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[ニュース分析]金正恩は「取引の技術」より「取引の結果」重視

登録:2018-06-12 08:17 修正:2018-06-12 08:56
トランプとの談判控え、交渉スタイルに関心 
ムードを変える大胆な戦略的選択 
形式よりも結果に集中する目標指向性 
交渉では冷徹な現実主義者の姿 
名分よりも実利を追求する実用主義者 
合意すれば履行を強調する課題点検型
金正恩-トランプ交渉スタイルの比較//ハンギョレ新聞社

 12日、ドナルド・トランプ米大統領と会う北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長の交渉スタイルは、今年に入って二度行なわれた南北および中朝首脳会談で明らかになった。隣国同士だとしても、首脳会談を60日の間に4回も行うケースは外交史で前例のないことだ。金委員長が形式にとらわれず、結果を追求する「目標指向型」ということを端的に示している。トランプ大統領が「取引の技術」を楽しむならば、金委員長は「取引の結果」を重視しているといえる。

 金委員長のこのような特性が最もよく表れたのは、先月26日、板門店(パンムンジョム)北側地域で行われた2回目の南北首脳会談でだ。トランプ大統領が電撃的に朝米首脳会談の中止を発表した翌日、金委員長は文在寅(ムン・ジェイン)大統領に「一切の形式なしに会いたい」という考えを伝えた。文大統領がこれを快諾して開かれた南北首脳会談は、実際にほとんどの儀典を省略して行われた。ある外交官は「危機状況でも諦めず、目標に近づくという金委員長の執拗さが印象的だった」と話した。

 金委員長の目標志向的なスタイルは、時々型破りという行動に表れる。金委員長は4月27日、板門店で開かれた最初の南北首脳会談で脚本になかった場面を何度も演出した。軍事境界線を越えて来て、文大統領の手を握ってまた軍事境界線を渡った。南北随行員らと握手をしてすぐに記念撮影をしたりもした。相手の手をぎゅっと握るという特有の握手で機先を制するトランプ大統領との初の会談で、金委員長がどのような型破りな行動を見せてくれるか注目される。

 金委員長の型破りは「即興的なショー」ではない。それよりは「徹底的に結果を計算した政治的行為」に近い。トランプ大統領の特使資格で3月末、金委員長に会ったマイク・ポンペオ国務長官(当時中央情報局(CIA)局長)は、金委員長を「首脳会談を徹底的に準備する賢い人」と描写した。ポンペオ長官はトランプ行政府の高位関係者の中で、唯一金委員長と対面した人だ。トランプ大統領が金委員長との会談を控え各種の報告書を読みながら、論理的な対決を準備しているという報道を見ると、ポンペオ長官の分析が基準になっているものとみられる。

 金委員長は名分より実利を求める。このような「実用主義的な姿」は先月7~8日、中国遼寧省大連で開かれた中国の習近平主席との2回目の首脳会談で如実に表れている。金委員長は3月25~27日に北京で開かれた最初の首脳会談で、習主席を平壌(ピョンヤン)に招待しておきながら大連を訪れた。米国との交渉で難関にぶつかり、中国という力を活用するためのものと解釈された。イ・ジョンソク元統一部長官は、このような金委員長を「客観的力学関係を見る冷徹な現実主義者」と評した。金委員長がトランプ大統領との首脳会談に向けて「オオタカ1号」ではなく「中国専用機」に乗ってシンガポールを訪れたことからも、名分より実利を優先するタイプであることを読み取ることができる。

 金委員長が履行を重視することも目標志向的なタイプであることを裏付ける。金委員長は4・27板門店南北首脳会談を終えた後、晩餐会場で数回にわたって履行を強調した。晩餐会に出席したムン・ジョンイン延世大学教授は「金委員長はたとえ良い合意や文章が出てもきちんと履行しなければ落胆を与えるではないかと話した。金委員長が合意を履行することに強い意志を持っているという印象を受けた」と回顧する。イ・ジョンソク元統一部長官は「金委員長は自分が提示した課題、目標を必ず達成しようと切歯腐心するタイプ」だと話した。金委員長の2回目の南北首脳会談の提案にも言行一致を強調する性格が溶け込んでいると分析する専門家たちもいる。「定期的な会談と直通電話を通じて民族の重大事を随時真剣に論議する」とした板門店宣言を履行する側面があるということだ。

 金委員長の目標志向的な性格は、彼が戦略的選択をできる大胆さを備えているということを示している。米国と戦争危機説まで出ている状況にもかかわらず、核実験や弾道ミサイルの発射を止めなかった金委員長は、新年の辞で核兵力の完成を宣言し、対話の姿勢に転換した。その後、朝米首脳会談まで推し進め、「勝負師の気質」を証明した。キム・ヨンチョル統一研究院長はあるインタビューで「トランプ大統領と金委員長は三つの共通点がある。形式よりは内容を重視し、名分よりは実利を選ぶ。そして遠回りよりは核心に直接近づくのが好きだ」と診断した。

 金委員長の経歴や個人情報は断片的だ。金委員長が権力の前面に登場したのは、父親の金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の健康が悪化した2009年ごろとされている。1996年から2001年までスイス・ベルンの公立学校で中・高校課程を終え、2002年から2006年まで軍幹部の養成機関である金日成軍事総合大学で軍事学を勉強したものと専門家たちは見ている。スイス留学時代の仲間の学生たちとよく交流し、野心に満ち、バスケットボール好きだと知られている。

ユ・ガンムン先任記者(お問い合わせ japan@hani.co.kr )
https://www.hani.co.kr/arti/politics/diplomacy/848572.html韓国語原文入力:2018-06-11 18:52
訳M.C

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