スティーブン・ビーガン米国務省北朝鮮政策特別代表が29日、大統領府でイム・ジョンソク秘書室長と1時間にわたって会談し、南北協力事業について韓米間の調整を行った。ビーガン代表はこれに先立ち、カン・ギョンファ外交部長官とイ・ドフン朝鮮半島平和交渉本部長とも相次いで会談し、朝米関係はもとより南北関係の進展においても「緊密な協力」を約束した。
米国側の要請で実現したイム室長とビーガン代表の会談は、それ自体が異例のことだ。イム室長が南北首脳宣言履行推進委員会委員長を兼任しているとはいえ、朝鮮半島の非核化と平和定着など外交・安保に関する事案は、チョン・ウィヨン国家安保室長の主務であるからだ。大統領府は「イム室長はビーガン代表に朝米会談を成功的に導いてほしいと要請しており、ビーガン代表は韓国政府の支援を要請した」としながらも、具体的な会談内容については発言を控えた。ただし、大統領府関係者は、今回の訪韓が「朝米実務接触に関するものよりも、韓米間の調整の側面が強い」と話しており、南北鉄道・道路連結や開城(ケソン)工業団地企業関係者の施設点検訪問など、南北協力事業をめぐる韓米間の意見の相違を調整するための協議が主な内容となったものと見られる。ビーガン代表が先週、ワシントンでイ・ドフン本部長と協議を行ってから、1週間後に訪韓した背景には、米政府のこのような気流があると思われる。
一方、ビーガン代表は同日午前、カン・ギョンファ長官と、予定されていた30分より長い45分間にわたり面会した。カン長官はビーガン代表から朝米高官級会談や実務会談など、朝米関係に関する進展事項に関する内容を聞いただけでなく、南北関係に関する進展事項について意見を交わすことにもかなりの時間を割き、韓米両国の緊密な疎通と協力を求めた。韓米間の意見交換が必要な事案のうち、急がれる南北協力事業としては、開城工業団地の企業家の訪朝、鉄道・道路連結の問題などがある。韓米は南北京義線・東海線の鉄道連結の共同調査と年内着工式を含む南北協力事業と関連し、国連安全保障理事会に制裁免除申請をする問題など、韓米間協力にかなりの比重を置いているとされる。
ビーガン代表は30日午後、チョン・ウィヨン国家安保室長やチョ・ミョンギュン統一部長官との面会でも、似たような内容の協議を続ける見通しだ。これについて、チョ・ミョンギュン長官は同日、国会外交統一委員会の統一部に対する国政監査に出席し、京義線鉄道の共同調査問題に関して「米国が南北事業に反対すると表現するほどではない。かなり協力的であり、韓米が引き続き議論していく段階だ」だとしながらも、「韓米の間には部分的に意見がやや異なるところがある」と述べた。
ビーガン代表は「非核化」問題に関し、イ・ドフン本部長との会談で、「北朝鮮の『最終的かつ完全に検証された非核化』(FFVD)という目標が達成可能な範囲内にあると完全に確信している」と述べた。最近、朝米交渉が膠着状態に陥ったのではないかという懸念の声が上がっている状況で、朝米実務会談の当事者が交渉に対する期待を裏付けたわけだ。