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[インタビュー]「金正恩・トランプが再会するには互いに“ビッグカード”出すべき」

登録:2018-10-01 10:29 修正:2018-10-01 11:59
平壌会談に3回同行したムン・ジョンイン特別補佐官

平壌会談に3回同行したムン・ジョンイン特別補佐官  

金正恩「退行はない、結果を作らなければ」 
「寧辺核施設廃棄」大きな提案をしたが  
米、核弾頭・ICBMの譲歩も望む  
相応措置であるため大きなインセンティブを打ち出すべき  

ちゃんとした核査察のために北朝鮮の協力が必要  
終戦宣言が信頼構築の試金石に  
文大統領、朝鮮半島の平和に包括的アプローチ  
「平壌会談」は正常な南北関係を見せた

ムン・ジョンイン大統領統一外交安保特別補佐官が28日午後、ソウル政府ソウル庁舎昌成洞別館の事務室でインタビューに答えている=パク・ジョンシク記者

 「2回目の朝米首脳会談が実現するためには、ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長ともに“ビッグカード”(大きな札)を使わなければならない。“検証原理主義者”たちが主張する逐次方式ではビッグディール(大きな取引)を実現するのは難しい」

 ムン・ジョンイン大統領統一外交安保特別補佐官は「金委員長は(文在寅大統領との平壌首脳会談で「可能な限り早い時期に完全な非核化を終え、経済発展に集中したい」とし)明確に非核化を急ぐと述べた。彼に相応する(米国側の)大きなインセンティブがなければならない。そのような点で戦略的思考を変えなければならない」とし、このように述べた。

 平壌首脳会談に特別随行員として同行したムン特補は18日、木欄館の晩餐の時に金委員長が「私たちは多くの困難を越えてここまで来ました。ここで退行はあり得ません。結果を作り出さねばなりません」と重ねて強調したと伝えた。

 ムン特補のインタビューは先月28日午後、政府ソウル庁舎昌成洞(チャンソンドン)別館の特別補佐官事務室で1時間30分の間行われた。

ー平壌会談とワシントン韓米首脳会談前後の朝鮮半島情勢はどう違うか。

 「平壌会談が反転の分水嶺を作った。朝鮮半島情勢を後押しする3つの軸、すなわち南北、韓米、朝米関係が好循環するきっかけを作った。マイク・ポンペオ米国務長官の第4回訪朝のキャンセル、米中通商摩擦による「中国の役割無力化」で、予測しがたかった朝鮮半島情勢の乱気流をかなり部分払いのけた。トランプ大統領が2回目の朝米首脳会談をすると発表し、金正恩委員長を連日高く評価している。韓米関係も近くなった。トランプ大統領は、自由貿易協定(FTA)改正案に快く署名し、文大統領が要請した韓国自動車関税の免除についても陪席者に「検討してみるように」と指示した。"

ー2回目の朝米首脳会談が実現するために、追加で行われるべき事は何か。

 「すぐにスティーブン・ビーガン米対北朝鮮政策特別代表と北朝鮮のチェ・ソンヒ外務次官の『オーストリア・ウィーン会談』が活性化され、進展されなければならない。そしてポンペオの第4回訪朝が行われなければならない。ポンペオの訪朝が実現すれば、朝米の間に“ビッグディール”がなければならない。そうでないとトランプ大統領が金委員長に会うのは難しい。終戦宣言一つだけするというのは、米国国内世論として政治的に受け入れるのは非常に難しい。

 金委員長が(米国の相応措置を前提に)寧辺(ヨンビョン)核施設を永久廃棄処分すると述べたのは、大きな提案だ。核兵器専門家のジークフリード・ヘッカー米スタンフォード大学名誉教授が指摘したとおり、寧辺はプルトニウムと高濃縮ウラン生産施設から核専門家養成大学に至るまで、北朝鮮の核開発の中核拠点だ。米国はそれに加えて核弾頭と大陸間弾道ミサイルに関連した可視的な譲歩を望むだろう。ならば、米国がどのような相応措置を取ることができるかが重要だ。例えば、連絡事務所の設置、国交正常化交渉の開始、終戦宣言採択、国連安全保障理事会の対北朝鮮制裁の緩和の決議など、一連の動きがなければならない。そうしてこそ北朝鮮ももっと動けるだろう」

ー朝米は6・12首脳会談後、「申告対終戦宣言」の構図で意見の隔たりを見せてきた。平壌とワシントン会談を経て、このフレームに変化があるか。

 「ヘッカー教授が27日、延世大学の特別講義で強調した内容を想起する必要がある。彼は相互信頼のない状況で申告・検証に執着すれば、袋小路に追い込まれるだろうと懸念した。北朝鮮が米国を信じられなければ核兵器・核物質・核施設の完全なリスト(名簿)を出すのは難しいと見た。たとえ完全なリストを出しても、米国の方で北朝鮮に対する信頼がなければ『明らかにごまかしがあるだろう』と考えるだろう。状況がこうなので、北朝鮮の寧辺核施設の永久廃棄の提案を受け入れ、まず閉鎖作業を行い、その過程で積み上げた信頼を動力に申告と査察問題も解決できるというのがヘッカー教授の提案だ。さらに、彼は申告・検証・査察には北朝鮮の協力が絶対的に必要だとし、「協力的検証」(協力的転換)を追求しなければならないと強調した。査察と検証が十分に行われるためには、協力が可能な信頼が築かれなければならない。終戦宣言は、朝米間の信頼を構築する試金石になりうる」

ー米中間選挙(11月6日)影響をどのように見るべきか。

 「大きな影響はない。10月中にポンペオの平壌訪問だけでも実現すればトランプ行政府としては大きな政治的利得だ。希望を与えるのだから。2回目の朝米首脳会談は結局、中間選挙が終わってからになるのではないか」

ー最近の朝鮮半島情勢の変化の原動力は何だと思うか。

「文大統領の仲裁者、促進者、主導的役割が事態の反転に大きな貢献をした。金委員長の役割も大きい。文大統領がそのようなイニシアティブ(主導権)を握ろうとするのに金委員長が冷淡な反応を示していたら、事が解けなかっただろう。文大統領が金委員長の本音を読み取ったと見ている」

ー韓国の大統領が南北関係を超えて朝米関係など朝鮮半島をめぐる問題でイニシアチブを握ったのは、見慣れない光景だ。

 「文大統領が8・15祝辞で『南北関係の発展は朝米関係の進展の付随的効果ではない』と強調した事実を忘れてはならない。朝米関係がうまく行かないと非核化ができず、非核化にすべてをかけると南北関係、朝鮮半島平和体制も難しくなる。南北経済共同体、平和共同体のアイデアも水の泡となる。8・15祝辞は『朝米関係ばかり眺めてはいない。私の道を行く』という文大統領の平壌とワシントンに送るメッセージだった。2006年11月にジョージ・ブッシュ当時米大統領の終戦宣言のアイデアを出したフィリップ・ゼリコウ・バージニア大学教授の『北朝鮮の非核化は包括的平和プロセスの脈絡でのみ実現できる』というアプローチと似ている。文大統領は非常に包括的に考えている」

ー平壌会談を振り返る。特別随行員として2泊3日間ともにしたが、一番印象的な場面は。

 「文大統領が5・1競技場で15万人の平壌市民の前で演説をし、非核化に対する同意を引き出した場面が一番印象的だった。象徴性の側面から見ると、文大統領と金委員長が白頭山(ペクトゥサン)の天池に一緒に登り、手を取り合った場面が重要だ。4・27板門店会談で両首脳が軍事境界線を越えた場面とともに、平和と統一そして民族の未来という8千万同胞みんなの関心事を巧みにあらわした瞬間だ」

ー平壌会談を以前の南北首脳会談と比較すると。

 「首脳会談が繰り返され、明確に進化の様相を見せている。総論(2000年)から各論(2007年)へ、再び実践的処置(2018年)へと前進している。金大中(キム・デジュン)・盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領と金正日(キム・ジョンイル)総書記の第1・2次首脳会談は探索的な性格が強かったとすれば、文大統領と金委員長の第3・4・5次会談は実践的・実務的な性格が強い。第1・2次会談の時には両首脳が5~6時間ほどともにしたが、第5次平壌会談では17時間をともに過ごした。信頼の深さに差がある。国際政治史でこのように密度の高い首脳会談はなかった」

ー平壌会談が70年の分断史の中で占める位置を指摘すると。

 「第一に、分断と敵対を越えた新たな希望とビジョンを提示した。第二に、分断の人為性と非正常性をあらわにし、南北関係が非常に正常になる可能性があることを可視的に見せた。第三に、テレビなどビジュアルメディアを通じて南北が一つになる姿を感動的に示した。両首脳とともに、私たちは皆で5・1競技場に行き、白頭山の天池に登った」

イ・ジェフン、ノ・ジウォン記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/863878.html韓国語原文入力:2018-10-01 07:36
訳M.C

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