北朝鮮官営の「朝鮮中央通信」が、「関係改善と制裁は両立できない対極」だとし、「経済・核武力建設の並進路線」を再推進する問題を考慮する余地もあるという主張を盛り込んだ寄稿文を公開した。今月7~8日に米ニューヨークで開催される予定の朝米高官級会談を控え、米国に制裁関連の態度の変化を促すための“戦略”の一環とみられる。
北朝鮮の外務省米国研究所のクォン・ジョングン所長は「4月に我が国が採択した経済建設総集中路線にもう一つを加え、『並進』という言葉が再び蘇る可能性もあり、こうした路線の変化が慎重に検討される可能性もある」という個人論評を発表したと、朝鮮中央通信が2日午後報じた。もちろん「米国が我々の再三の要求をしっかりと耳を傾けず、いかなる態度変化も見せずに傲慢な行動を取り続けるならば」という前提が付けられている。
4月20日の労働党全員会議で、「経済・核並進路線」の完了が決まり、経済建設総集中の路線が採択されて以来、北朝鮮高官の発言や主要メディアに「並進路線の再考慮」を言及した内容が登場したのは初めてで注目に値する。論理を極限まで突き詰めると、並進路線とは、金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ米大統領に対して、公に約束した「完全な非核化」に向けた努力の撤回を意味するからだ。
クォン所長の論評もこうした深刻な波紋を意識したかのように、「並進路線の再考慮」の主張の根拠を、「変わったのは我々だけで、周辺環境は何も変わっていない」という「民心の声」から見いだしている。金委員長を含む党・政・軍の考えではなく、「民心」にそう映るほど、米国の態度に大きく失望しているため、「今度は米国が相応の措置を取らなければならない」ということだ。北朝鮮の事情に詳しい消息筋は「金委員長にとっては非核化に関して内部を説得することが重要なのに、制裁問題に関連した米国の態度が頑強で、相当頭を悩ませているだろう」とし、「今回の論評の内容は、朝米高官会談を控え、そのような苦悩を荒っぽく表したもの」だと指摘した。
「労働新聞」は1日付で、金正恩委員長が元山(ウォンサン)葛麻海岸観光地区の建設場を訪れ、「敵対勢力が人民の福利増進と発展を妨げ、我々を変化させ屈服させようと、愚かにも悪辣な制裁策動に狂奔している」と述べたと報じた。
こうした事情からすると、高官級会談で北朝鮮側が「制裁問題」を強く提起する可能性がある。米国の反応と共に、北朝鮮側が「制裁の緩和」を主張しながら、米国側に何を提示するかも重要だ。元政府高官は「今回の会談は進展のための談判」だとし、「北朝鮮側も折衝の必要性を知っているだろう」と話した。これについて、マイク・ポンペオ米国務長官が1日、「検証が最も重要だ」と繰り返し強調したことに留意する必要がある。外交安保分野の高官は「ポンペオ長官が『完全な非核化』より『検証』に焦点を合わせて強調したのは、以前よりも一歩前進したといえる」と指摘した。寧辺(ヨンビョン)の核施設の検証を媒介に、朝米が合意を引き出せるかもしれないという希望的観測だ。
複数の外交筋によると、朝米高官会談は7日にニューヨークでポンペオ長官主催の晩餐会、8日に本格的に会談を行う日程で進められる見込みだ。会談に臨む北朝鮮側の人物としては、「カウンターパートである『ナンバー2』と一連の対話をする」というポンペオ長官の発言から、金英哲(キム・ヨンチョル)労働党中央委副委員長が有力視されている。