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[インタビュー]「平和持続するためには南北交流・協力まとめる法体系設けるべき」

登録:2018-10-22 06:52 修正:2018-10-24 17:01
平和共同体法制フォーラムのイ・ホンフン代表
イ・ホンフン最高裁司法発展委員長が今月1日午前、ソウル三成洞の事務室でインタビューをしている=パク・ジョンシク)記者//ハンギョレ新聞社

 北朝鮮にも弁護士がいる。北朝鮮の社会主義憲法は「裁判は公開し、被訴者の弁護権を保障する」と定めている。北朝鮮は1993年、30カ条文の弁護士法を制定した。韓国の大韓弁護士協会に当たる「朝鮮弁護士会」もある。ただし、弁護士の役割には違いがある。北朝鮮の弁護士法第1条は「弁護士は機関や企業所、団体および公民の法的権利と利益を保護し、法の正確な執行を保障するのに貢献する」と規定している。「基本的な人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」という韓国の弁護士法と対照をなしている。

 「北側の法曹界の事情についてはあまりわかりません。あちらにも法曹界というものがあると思いますが。北朝鮮の憲法や法令に関する情報はありますが、法曹人との交流はありません。だからこそ、会わなければなりません」

 イ・ホンフン元最高裁判事は、進展は遅いが、以前のように簡単に後戻りしない最近の南北関係を嬉しく思っている。2011年に最高裁判事から退いた彼は翌年、法務法人「ファウ」の公益委員会を発足させ、2014年にファウ公益財団の初代理事長を務めた。昨年12月にはファウ公益財団の顧問弁護士となり一線を退いたが、今年1月には「国民と共にする司法発展委員会」の委員長を務め、司法改革の枠組みを作っている。そのような中、南北交流・協力を法律的に支援するための「平和共同体法制フォーラム」を今年5月に立ち上げた。法制フォーラムの代表を務めるイ元最高裁判事を今月1日、ソウル江南のASEMタワーにあるファウ公益財団の会議室で会った。

 「4月の南北首脳会談以前、昨年12月に法曹人と民間団体の会合で、南北の法制交流と協力を通じて朝鮮半島の平和定着と共同体統合に寄与することで意見が一致しました。その場で『南北交流協力法』の改正案を発表しました」。彼が「平和共同体の法制」の必要性を痛感したきっかけは、2016年2月の開城工団の閉鎖だった。「政治的統一を論じる前に、平和という価値と共同体の統合に注目しなければなりません。そのような価値に対する社会的合意が欠けた統一論議は無意味であり、時には危険です。一時的な平和ではなく、安定的で持続的な平和体制を目指すなら、交流と協力の現場を一つにまとめる方法と制度作りが不可欠です」

 彼は法服を着ていた時代、国家保安法違反事件などで前向きな判決を多数下した。そのような経験があるからこそ、南北関係の質的変化に対する社会的合意を引き出すのが容易ではないことを、誰よりもよく知っている。「だから交流して話を聞くのが、なにより重要です。北朝鮮にも弁護人や検察、裁判所があります。金日成大学に法学部もあります。対話のパートナーをどこにするのかが重要なのに、北朝鮮の事情に詳しい人がいません」

 「よく分からない」と言いながらも、もどかしい様子ではなかった。法制フォーラムには“交流・協力の先輩”である民間団体と“統一の先輩”のドイツのコンラッド・アデナワー財団韓国事務所が参加している。「平和と共同体を支える法制づくりのためには、交流協力の現場にいた方々の経験とビジョンが何よりも大事な資産です。ドイツの統一過程も我々にとって依然として重要な参考書です」

「法制交流で平和に寄与」目指し5月に発足  
「南北法曹人・学者の出会いを推進し  
北朝鮮の法律論文の紹介・討論会など計画」 
 
最高裁判事を退任した後、公益財団を率いた経験も  
判事時代、国家保安法などに対し前向きな判決  
「国民と共にする司法発展委員会」の委員長も

 法律家でもあるアデナワー財団のステファン・ザムゼ韓国事務所所長は最近、北朝鮮を2度訪問した。「初めは北朝鮮の裁判所側と接触し、2回目は金日成総合大学側と会ったそうです。南北の法曹人と学者らが会って意見を交わす機会があることを期待しています。セミナーの場所は、北朝鮮や韓国、第3国のどこでもいいです」

 法曹関係者の中には、以前から北朝鮮法制や統一法制、南北交流協力法制、北朝鮮の人権などに関心を持って研究してきた人が多い。南北の法制は、体制が違うだけに、同一の地点を探すのが難しい。「北朝鮮が今後、国際社会と経済協力に乗り出すためには、法体系も変えなければなりませんが、わがフォーラムにはそのような支援ができると思います」。彼は南北の法律が衝突する問題について懸念しているようだった。「どちらか一方の体制と法制を強いることはできません。それでも道はあります。開城工業団地を初めて運営する際、南北が膝を突き合わせて法令を作っていったように、会って交流・協力過程で現れる問題点を先に議論しなければなりません」。彼は「南北関係法制ジャーナル」を発刊し、北朝鮮側の法律論文を紹介して討論する案を考えている。

 法制フォーラムは、交流・協力が集中する経済分野の法的争点と経済制裁問題などをテーマに討論会を準備している。「北側を利用の対象と見るのは危険です。経済協力も相互に対等なパートナーとして共に歩いてこそ、真の信頼関係を構築できます」。

 法制フォーラムは法人化も進めている。「政権が変わると、それまでの基調や国際環境の変化に伴ってようやく築いてきた南北の信頼関係が崩れたこともありました。フォーラムは、このような不安定な関係を克服するため、法律と制度の整備を通じて南北合意を強固にし、予測可能性を高めることを目指します」。これにはハム・ボヒョン、ホン・ユジン(ファウ公益財団)弁護士やソン・ユンジョン(法務法人パルン)、キム・グァンフン(法務法人ドンイン)弁護士など、若い公益弁護士も力を合わせている。

キム・ナムイル、コ・ハンソル記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr)
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/866725.html韓国語原文入力:2018-10-21 20:44
訳H.J

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