2014年にも、金淇春(キム・ギチュン)元大統領秘書室長が当時パク・ビョンデ最高裁事務総局長(最高裁判事)やチョン・ジョンソプ安全行政部長官、ユン・ビョンセ外交部長官、チョ・ユンソン政務首席などと会合を開き、日帝強制占領期(日本の植民地時代)の強制徴用被害者たちが戦犯企業を対象に起こした訴訟の破棄案と後続訴訟対策を協議したことが確認された。これに先立ち、金元室長は2013年12月にチャ・ハンソン当時最高裁事務総局長(最高裁判事)とユン・ビョンセ外交部長官などを自分の公館に招集したこともある。
2014年10月に行われた2回目の会合は、1回目の会合で要請した事項を“中間点検”するためのものだったとみられる。当時は最高裁判所に上がってきた徴用訴訟の審理不続行(審理せず上告を棄却すること)の期間が過ぎており、裁判の遅延がある程度可視化した状況だった。検察は当時、チョン元長官が出席したことから、全員合議体で賠償判決が破棄された場合、財団設立を通じて被害者の反発をなだめようとしたのではないかと疑っている。
特に2回目の会合に出席したパク元最高裁判事は、2012年5月の判決で日本企業の責任を認めた当事者だ。2年たって自分の判断を覆してまで大統領府の“不適切な”要求を受け入れたわけであり、「法と良心に従う」という大原則を自ら放棄したという批判の声もあがっている。
■「外交部の意見書」は破棄に向けた誘い水
これと共に、検察は、外交部幹部たちが2013年末から2016年末までイ・ミンゴル元最高裁事務総局企画調整室長などと数回接触し、外交部の意見を裁判に“反映”するための案を講じていた情況も捉えた。また、戦犯企業を代理する弁護士が大統領府と直接協議した情況も把握した。
もともと、被害者や戦犯企業の間の紛争には“第3者”の外交部が介入できない。しかし、2015年1月、最高裁判所は一部の上告審事件で、国家機関に意見を求められるように訴訟規則を改正した。実際、外交部は2016年11月、戦犯企業を代理するキム・アンド・チャンの要請を受けて、「法理的に韓国が不利な事案」などの内容を盛り込んだ意見書を最高裁判所に提出した。事務総局と外交部は意見書の具体的内容まで協議したという。朴槿恵(パク・クネ)前大統領もこのような協議過程の報告を受けており、意見書の提出を督促したこともあったという。
検察は意見書の提出を口実に、最高裁が全員合議体への付託を通じて事件を破棄しようとしたと疑っている。徴用訴訟は2012年に判決が確定するのが自然だが、外交部が「韓日関係悪化の懸念」など新しい争点を提起した場合、全員合議体の判断を求められる点を活用したものだ。
ただし、2015年12月「韓日慰安婦合意」が激しい世論の批判に直面したことを受け、外交部が非難世論を懸念して、速度を調節しようという意見を何度も事務総局側に伝えたという。これにより、意見書の提出及び全員合議体への付託も予想より遅れたものと見られる。
■最高裁判所の苦しい釈明
最高裁判所は遅きに失して「徴用裁判取引」疑惑の鎮火に乗り出した。戦犯企業に対する上告記録の受付通知書の送達が遅れ、審理不続行期間(上告審の受付から4カ月)がすでに過ぎてしまったということだ。しかし、ハンギョレの取材結果、最高裁は通知書の翻訳問題で審理不続行の期限を20日ほど残した2013年11月22日、戦犯企業側に記録の受付を通知したことが確認された。
国外送達は、日本の外務省などを経て行われるため、国内の訴訟より長くかかる点は十分予想できる状況だった。対応を遅らせることで裁判の遅延を放置したという指摘を避けられないのもそのためだ。国際訴訟が殺到する状況で「翻訳の不備」を理由に掲げた釈明も納得できないという批判もある。