドル、有償2億ドルを受け取ったので自分で解決しろという意味だ。目新しい論理ではない。日本が「個人請求権は請求権協定ですべて解決済みだ」という既存の主張を守っている時から予告されていた論理的帰結だ。

 しかし、こうした主張は最高裁判決を誤って理解したものだ。最高裁判決は、強制徴用が「違法」であるということに重点が置かれている。請求権協定が違法行為まで包括するわけではないという意味だ。違法な強制徴用で精神的身体的被害が生じたので、慰謝料を支払わなければならないということで、この慰謝料は1965年の請求権協定の5億ドルには含まれていないということだ。今回の訴訟に参加したキム・セウン弁護士は「韓国政府が代わりに支払うことはできない。例えそのようにしても、加害者の賠償責任は免責されない」と話した。河野外相の主張は、最高裁判決に拘束されざるをえない韓国政府に対して「負えない責任」を負えということであるので、困ったことこの上ない。

 日本がこれまで請求権協定を盾にして、韓国人の請求権をすべて排斥してきたことはよく知られた事実だ。しかし、日本が当初から個人請求権を否定していたわけではない。1990年代までは、外交保護権のみが消滅し、個人請求権は生きているという立場だった。柳井俊二・当時外務省条約局長は、1991年8月参議院で「外交保護権を相互に放棄したものであり、個人の請求権それ自体を国内法的意味で消滅させたのではない」と答えた。こうした立場が2000年代に入り「個人請求権の問題は韓日請求権協定で最終的に解決された」に変わる。

 当初、日本が請求権の消滅を否定したのは、1951年9月のサンフランシスコ平和条約や1956年10月の日ソ共同宣言にも「請求権相互放棄」条項が入っていた事情と関連がある。日本国内の原爆被害者と戦後シベリア抑留日本人たちがこの条項を根拠に日本政府に対して訴訟を起こした。日本の弁護士である山本晴太氏は、日本政府が日本人被害者の補償請求時には「条約で請求権が消滅したわけではない」と言い逃れ、外国人被害者が訴訟すると「条約ですべて解決済み」として回避したと話した。

パク・ビョンス論説委員//ハンギョレ新聞社

 韓国政府の立場も一貫したものではなかった。当初の立場は、1965年韓日請求権協定で個人請求権が消滅したということだった。朴正煕(パク・チョンヒ)政府は1975年に一歩遅れて徴用被害死亡者の遺族に1人当り30万ウォンずつ計91億ウォンを補償した。しかし、1990年代に入り徴用訴訟が政治争点になり「個人請求権は生きている」に政府の立場が変わる。1995年9月、コン・ノミョン当時外相は国会で「個人請求権については政府が認めている」と話した。そうするうちに盧武鉉(ノ・ムヒョン)政府の時の2005年8月「慰安婦など違法行為、サハリン同胞、原爆被害者の三つを除いては請求権協定で解決された」という立場を整理した。そして強制徴用被害者と遺族に最高2千万ウォンずつを補償して、6万6985人に総額5400億ウォンが支給された。

 日本では「韓国がゴールポストを動かした」という批判が出ているという。しかし、日本政府も我田引水式解釈から自由でない。法理論争で解決方法を探す段階は過ぎたようだ。日本人弁護士93人は5日、声明を出して「徴用被害者問題の本質は人権問題」と規定した。人権を侵害された被害者が、受け入れられる方法を見つけること以外には答がない。

パク・ビョンス論説委員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/opinion/column/869092.html韓国語原文入力:2018-11-06 19:12
訳J.S

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