“ドゥルキング”(ハンドルネーム)K氏(48)の「コメント推薦数操作」事件をめぐる政界の攻防が徐々に佳境に入っている。野党は一斉に「大統領選挙世論操作ゲート」と全方位的攻勢に乗り出し、大統領府と与党は「我々も被害者」として背水の陣を敷いている。自発的政治参加という“善意”と人為的な世論操作という“怪物”が広いデジタル政治広場で共存する現実の前で、各自の立場によって片面だけを見ている様相だ。
政界や学界では、今回の事態が国家情報院など公権力を動員した前政権のコメント事件とは性格が違うという点を明確にしながらも、また別の意味で「予想された事故」という見解を示している。一部のファンダム(ファン集団)の支持層がオンライン世論の地形に影響を及ぼしかねない構造が作られ、これは結果的にドゥルキングのような少数の「政治自営業者」らが暗躍しうる環境につながったという分析だ。
実際、この10年あまりの間、政治家支持グループがインターネットコミュニティや記事のコメントなどを通じて世論戦を展開するのは一つの「政治参加」文化として定着した。「今日のユーモア」、「日刊ベスト」など大型コミュニティの政治性向が進歩・保守などに分化し、インターネット公論の場で対決することも日常化された。
平昌冬季五輪をめぐり世論戦が激しかった1月24日、インターネットポータルのネイバーとダウムでは、リアルタイム検索語で「平和五輪」と「平壌(ピョンヤン)五輪」が1・2位を行き来する光景が展開された。文在寅(ムン・ジェイン)大統領の誕生日を迎え、支持層が平昌五輪の成功を祈願する「平和オリンピック」をリアルタイム検索語1位にしようという動きが起き、保守派のネットユーザーらは親北朝鮮のフレームをかぶせ、対抗作戦に乗り出したためだ。当時、進歩・保守を代表するインターネットコミュニティには、特定の時間帯にクリック数を集中しようなどの行動指針も掲載された。リアルタイム検索語とベストコメントなどが公論の場を代表する“象徴”として浮上しながら、これをめぐる対立が激化した面もある。
政界では、積極的な形をなすオンライン政治ファンダム文化の弊害を防ぐようなこれといった手段はないと見ている。また、ファンダム文化自体はきわめて健康的な政治参加だという見解も多い。政治家側から金品など直接的な利益を与えるやり方で介入するのでなければ、個人の自発的な参加を阻むこともできず、また阻んではならないということだ。共に民主党の関係者は「選挙の時、インターネットのメッセンジャーなどで「手伝いたい」という人が多い。どう活動するか詳しくチェックするのは難しいが、私たちとしては感謝するしかない」と話した。選挙の経験が多いある政府与党関係者も「同じ指向を持つ人たちがインターネットで疎通して、また彼らが団結して政界に影響力のある意見を提示すること自体は、かつて郷友会や職能集団が集まって影響力を行使したことに比べればかなり発展した政治参加の方法だ」と話した。
ただ、ドゥルキングなど一部の「経済的共進化の会」会員たちがマクロ活用という“違法”まで犯した背景には、コンテンツではない「勢力集め」を通じて相手を制圧しようという旧時代的「動員政治」の論理が敷かれているという指摘が出ている。ドゥルキグが現実政治で相当な影響力を行使していたことも、結局は選挙という対立する事案を控え、支持者グループを組織的に動かすことのできる相当の支配力があったから可能なことだった。これと関連してパク・サンフン・フマニタス代表は、「世論を動員して支持勢力を誇示する方法は、いつでもその支持勢力の見返りに権力・人事・金銭を要求する行為につながる可能性がある」とし、「ドゥルキングのように実体を知ることのできない人たちに政党組織が揺らぐならば、韓国政治が『世論動員装置』にぶら下がっているという危険な兆候」と指摘した。
実際、K氏は昨年4月、ブログなどを通じて「我々が何もしないでいたら危険な候補選になっただろう」と述べ、政治的影響力を誇示し、このような自信をもとに大統領選挙後の特定公職を要求するところまで進んだ。権威主義政権時代に聴衆動員能力に優れた人たちが勢力を伸ばしたように、ある瞬間から韓国の政界もオンライン上の「コメント」と「いいね」の動員能力を誇示する人たちを意識する構造となったわけだ。
今回の事態が生む弊害を懸念する声も出ている。ソ・ボッキョン西江大学現代政治研究所研究教授は「脱法的な方法を動員して世論を歪曲するのは問題だが、全ての組織的政治参加を白眼視することではない」とし、「オンライン上の政治表現を敵対視する方向に事態が進めば、市民の政治的意思表現を抑圧する結果を生む恐れがある」と指摘した。ソ教授は「有権者の立場でコメントをつけ共感を押すのは、最も少ない費用で政治に参加できる効果的な方法」だと付け加えた。